『ワイルド・フォレスト』

サンドラ・ブラウン著　ｍｉｒａｂｏｏｋｓ

生き残ったのはあなたと私、二人だけ

予期せぬ飛行機事故

見知らぬ男と女の、生きるための闘いが始まる！

【内容（「BOOK」データベースより）】

衝撃がおさまり、静寂が訪れた。おそるおそる目を開けた社長令嬢ラスティは、眼前に広がる惨状に呆然とした。彼女が乗った飛行機が墜落したのは、人里離れた山の奥らしい。乗客は全員死んでしまい、助けを呼ぶ術もない。そのとき、隣に倒れていた男が意識を取り戻した。暗い瞳をした屈強そうな元軍人――頼れるのはこの人しかいない。見知らぬ同士の男と女の、壮絶なサバイバル生活がいま始まった。

サンドラ・ブラウンの小説にハズレはまずない。

どれもストーリーが面白い。

文章もうまいので読者を夢中にさせてくれるのがうれしい。

かなり前に、この作者の本を読み漁った時期があった。それほど面白い。

ロマンス、ロマサス、ミステリー、サスペンス、彼女の本ならどのジャンルも好きだ。

この小説も、冒頭で小型飛行機の機墜落事故に遭って全員死亡、自分一人が助かったと思い心細さに呆然とする女性の描写から始まるので、すでにそこから引き込まれる。

誰か生きていてと願い、探すが頭がない遺体などもあり、ひどい有様。

だが、ひとりだけ意識はないが生きている様子の男を見つけた。

眼を開けたその男は、通路を挟んだ隣の席の男だった。

搭乗時、遅れて乗り込んだ彼女にあからさまに嫌な顔をした男だ。

それでも、生きていて欲しいと願った。一人は嫌だ。

男はこめかみに大きなこぶができていて、それが失神の原因らしい。

やがて意識を戻し、彼の最初の言葉が「墜落したんだな」だった。

死んだのは６人、２人が生き残った。

女はラスティ・カールスン２７歳。

ビバリーヒルズの不動産会社経営の父親を持つ上流階級の令嬢だ。

男は元陸軍特殊部隊でベトナム帰還兵のクーパー・ランドリー。

飛行機は、油が漏れていていつ引火してもおかしくない状態なので、ほかの乗客の荷物を探り必要なものを集めて、飛行機を離れることにした。

死んだ乗客の荷物を漁るのを拒否した彼女だったが、男の威圧的な言葉に、命じられるままに行動した。

墜落した場所は、フライトコース内なのか外れているのか？外れているのなら救助は望めない。

険しい原生林に墜ちたので、生きるためには、この男を頼る以外にない。

そして、様々な困難に遭遇しながら、厳しいサバイバルが始まった。

この本は翻訳出版が２０２２年１１月。

男はベトナム帰還兵とあるし、携帯電話の記述もないので、時代はだいぶ前のようだ。

彼女は墜落時ショック状態で痛みを感じていなかったが、膝から下の皮膚が裂けて、筋と肉が見え、出血もかなりのものだった。その後、傷が悪化して化膿したりで、状況を想像して読者は怖くなる。

男は冷静で、適切な処置をする。

その後、水と食べ物の調達、寒さ対策など、男の頼もしさはさすがサンドラ、女性読者を喜ばせる。

ちなみに、このクーパーは、４０歳前後、眉目秀麗ではないが、悪くない顔らしい、皮膚は一年中太陽に焼かれているような肌で、人を寄せ付けず、妥協を許さない頑固な男に見える。

まさにワイルドヒーローだ。

事故に遭ってから２週間後に救助されるが、思っていたより早かったので、もう少し困難なサバイバル生活があった方が面白かったのになーと、ちょっと不満。

途中、原生林の小屋に住む二人の男が登場し、クーパーは命を狙われ、ラスティを守るため男たちを殺した。

そのくらいがサスペンスで、結局この小説はロマサスほどのものでもなく、単なるロマンス小説だった。ちょっと残念。

サンドラ・ブラウンは、多作作家なのでネタ切れになっているのかな？

ミステリ小説の合間に読むには、ハッピーエンドのロマンス本は頭を休めるのにいいね。

■原生林に墜落した飛行機、二人の生存者のサバイバルが始まる『ワイルド・フォレスト』