「自覚せずとも戦士」~大統領の執事の涙 | マロウの徒然日記

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映画はね、1ヶ月に1回程度は、見に行きます。

この頻度で映画館に行くようになったのは、

『夫婦割り』を知ってから。

エンターテイメントでありながらも、

いろんなことを考えさせてくれる映画を、

千円で見られるのは、なかなかお買い得だと思っています。


今週の日曜日に見たのは、

『大統領の執事の涙』

何代かのアメリカの大統領に仕えてきた黒人の執事の物語。

実在した人がモデルらしいと聞いて、

ホワイトハウスの裏側が覗けるのかな・・・なんて

ゲスな興味を持ってみたら、とんでもないまちがい。


主人公の執事は、まだ黒人差別が酷かった頃に生まれ、

両親は白人の農園で働いていたんだけど、

母はオーナーに陵辱され、父はそれに抗議しようとして

銃で撃たれて主人公の目の前で殺されるという、

何とも残酷で非道で許し難い境遇にあったのです。

奴隷というのは、かくも酷い境遇か・・・と
差別がまかり通っていた時代に怒りがわいてきます。

その主人公が、農園を逃げだし、

苦労の末に、ホワイトハウスの執事という

紳士的な礼節を必要とされる職に就くことができたのですが、

じゃあ黒人のサクセスストーリーかと言えば、

単にそれだけじゃない・・・、

黒人差別という社会問題をあらためて見直す作品でした。


確かに、奴隷の子どもが大統領の執事になることは、

大した出世ではあります。

それをなし得たのは、彼を給仕として働かせてくれた心ある人たちに出会えたこともありますが、

何よりも主人公が、聡明であり、

温厚で辛抱強い性格であったからだと思いました。


彼は、黙々と執事の任務をこなしていきます。

主の大統領に政治的なことを尋ねられても、

決して出しゃばらず、

ただ空気のような存在として、

食べ物や飲み物を運び、

靴を磨いていくのです。

それは、「従順」

という言葉が当てはまるような気がしましたが、

結果として、他者(白人)からの信頼を得ることになったのだと思います。


その姿は彼の息子と対照的に映りました。


彼の息子は、大学生になり

黒人差別撤廃のための活動の渦の中に入っていきます。

差別と真っ向から闘っていくのです。

けれども、主人公は

本人が自覚しようがしよまいが、

彼の誠実な働きぶりで

黒人の評価を上げたのだと思います。

映画の中でも

「彼らも戦士だ。自覚していないけれど・・・」

と、息子の活動仲間が言う台詞がありますが、

全くその通りだと思いました。


この映画を見終わって、

一つ疑問に思うことがあるのです。

彼が幼少の頃に受けた酷い差別、

両親を人としてではなく

使い捨て道具のように扱われたしうちは、

決して忘れることができないだろうと思うのです。

そしてそれは、

白人への憎しみという形で心の中に巣くっていくのではないのでしょうか。

憎んで当然であり、

そういう世の中に不満と怒りを持ち続けて当然だと思うのです。

けれども、

この主人公は

その怒りや憎しみをほとんど出さない。

ただ、与えられた使命を全うさせようと努力している。

あの憎しみや怒りは、どうやったら彼の内で暴れずにいられたのだろう?


その穏やかさこそが、信頼を得る要因だったのかな・・・。