百花がグッときた歌を紹介する

「勝手に『万葉集』」シリーズ

 
 
 
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(以下、『万葉集』の本文・口語訳は全て『新編 日本古典文学全集』(小学館)から引用しています)
 
 
 
物思ふと
人に見えじと
なまじひに
(つね)に思へり
ありそかねつる
 
 
【口語訳】
物思いをしているように
人に見せまいと
わざと
平気なようにふるまっているだけです
ほんとは死にそうです
 
 
 
 
 
 
※一度、編集を誤って全て消してしまったので
思い出しながら、また、内容を少し変えて再掲します。
 
 
これは口語訳が秀逸なんだと思います。
 
ほんとは死にそうです
 
つらいのにすごく無理をしている感じが伝わってきます。
 
他の歌のいろいろな表現からわかるのですが、
恋をしているのが人にバレたり、
恋の噂が立たったりしないように、
当時の人々はとても気を遣っていたようです。
 
 
そんな背景をふまえての
「ありそかねつる」(ほんとは死にそうです)
 
 
「バレてもいいですか」でも
「早く逢いたいです」でもなく、
 
「ほんとは死にそうです」
 
 
つらくてつらくて仕方がない。
切羽詰まった感じを表現するには
この言葉が適確だったのですね。