『過ちの雨が止む』

アレン・エスケンス著　創元推理文庫

この夏、ある男の死が、僕を本当の大人に変えた

自分と同じ名前の男の不審死を通して

青年は家族の秘密に向き合う

3冠受賞の『償いの雪が降る』待望の続編！

【内容（「BOOK」データベースより）】

大学を卒業し、AP通信社の記者になったジョーは、ある日、自分と同姓同名の男の不審死を知らされる。死んだ男は、名前が同じだとしか知らない実父なのかもしれない――。凶行の疑いがあるというその事件に興味を抱いて、ジョーは現場の田舎町へ向かう。多数の人々から恨まれていた男の死の謎に挑むが……。事件を通して家族の秘密に直面する青年を情感豊かに描く、心ゆさぶるミステリ。

１作目の『償いの雪が降る』は、好みの小説だった。

前作では、主人公ジョー・タルバートは大学生で、何に対しても真剣に取り組む姿に好感を持った。

本作では社会人となり、ＡＰ通信社の記者として働いていた。

自閉症の弟ジェレミーをドラッグやアルコール依存症の母親から引き取り後見人となって、恋人のライラと３人で暮らしていた。

ある日、編集長のアリソンに、ジョーと同じ名前のジョー・タルバートという男がミネソタ州キャスペン郡で死んだことを知らされた。それも犯罪が絡んでいるらしいと。

ジョーは、父親と同じ名前を付けられたことを母親から聞いていたので、その死んだ男は自分の父親の可能性は大だと感じた。

今までは、母と自分を捨てた父親のことを知りたいと一度も思っていなかったが、死んだことにより、父親のことを知りたいと思い始め、キャスペン郡まで調べに行くことにした。

男は “トーク” と呼ばれていて町中の嫌われ者であり、かつて有罪になった犯罪が９件もあった。

農場の厩舎で頭部打撲の他殺だった。

遺体発見時、母屋ではトークの１４歳の娘エンジェルもクロナゼパムの薬により、意識不明の状態で発見され、今は病院で昏睡状態が続いている。

警察は自殺未遂だと考えているようだ。

ジョーは、自分には腹違いの妹がいたのに驚いた。

また、狭い町なので噂はあっという間に広まり、町中の人間からはいろいろな話を訊くことができた。

トークにはジーニーという妻がいたが、遺書を残し半年前に首を吊って死んでいる。

ジーニーは父親の莫大な遺産を相続し、広大な土地と農場を持っていた。

ジーニーが死んで、すべてトークが相続することになる。

トークには兄チャーリーがいて、トークが死んだことにより遺産目当てでやってきた。この兄弟は仲が悪かったらしい。

もし、娘エンジェルが亡くなれば、遺産はチャーリーがすべて相続するつもりでいたらしく、そこにジョーがやってきたので、敵愾心をあらわにし始めた。

なんだか、ジョーはとんでもない状況の中に飛び込んできたようだ。

物語は構成もよく、自然な流れで読みやすい。

犯人解明までの謎解きとともに、ジョーの人間関係にも焦点を当て並行して語られていく。

ドラッグとアルコール依存の母親との関係。

恋人ライラと、あることで、うまくいかなくなりその修復ができるかどうか。

自閉症のジェレミーのこれからのことについて。

それらのことが、ジョーの肩に重くのしかかっている。

ＤＮＡ鑑定により、やはりトークはジョーの父親であることが証明され、ジョーは徐々に遺産相続に乗り気になり、皮算用しはじめる。

１作目の “いい奴ジョー” が “いやな奴ジョー” に感じられて、ちょっと読者としては違和感を持ち始めた。

ところが後半、事件解決の道は二転三転して、複雑に絡み合い、思ってもみない結末を迎える。

結局、彼はやっぱり “いい奴” だった

はははっ！よかった

“いい奴ジョー”は健在なり！！

そして、この本のタイトル『過ちの雨が止む』の意味が読後理解できた。

“過ちの雨” が止んでよかったね、ジョー

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