プラスチックはその特性を活かして、食料品の保存用や医薬品の分野など特殊な用途でも使用されています。 先日実施された衆議院選挙などで使われる投票用紙は、普通の紙とは違うなという感じを持っていたので調べてみました。投票用紙には木材パルプではなく主にポリプロピレン樹脂を主原料とする合成紙「ユポ」が使用されているようです。

 

○   選挙の投票用紙に使われている素材のユポとは

 ユポは株式会社ユポ・コーポレーションの独自技術で製造された​​​​高機能合成紙​​です。株式会社ユポ・コーポレーションは、ユポについての特許・商標を世界各国で取得しています。主原料は合成樹脂​の​「ポリプロピレン」と、天然鉱物である石灰石由来の「炭酸カルシウム」です。​
ユポは3層構造で強度を確保しつつ、高い白色度や印刷・筆記適性、軽量性など​の機能​を実現しています。

 

​​ ユポが選挙の投票用紙に使われている理由は、主に3つあります。​

①   ​​筆記適性が高いため

​​ 選挙の投票用紙に使われている理由として、筆記適性が高いことが挙げられます。油性ボールペンやマジックはもちろん、鉛筆の筆記にも向いており軽い筆圧で書くことが可能です。引っかかりやすべりもなく滑らかな書き心地であるため、選挙の投票用紙に最適です。ユポの中でも特に鉛筆の筆記に好適な​​ものが​​投票用紙に使用されています。​

②   ​​折り曲げてもすぐ開くため

​​ 折り曲げてもすぐ開く点も、ユポが選挙の投票用紙に使われている理由の一つです。ユポを使った投票用紙は、折りたたんで箱に入れても自然に開きます。これによりスムーズな開票作業を実現し、即日開票にも貢献しています。折り目が付きにくい理由としては、ユポがプラスチックを主成分としていることと、成形時に延伸して製造していることが挙げられます。​

③   ​​計数機​​適性がある

​​ ユポは投票用紙を読み取って票数を計測する機械「計数機」​への​適性があります。計数機には投票用紙に​​​書かれた​手書きの文字を素早く識別し、自動分類できる機能が搭載されています。また計数機のスキャナーは投票用紙の両面を同時に読み取るため、事前に投票用紙の向きを​揃える​手間が省け開票作業の効率化が可能です。

 

○   選挙用紙に使われるユポの仕組み

3層構造

​​ ユポはベースとなる基層を上下の表層で挟んだ3層構造です。
主原料であるポリプロピレンと石灰石由来の炭酸カルシウムと少量の添加剤を加えて作ったペレットを使って、基層と表層を作ります。基層を縦方向に延伸後、表層をラミネートして横方向に延伸して構造を作り出す仕組みです。

 

ミクロボイド(微細な空孔)

​​ ユポの持つミクロボイド(微細な空孔)は、製造時の延伸工程によって作られます。
目には見えないミクロボイドが多数存在することで、光の乱反射が起こりフィルムの白さや不透明度を演出しています。​フィルムであるにも関わらずインクによる印刷適性や鉛筆による高い筆記適性などが、一般紙に匹敵するメリットもミクロボイドによる効果です。またミクロボイドの存在でフィルムの比重が小さくなり、軽量化や樹脂量削減にも寄与しているのです。

 

ポリプロピレン樹脂​​​

​​ユポの主原料はポリプロピレン樹脂です。ポリプロピレンは炭素と水素から構成されるプラスチックで、燃えても有害物質が発生しないことが特徴です。​またポリプロピレンにはリサイクル適性があることから、ロール状にできあがったユポをカットする際に発生する​​端部の製品​​は、再度ユポの原料として使用されています。

 

