お茶席を設けました。
わが社中だけでなく、
茶道協会の皆様に手伝っていただきながら
盛況のうちに終わることができました。
ですが、今日の出来事を思い返してみるとホッとすることばかりじゃありません。
師匠が、
この日のために
準備してきたお道具の数々と、
それを選ぶためにどれだけ悩まれているか、
その裏舞台を垣間見ると、
あらためて
おもてなしの心深さを感じました。
茶道は、総合芸術と言われますが、
まさしくその通りで、
茶碗に始まる茶道具はもちろん、
掛け物
生花
香りなどのインテリア(空間環境)
への気配り、
そして、リラックスをして、
一服の茶を楽しめる雰囲気をかもし出せるような亭主の話。
ただ、「一服の茶を飲む」ことに、
これほど心配りをし、
またそれを楽しむものは、
茶道の他にないでしょう。
私は、
今回初めてお客様の前で、
薄茶点前を行いました。
まだまだ、その手順を覚えるだけが精一杯の若輩者です。
まちがえないかな、
緊張で手順を忘れないかな、
とドキドキ状態で始めました。
未熟者か、ベテランかは、
道具を出し入れする足さばきにも、
袱紗さばきにも、すぐに表れ、
誤魔化しようがありません。
私が茶を点てているすぐそばには、
正客様
(茶席で一番主なお客様、たいてい茶道に通じている方がなられます。)
慣れない平棗を持ち上げるだけで、
小刻みに震えそうになる手元。
あ~、もう、新米弟子丸出し
えーと、これで合ってる?
次は、なんだったけかなあ?
なんて、
余裕なんてまるで無し。
一応私だって、30年の教師生活では、
数々の授業も公開し、
研究会で大勢の前で発表するような経験もしてきたのですが、
今回は、まるで学生時代に戻ったかのような緊張。
たどたどしい手つきで点てたお茶、
果たして正客様のお口には、
どのように?
「頂戴します」
と一口含まれた後、
「…はあ~、おいし~い、お茶だわ。」
と、にっこり笑ってつぶやいてくださり、
飲み干して下さった後も、
満足げに微笑んでくださいました。
その言葉に、ホッとして、
軽く会釈をするとか、
微笑み返しをするとか、
そんな、
さりげなくも奥ゆかしい対応ができれば良かったのですが、
なんと、
私の顔は、自分でもわかるくらいに
奇妙に歪み、
笑っているのか
泣いているのかわからない変な表情をしてしまいました。
いやいや、情けない。
お見通しなんですよ。
お正客様は。
場慣れしていない未経験者が
緊張しながら一生懸命点てているのを見て、
優しく和ませて下さっているのですよ。
この方も胸の広い方です。
それにも上手く応えられない私。
ホント、
ゆとりがないというのは、情けないですね。
若い頃ならいざ知らず、
もうすぐ還暦なんですよ。
まだまだ修行が足りないってことなんでしょうね。
いやはや、
素晴らしき先輩とされる方々を見習って、奥ゆきある人になりたいわあ。