事前に相談していた通り、堕すことにして、中絶手術日を決めた。
中絶を決めた理由は色々ある。
まず、経済的理由。
一応、一部上場企業に勤めているので、二人目を産んで育てる余裕が無いわけじゃない。
でも、二人目が産まれるのであれば、今より生活レベルを落とす必要がある。
自分はともかく、妻は生活レベル落とすの嫌だろうな、と思う。
レベルを落とした生活で、夫婦間がギスギスするのは嫌だ。
俺が子供の頃、ウチの両親はよく喧嘩していた。
今でも覚えているのが、母親が泣きながら「お金が無いのは私のせいか!」と叫んでいたこと。
あんな思いを自分がするのも嫌だし、妻にもさせたくない。
二つ目は、妻の体調だ。
一人目を妊娠中、妻は酷い悪阻だった。
出産後も、「あの悪阻は味わいたくない」と言っていた。
当時は義両親が近くに住んでいた上に子供が居なかったが、今は義両親の協力が得られない上に子供の面倒を見る必要がある。
俺が全面的に協力したとしても、妻の負担は計り知れない。
最後に、自分が子供を平等に愛せる自信がないということ。
俺は3人兄弟の真ん中に産まれた。
親は親なりに3兄弟を頑張って育ててくれたとは思うが、俺は他の兄弟に比べ愛されなかったと感じている。
愛情不足が原因で、人に好かれようと振る舞ってしまう悪癖が身に付いた。
聖人君子でない限り、複数の子供を均等に愛することは無理だと思う。
相性もあるしね。
俺は、娘に愛情不足感を味わせたくないし、今、妻のお腹に宿っている子供にも味わせたくない。
親からの愛情不足を持った俺が、自分の子供を均等に愛せるかどうか、というのが自分に課された使命だったのかもしれない。
でも、自分の使命を全うするが為に、自分の愛しい人を危険に晒すのは絶対に嫌だ。
授かった命を自分のエゴで殺めることが、褒められたことでないことは重々承知している。
それでもやっぱり、大好きな妻と娘にマイナスとなり得ることはしたくない。
お腹にいる赤ちゃん、ごめんなさい。
