このブログは、2026年1月14日10時から開催された記者会見の内容と配付資料を元にして書いています。

 

戦艦大和とともに沈んだ巡洋艦、駆逐艦を探し出す

―駆逐艦「朝霜」と考えられる艦影を発見―

 
1.始めに

1945年4月7日、戦艦大和とその護衛艦隊9艦は、鹿児島県坊ノ岬沖にてアメリカ海軍の空母艦載機の攻撃を受け、大和、矢矧、磯風、霞、濱風、そして朝霜(表1)が沈没しました(坊ノ岬沖海戦)。大和は既に発見され調査されています。磯風は大和の北側に発見されています。残り4艦(図1.1~1.5)については、未発見のまま、戦後80年が経過しました。
 

表1 戦艦大和とともに沈んだ6艦
 

図1_1 巡洋艦矢矧。昭和18年12月19日撮影。提供:大和ミュージアム
 
図1_2 矢矧のプラモデル
 
図1_3 霞のプラモデル
 
図1_4 濱風のプラモデル
 
図1_5 朝霜のプラモデル
 
図1_6 天一号作戦における艦隊編成。10艦は図のような隊形をとって豊後水道を南下し、東シナ海にでた。

2.    朝霜発見か? 矢矧、霞、濱風、朝霜を探し出す

ラ・プロンジェ深海工学会は、2025年12月10日、ウインディーネットワーク(株)といであ(株)の協力を得て、漁船を用船して、未発見の4艦の沈没予想海域をマルチビームソナー(MBES)で調査し、図2示すように、東シナ海の戦艦大和の約50浬北に、駆逐艦朝霜ではないかと思われる不陸(海底からの出っ張り、図3)を発見しました。位置は北緯31度29分東経128度3分で、水深143mです。
図2 軍艦大和行動図(軍艦大和戦闘詳報)の内の北側の部分と不陸を発見した場所(赤枠)。(C08030566400.c0660402036.04shouhou_084.2282_01)
 
 
 
図3 沈没艦船ではないかと思われる海底の不陸。岩であるかもしれない。艦船であったならば名前を確認する必要がある。そのためにROVの出動が欠かせない。


図4 朝霜のプラモデルを上方から撮影した図。

 


この結果を踏まえて、ラ・プロンジェ深海工学会は、2026年4月に、最新の探査機器(音響装置、自律型海中ロボット(AUV)、遠隔操縦式無人潜水機(ROV)など)を使って、発見した不陸の確認を含め、矢矧、霞、濱風、および朝霜の探索をおこないます。調査の様子を生放送で紹介します。
 

 


 ラ・プロンジェ深海工学会は、
2017年 五島沖帝国海軍24潜水艦の調査と特定(93時間)、
2018年 若狭湾帝国海軍3潜水艦の探索と特定(87時間)、
2018年 東シナ海徴用船「大洋丸」の探索と特定(90時間)、
2022年 米国潜水艦「アルバコア」の探索と特定(36時間、9時間)、
2024年 樺太からの引き揚げ船「小笠原丸」と「泰東丸」の探索と特定(10時間)
などをおこなってきました。今回も、最新鋭の海中技術を用いて、4艦を探し出し、その位置と現状を明らかにすることによって、学会の設立の目的である海中調査技術や海中活動の普及と振興を目指し、艦とともに戦没された方々を慰霊します。



3.    朝霜と考える根拠

図3を見ると、他の場所にある岩のようなものとは違って、沈没艦船ではないかと思わせる形状をしています。図3は同じ縮尺の駆逐艦朝霜です。一見したところ、二つに割れた船体が並んでいるように見えます。

朝霜は、4月7日早朝から機関故障をおこし、本体から落後し、米軍艦載機によって正午過ぎに撃沈されました。乗員326名が全滅し、生存者無しのため、日本側には撃沈された位置や時刻は勿論、その最期の様子さえ伝わっておりません。しかし米軍艦載機のレポートには、艦隊北方にて単独戦闘を行ったとの記録が残っています。したがって、大和の沈没位置から北側に離れた位置に沈没したと考えられます。図2は、「軍艦大和戦闘詳報」に記載されている軍艦大和行動図に図2の不陸の位置を赤枠で囲った図です。
 
 

