・東シナ海油田は日本のとってとても小さなガス田 ~大局的な見方ができないことの危険性~ | アジアの真実

・東シナ海油田は日本のとってとても小さなガス田 ~大局的な見方ができないことの危険性~

加熱するアジア・エネルギー報道の落とし穴 小森 敦司(AAN主査):朝日
「地政学」使えば書くのも楽?

 「記者クラブの外からの目」。今回はあえて「記者の目」のタイトルからはずれて、そんな「外」からの視点でこの原稿を書かせていただきたい。記者クラブという前線から離れていたために、ようやく、このごろ、見えてきた「もの」があるからだ。自己紹介になるが私は昨年4月から、日本とアジアのかかわりあいを模索する、朝日新聞のシンクタンク的な組織である「アジアネットワーク(AAN)」に籍を置き、「アジアのエネルギー協力」について研究や取材、執筆をしてきた。この命題が先にあるからだろうか、最近、エネルギー問題を取材する前線の記者たちが、エネルギー資源をめぐる「確保戦略」や「地政学」といった言葉に、あまりに惑わされていないか、と感じるのだ。
(中略)

 だが、当局や企業からのナマの情報が飛び交う記者クラブでは、巧みな「誘導」のためか、記者たちは地政学的に「資源を確保せよ」論に安易に寄りかかって、事実関係をしっかりと分析する「目」力も失っているかのように思える。端的なのは、「東シナ海で中国が開発を進めている」春暁ガス田問題だろう。中国の生産準備が明らかになった04年ごろ、新聞は当時の中川昭一経産相の「日本にとって極めて大事な資源」といったコメントを紹介した。その後も、専門家の「天然ガスの埋蔵量は1|2兆立法フィートと言われている。もしそれくらいの量なら国内最大規模になる」との談話を載せている。

過大視される春暁の埋蔵量

 本当はどうか。「エネルギーフォーラム」の読者なら、ご存じだろう。1兆立方フィートとして国内では最大かもしれないが、ロシア・サハリン一帯の資源と比べると百分の1程度しかない。量だけ考えるなら、「大事な資源」とは言えまい。しかも、九州などにパイプラインで持ってくるには遠すぎる。本来、付ける枕ことばは「東シナ海で中国が開発を進める、日本からは遠く、とても小さい、ガス田」がふさわしいはずだ。ところが、こんなシンプルながら肝心なデータを押さえた記事が調べてもなかなか出てこない。紙幅がないという言い訳もできるだろうが、一部週刊誌は乱暴にも「(東シナ海には)石油大国イラクに並ぶ石油が眠っている」と書きなぐっている。この「イラク並み」論が意外と世間に浸透している。それが日本政府をして、振り上げた拳をおろしにくくしているようにみえる。

 こうした報道の「過熱」感が増した中で策定が進んだ「新・国家エネルギー戦略」についても、記者クラブの外にいる私としては、いまだに理解できない点が残る。「戦略」に盛り込まれた「海外での資源開発目標||2030年までに40%程度を目指す」などの数値目標について、その妥当性を検証した記事が見つからないのだ。
(中略)
今後もエネルギー資源をめぐる議論はますます熱くなるだろう。だからこそ、この問題を伝える私たちは、冷静に情勢を見抜き、分析できる「目」力を磨かなければ、と思う。

 朝日新聞のシンクタンク的組織であるという「アジアネットワーク(AAN)」の主査を務めるという方の文ですが、東シナ海ガス田問題で非常におもしろい見解をされています。今まで所謂「中国寄り」の意見というものも度々見てきましたが、こういった見方は初めてです。要約すれば、”中国が一方的に開発を進めていると言っても、東シナ海ガス田など埋蔵量は本当は小さいはず。日本にとって重要でないから中国の開発で騒ぎ立てる必要はない。しかもその規模の小ささがあまり表にでないのは何かを隠そうとする意図さえ感じられる。冷静に情報を見抜かなければいけない”と言ったところでしょうか。正直笑止千万です。自国のEEZ内の資源を勝手に盗掘されている事実は、”埋蔵量が少ないからあまり問題にしなくても良い”そんな理屈で放置できる問題では到底ありません。これを許せば間違いなく中国の行動はエスカレートしていくでしょう。しかも当Blogでも何度も記載していますが、この問題は安全保障問題とも大きく絡んでおり、東シナ海はおろか太平洋奥深くまで進出できる海軍力を整備しようとしている中国の動きと密接に連動しています。この地域への関与に日本が無関心を続ければ、資源を取られるどころか、この海域での中国の軍事的台頭を易々と許すことになります。そしてそれは資源輸入を中東や東南アジア諸国などからの海運に頼る日本にとって、シーレーン防衛の危機となり、日本の死活問題に直結します。それを語らずして東シナ海ガス田問題を考えることはできません。


 自分の畑からせっせと作物を盗み取っている隣人がおり、しかもその隣人は、隙あらば他の畑まで全て奪ってやろうと武器になる包丁を脇に抱えながら虎視眈々と目を光らせている。こんな状況で、この記者は「あの畑は収穫量も少ないから問題ない」と平気で言えるのでしょうか。それを知りながらわざと言っているのかどうかはわかりませんが、大局を見据えた考え方ができないようでは、この先世界の中、とりわけ不安定なアジア地域で生きていくことはできないでしょう。


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