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先月末から繁忙期に入り人出補強のためあたらしい仲間がきた。

既存の同期は四人。みなド素人。
上司は無頓着。毎日一生懸命体当たりでなんとか仕事をやっつけている。
たまに男気というない要素を出して
無茶しながら。
汗かいて一生懸命やって
それでも以前あったものに追いつくのは難しいし、現状なんとかなってるけど、危ういものとも感じている。

天然りぼんさん はそんな忙しいところにあらわれ、ろくに構う時間もとれず
けれども新人と思えないくらい仕事をさせてしまっていて、忙しい中無理させてわるいな、とは思っていて、たまたま時間がとれたので、今までしたことから何かわからないこと、確認したいこと、どの程度こなせるのかはなしをきいてみた。

自分たちも入社4ヶ月程度のぺーぺー。
聞きたいこと、教わりたいことなど日々できてくるもの。彼女もきっともっとそんな状態のはず。

彼女は すいませんすいませんなんかわたしよくわからないこともなにがわからないかわからなくてすいません、

今まで苦手だなここ、とかおもったとこある?

すいませんすいません そういうのとくになくて あっ たぶん大丈夫だとおもうんですけど すいませんすいません
あたしなんかよくわからなくてすいません

…わからないことあるなら時間あるとき教えておきたいんだけど、もう大丈夫ならそれでいいし。
わたしは彼女がわかるのかわからないのか、なにをいってるのかわからなくて困った。さらにいえば仕事上必要な確認をしてるつもりなのに、ごちゃごちゃ謝る話し方もイライラする。

彼女に仕事できることはもとめてない。実際入った期間をみれば充分すぎる仕事をさせてしまっていて、でもそれがどんな風に行われたのかわからないので確認し、問題なければ今後安心して同程度の仕事をさせられるし、逆に無理があれば改善してできる範囲の仕事をさせないと業務上困るのでしりたかった。それだけだ。

彼女は言った。
わたしあした休みで前の職場の人に会うから楽しみでテンションあがっちゃって。

仕事の話をしてる中、彼女は話題を変えたのしそうに夢中で話続けた。
私は話すのをやめ、感情をおさえて、
最後に彼女に言った。

もしなければいいし、あるときはきいてください。

彼女は
わからなければあたしたぶん自分からきいてるし、ないからきかないとおもうんですよね。仕事中もわからないとまわりのいろんなひとがやさしいからきいちゃうしー、

…話しかけたことを後悔しはじめ、ガッカリした気持ちとイライラした気持ちをおさえながらダラダラ話す彼女の話をきいていると彼女は突然話をとめて、キョトンとした顔をしながらわたしの顔を覗き込み、首をかしげながら言った。

あっれぇー⁈どーしたんですかー⁈
◯◯さんー⁈
なんかあったんですかー⁈

マンガだったら エヘッ とかぽわーん とか横に書いてありそうな顔で
天然りぼんさんは言った。

その瞬間なにかがきれてわたしはおもったことそのまま口に出してしまった。

すいません、なんか◯◯さんの話をきいてるとイライラしてしまって。
ここ 今仕事中だし、そんなに大きな声で関係ない話をするのもやめてください。

彼女は すいませんすいませんわたし
あっなんかわたしすいません…
テンションが高くなってぼーっとしてしまって…

いえ、失礼しました。とわたし。

その数分後、ひとりが休憩にいき2人きりになった瞬間、彼女がポロポロ泣きながらすいませんすいませんと泣き出した。
マンガだったら、シャボン玉みたいなスクリーントーンで効果をつけるような場面になるだろうか。

わたしは大人になってから
初めて女の子をなかせてしまった。

私物倉庫の鍵を渡し、なにか飲んで休んでくるように促した。
泣かせてしまったことを後悔し、上司に報告して彼女のケアを頼んだ。

彼女の涙を見るまで自分の言いすぎに気づかなかった。反省した。
若い頃はたくさん泣いたけど、
泣かせたひとの気持ちがはじめてわかった。
いやなもんだな泣かせるのも。

数時間後 早番がいなくなったあと、
エレベーターで一緒にいたらまた
ポロポロ泣きながらすいませんすいませんといいだした。
◯◯さんに迷惑かけてすいません、すいませんと泣き出した。
…えっ⁈また⁈

なんにもはなしてないのに
きゅうに泣き出す彼女。
天然りぼんさん。35歳。

今日のわたしは彼女といると
だめみたいなのでわたしは一緒にいないようにするためその後全部ひとりで
仕事した。

泣かれても困るし、
迷惑だなんて言ってないし。

意思の疎通がはかれない子には
任せられないなと思った。
女の子の涙をかわいいとは
おもえない。わたし年下の女だし。

このまえはふたりでいるとき、
他部所のオジさんに
わたしが異常に若く見えるから
同じくらいの年に見えないといわれ
天然りぼんさん、怒ってたのに。
今日はなんだか弱弱しい。

こないだは
◯◯さんといたら、誰だって老けてみられちゃいますよね⁈
わたしだって服装によっては若くみられてるんだから‼

といわれ わたしの顔薄くてすいません、と逆にあやまったんですがね、わたし。

なんかもう、恨まれてんのかな?
とかおもってしまいました。
エレベーターとかで泣いて謝られたらさ、わたし完全に悪者じゃん。
まあ、仕事に対するモチベーション
辛口だから悪者といえば悪者かもしれない。
でもさ、いじわるじゃなくて ただ
ちゃんと仕事したいから必要なこと
してるだけなんだけどなー。

でも仕事一生懸命やるのが当たり前ってわたしが思ってるのを彼女に押し付けちゃいけないんだよね。
彼女はプライベートを大切にしていて
仕事はちゃんとやるために準備して取り組むとかじゃなくて、困ったときに誰かにきくスタイルなんだから。

それが誰になろうがそのときなんとか
なろうがなるまいがどうでもいいんだ。

たぶんわたしと彼女は合わない。
彼女、わたしの姑にソックリ。
きっと女の子らしくてかわいい
のんびりしたおちゃめな子なんだ。

きをつけよう。
あいてにもとめすぎたわたしが悪い。
ふー。
泣かせちゃ損だなー。
せめて泣かせたならメッセージくらい伝わってればよかったんだけど…。
たぶん泣く泣かないじゃなくて、伝わらないんだ。
彼女、妖精さんなんだきっと。
そう思おう。