図5 不陸の形状に半分に分かれた朝霜のモデルを並べる。上下は垂直断面に比較しいる。

図5は、不陸の立体形状に、矢矧の外形を当てはめた図です。中央の図は、不陸の平面図で、その上下に朝霜の船体を並べています。下側の図は、断面①の不陸形状と艦の前半分の図を当てはめています。上側の図は、断面②の不陸形状と艦の後ろ半分の図を当てはめています。

 図5を見ると、この不陸が朝霜とすることに矛盾はないようです。上部構造物の対応も悪くないようです。しかし、これはあくまでも推測の域をでません。

次の調査では、AUVやROVを使って、より詳細な形状の計測とビデオ撮影をおこない、この不陸がはたして朝霜であるかどうかを確認します。

4.    大和とともに沈んだ5艦

 図2以降の艦隊の航跡は、図6のように軍艦大和戦闘図に描かれています。しかし、海底の大和が実際に発見された場所は、図6よりも北であることに注意せねばなりません。なお、この海域の水深は、せいぜい500mです。
 
図6 4月7日12時以降の艦隊の航跡図
 

図7 14時ごろの艦隊の配置図
航空母艦YORKTOWN艦載機からの報告に基づく

図7は、航空母艦「YORK TOWN」からの報告書
NDL40075934007593_Aircraft_Action_Report_No._45_1945-04-07_-_Report_No._2-d(58)-_USS_San_Jacinto,_USSBS_Index_Section_7
にある、艦載機パイロットからの報告に基づいた艦隊の配置図です。左端の矢矧(2番)は、大和(1番)から10浬も離れた位置に描かれています。
 

図8大和、磯風、朝霜(予想)の沈没位置。2018年にラ・プロンジェ深海工学会が発見した戦時徴用船「大洋丸」位置も記入してある。
 
 
図8は今回発見された不陸と、大和と磯風(とされていますので「?」をつけています)の位置関係です。
 
5.    2026年4月の本格調査の概要

2025年12月の調査を踏まえ、2026年4月中旬に、最新鋭のAUV(自律型海中ロボット、海上技術安全研究所所属)、ROV(有索無人潜水機、海洋エンジニアリング(株)所属)などを使って、第一開洋丸(海洋エンジニアリング(株)所属)を支援船として、巡洋艦矢矧(図1)、および駆逐艦霞、濱風と朝霜の探索をおこないます。まず始めに、図2の不陸(海底から盛りあがり)が朝霜であることを確認します。ついで、船に取り付けられたマルチビームソナーを使って、残りの艦を探します。
 
 

図9 調査に使用する海洋エンジニアリング(株)所属の「第一開洋丸」。
1,406トン。マルチビームソナー(EM 304 MKII)や図11のROVなどを装備している。
 

図10 海上技術安全研究所のAUV4号機。予備としてAUV3号機も準備します。全長4.9m、最大潜航深度2,000m。マルチビームソナー(SEABATT 7125)を装備している。

新たな不陸を発見したときに、図10のAUVを展開して、搭載しているマルチビームソナーで詳細な地形図を作り、ついでその地形図を利用して図11のROVを展開し不陸の撮影をおこない、目指す艦であるかを確認します。艦の特徴を確認して艦を特定します。


図11 海洋エンジニアリング(株)所属のROV「Leopard」。全長2.5m、最大潜航深度3,000m。ケージに入れて投入します。

6.    むすび

太平洋戦争で沈没した多くの艦船は、所在すら分からずに放置されたままになっています。海中技術の進歩により、これまでは調査が困難だった海底の沈没船の調査ができるようになりました。最先端の海中技術を駆使して沈没艦船を探し出し、戦没者の慰霊をおこないます。



調査は、次のグループにより行われます。

    主宰:        一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会
    共同研究:    海上技術安全研究所
    協力:        海洋エンジニアリング株式会社
            ウインディーネットワーク株式会社
            いであ株式会社
            株式会社ドワンゴ

問い合わせ先:一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会 
            代表理事 浦  環
            電話:090-1409-1626
            メール:office.laplongeeアットマークgmail.com
         「アットマーク」を「@」に代えてください。


調査の様子はニコニコ生放送で生中継します。

必要な資金は、一般からのご支援を集めます。その一環としてクラウドファンディング
をおこないます。よろしくご支援ください。


準備状況や、調査の進展については下記をご参照ください。
https://ameblo.jp/laplonge/entry-12918826761.html

過去の調査の様子は、本文2節に書かれているニコニコ生放送のページをご覧ください。
また、本ブログにも報告などが書かれています。



以上