『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます』

久川航璃著　メディアワークス文庫

第6回カクヨムWeb小説コンテスト〈恋愛部門〉大賞受賞の溺愛ロマンス！

【内容（「ＢＯＯＫ」データベースより）】

商才と武芸に秀でた、ガイハンダー帝国の子爵家令嬢バイレッタ。彼女には、8年間顔も合わせたことがない夫がいる。伯爵家嫡男で冷酷無比の美男と噂のアナルド中佐だ。

しかし終戦により夫が帰還。離婚を望むバイレッタに、アナルドは一ヶ月を期限としたとんでもない“賭け”を持ちかけてきて――。

周囲に『悪女』と濡れ衣を着せられてきたバイレッタと、今まで人を愛したことのなかった孤高のアナルド。二人の不器用なすれちがいの恋を描く溺愛ラブストーリー開幕！

『一ヶ月以内に子どもができなければ、離婚する』

政略結婚の解消を望むバイレッタが、夫・アナルドに提案されたとんでもない賭け。夫への想いと不信感でバイレッタの気持ちが大きく揺れ動く中、賭けの期限は迫ってくる。しかし結果を待つ間に帝都でクーデターが勃発。軍部ではアナルドが首謀者という噂が流れ、バイレッタの身にも危険が迫る!?

悪女の烙印を押された令嬢・バイレッタと、冷酷無比で愛を知らない軍人・アナルド。不器用な二人の恋の行方は!?

なんと、私がこのような本を手に取るなんて自分でも笑っちゃいます。

でもね、中学生？高校生？の頃、少女向けの恋愛小説でシリーズになっているものがあって、ある貸本屋で見つけて夢中になって読んだことがありました。

そんな頃を思い出して読みたくなりました。

その貸本屋で印象深く覚えているのはクロード・アネ原作の小説『アリアーヌ』です。

映画になったタイトルを聞くと誰でも知っていますよね。

あの『昼下がりの情事』なんですよ。

『昼下がりの情事』の原作の翻訳ものだなんて知らないで読み始めたんですけど、途中で気が付きました。

オードリー・ヘップバーンとゲイリー・クーパーでしたね。

ハッピーエンドはロマンス小説の定番ですから、読後は一日幸せ気分になれます。

というわけで、この年齢で読むのはちょっとどうなんだろうと思いつつ読んでみます。

これは、この上下巻では終わらず、まだまだ続くそうです。

今のところ今年６月にⅣまで出版されています。

面白ければ完結まで読むつもりですがどうなることか。

コミックのお好きな方は、そちらで楽しむのもいいと思います。

読み始めで笑ってしまった。

だってね、架空の国の物語なのは分かるけど、ガイハンダー帝国とか、バイレッタだの夫がアナルド・スワンガンだの名前とか地名とかの固有名詞がいかにもコミック系の命名で笑える。

ヒロインは１６歳のバイレッタ。

ホラント子爵家の娘。

ストロベリーブロンドの長い髪。アメジストの瞳で美人。

バイレッタは商売人として自立するのが夢だったので結婚は望んでいなかった。

ところが、世間でバイレッタの評判が良くない（毒婦と噂されている）ことから、このまま結婚できないのではないかと考え、父親が勝手に結婚を決めてしまった。

一方ヒーローのアナルドは陸軍少佐からこの度中佐に昇進していた。

上司からの勧められたこの結婚が昇進条件。アナルドの結婚は打算そのものである。

アナルドは切れ長のエメラルド・グリーンの瞳は涼しげで白磁の肌によく映えると描写している。

美貌の中佐として有名な２５歳。

アナルドの結婚相手の条件は、＜根性があって肝が据わっている腕つぶしの立つ性別が一応女性に分類される相手＞。

見た目は気にしなくて、要は度胸と腕だと言う。どういうこっちゃ？

実は、バイレッタは毎日軍人の父親と剣のけいこで腕は立つ娘だ。

後に、スワンガン伯爵邸での生活で、なぜその条件を付けたのか理解するのである。

アナルドのお屋敷スワンガン伯爵邸に結婚式のために出立する。

ところが、アナルドの父親のスワンガン伯爵が言うには、前日、肝心の夫になるはずのアナルドは戦地に赴いてしまった。

戦争が終わるまでは帰れないとのこと。

そして、終戦まで８年の月日が流れた。

そして終戦、戦地のアナルドに１通の手紙。

「拝啓　見知らぬ旦那様

　貴方と結婚して八年目を迎え、便り一つもないどころか互いの顔すら知らない名ばかりの妻ですもの。

この機会にぜひ、離婚に応じて頂きたく存じます

顔も知らないあなたの妻より」

終戦を告げたとたんに来た挑発的な手紙にアナルドは面白そうに口角を上げた。

８年経ち、バイレッタ２４歳、アナルド３３歳。

アナルドが帰ってくると二人は初めてお目見えするわけだ。

どういうエピソードに展開していくのか、楽しめそうだ。

そして読了。

思っていたより面白かった。

一番気に入ったのは、文章が簡潔で歯切れがいい。

テンポよく物語が進むので飽きずに読むことができる。

１センテンスが短くて、これに曲を付ければまるでラップでもいけそうだ。

また登場人物たちの会話が面白い。

架空の国のお話だが、貴族ということはそれなりの時代だと思うのに言葉遣いが変。

だって、アナルドの上官が軍人なのに「まじーっ！」とか「～じゃないっすか」とか…

部下たちもため口だったり、まるで現代語。

バイレッタ視点が中心となって物語が進むので、彼女の心の声がまた面白い。

思わずクスッとすること多々。

シリーズ化されているのでまだまだ続くのに、今回の上下巻で完結しても何ら問題ないような終わり方。

さてさて次回はどう展開していくのか気になる。

次作もすでに買ってしまった。

ミステリーの謎解き物と違って頭を使わないので気楽に読めるのがいい。

興味のある方は読んでみてね。楽しめますよ。

■Web小説から火がついて、文庫、コミックへと…『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます』