「風きるつばさ」は、児童文学である。
大人になってからこの作品と出会ったけれど、忘れがたい1冊である。
ちょうど読んだ時期、私は少なからず人間関係に悩みをもっていたからだろうが、
主人公アネハヅルのククルの哀しみが、我が事のように思えた。
自分が友達のツルに親切にしたことがきっかけで、別の仲間がキツネにおそわれてしまった。
仲間達の責任追及の目が、ククルを阻害しひとりぼっちにしていく。
「ククルのせいじゃない」
「ククルは善意からしたこと」
「ククルを責めるのはおかしい」
きっと、小学高学年の子供たちならば、こんな言葉でククルをかばいたい気持ちになるのだろう。
そして
この作品の中でも、仲間の中には、ククルをかばってやりたいツルは少なからずいたのだろう。
けれども、だあれも、そんなことは言えない。
だって、そんなことを言ったら、今度は自分がククルのように
みんなからいじめられて、ひとりぼっちになってしまいそうだもん。
これこそが、いじめの構図なんだなあ。
まちがいを正しにくい集団の空気。
大人でも、子供でもおんなじだあ。
作品は、最後の最後に
死を覚悟しながらククルに寄り添う、たった1匹の友達ツルの勇気で
何とか翼をはばたかせて難を乗り切る。
ハッピーエンド。
おかしいことをおかしいと言い切る勇気
大人になってから、忘れかけていたのかも・・・。
それを思い出させてくれる作品でした。