○   選挙の投票用紙にユポを使用する6つのメリット

​​ 選挙の投票用紙にユポを使用するメリットは、主に6つあります。

1. 折り曲げても直ぐに開く

​​ ユポの機能により折り曲げてもすぐに開きます。​そのため開票作業が迅速に行われるようになります。
​​一時的に折り曲げて選挙の秘匿性を保ちつつ選挙箱投函後にユポがすぐ開くことで、選挙の開票作業を効率化できるという選挙にぴったりの素材といえます。​

2. 耐水性が優れている

​​ 耐水性が優れている点は選挙の投票用紙にユポを使用するメリットのひとつです。一般的にパルプで作られた天然紙は、水に濡れるとダメージを受けやすい特徴を持っています。しかしユポは天然紙よりも水に強く、万が一水に濡れてもふやけたりせず、形状が変わることもありません。​

​​水濡れで強度が低下することがないため、投票用紙に記載した内容が判読できなくなるリスクも減らせます。また油や薬品が付着しても、変化や劣化することがほぼありません。​

3. CO排出量やプラスチック使用量の削減に貢献している素材である

CO₂​排出量やプラスチック使用量の削減に貢献が可能な素材である点も、大きなメリットです。基材のユポは一般的な0.3mm厚のPPフィルムに比べて、約45%のCO₂排出量を削減可能です。

4. リサイクルが行われている素材である

​​ ユポ製の投票用紙は保管期間経過後、プラスチック原料としてマテリアルリサイクルされている​ケースがあります。​使用済みの投票用紙の回収方法は、「ゆうパック方式」と「大口回収方式」の2種類あります。ゆうパック方式は1箱から送ってリサイクル処理ができる方法で、大口回収方式は専用トラック便で回収する方法です。このリサイクルシステムは、NPO法人選挙管理システム研究会が構築しており、各自治体が同NPO法人に委託する形で実施されています。焼却処分と比較してCO₂排出量を大幅削減できるため、2022年4月に施行された"3R+Renewable"を基本原則に掲げる「プラスチック資源循環促進法」に則った、環境へ配慮した取組みでありSDGsへの貢献と言えるでしょう。​

​​5. 紙に近い質感で鉛筆でかける

​​ 紙に近い質感で鉛筆でかける点も選挙の投票用紙にユポを使用するメリットです。引っかかりやすべりもなく筆記適性があるため、選挙の投票用紙に適しているといえるでしょう。​

6. 破れにくい

​​ 選挙の投票用紙にユポを使用するメリットとして、一般紙よりも破れにくい点も挙げられます。ユポは非常に丈夫であるため、力強く書き込んでも引っ張ったり折り曲げたりしても破れにくく強度が高い点が特徴です。​
投票用紙が破れてしまうと正確な開票作業に影響がでてしまいますが、ユポを使用する場合そのような心配はいりません。

 

○   選挙の投票用紙以外のユポの使用用途

 選挙用のポスター 雨や汚れに強くてシワがよりにくく、剥がれにくいという特徴もあるため

 商品・店舗用の広告・プロモーション 鮮やかなカラーや質感、シズル感(食欲や購買意欲を刺激するようなみずみずしさや五感を刺激する)を再現できるため

 出版物・ステーショナリー​(登山地図やハザードマップ、カードゲームのプレイマット、耐水ノート、作業マニュアル、飲食店のメニュー、フォトブックやアルバム、パンフレット、ガイドブックなど) 耐久性や耐水性が高く丈夫であるため、屋外や作業現場で使用する出版物やステーショナリーに最適

災害時のハザードマップ 印刷性と耐水性、耐久性が高いので、大雨の中で確認したり折り畳んで広げる作業を繰り返し​​ても​正確な視認に問題が起こらない

その他の特殊な用途(診察券、会員証、リストバンド、採血管ラベル、各種カード・チケット、各種タグなど)自治体や医療機関、企業などでも使用されています。

 

 合成紙「ユポ」は高い機能性を備えながらも環境負荷を削減可能な点が強みで、合成紙市場で約70%の高い国内シェアと、50年以上の実績があるようです。

 

by auf (26/404)