『生物学探偵セオ・クレイ街の狩人』

アンドリュー・メイン著　ハヤカワ・ミステリ文庫

内容（「BOOK」データベースより）

大学教授を辞め、テクノロジー企業に身を置いているセオ・クレイ。自らの頭脳が軍事や諜報に利用されかねない生活に倦んでいた彼に、九年前に失踪した子供の事件を調べてほしいという依頼が舞い込む。調査に乗り出したセオは、不気味な都市伝説“おもちゃ男”の背後に殺人鬼の影を見出した。闇に潜むシリアル・キラーを狩り立てろ。セオの怒涛の追跡が始まる!型破りな活躍が読者の度肝を抜く、衝撃の生物学探偵シリーズ第二弾。

セオが２メートル以上の大男の連続殺人犯と闘ったあの事件から１年経った。

セオは大学教授を辞め、ロサンゼルスに移り、いまは＜オープン・スカイＡＩ＞の社員になっている。

この会社は、単なるテクノロジー系企業のように見えるが、その実態は国防情報局（ＤＩＡ）の請負業者だ。

セオが開発した＜ＭＡＡＴ＞の改良版＜プレドックス＞がすでに完成している。

これは、１作目で知り合った信頼すべき女性ジリアン以外には話していない。

ジリアンは１作目の連続殺人鬼のとどめを刺してセオを救ってくれた女性。

ある日、セオは、黒人の会計士ウィリアムに９年前に失踪した息子の事件調査の依頼を受ける。

当時、警察は真剣に捜査をしてくれず、白人の事件を優先した。

誘拐されたのは間違いなく、自分は息子がすでに死んでいると思っているので、探して欲しいのではなく殺した犯人を見つけて欲しいと…

調べ始めると、ほかにも同じ地域周辺にいる子ども二人が行方不明。

黒人居住者多い地域で、失踪届けも出されていない。

そして、その子ども二人に共通していたのは、“トイ・マン（おもちゃ男）” の絵を描いていたこと。

黒い男が袋におもちゃを入れて、子どもたちに配っている絵のようだ。

この地域限定の都市伝説としてこの “トイ・マン” は、

＜エルム街の悪夢＞フレディ・クルーガーのように、子どもたちの間で恐れられていた。

どうやら、実際に子どもたちの中にはその男に会ったこともあるらしい。

セオは調査を始めることになる。

トイ・マンに連れ去られたが、運よく逃げられた黒人の少年に話を聞くことができた。

トイ・マンの家を少年の記憶からたどり、セオは調査に向かう。

すでにそこの住人は老婦人になっていて、話を訊いていると犬が庭から人骨を咥えてきた。

後に、警察は掘り起こした穴から見つけたバラバラの骨は

１７体の骨だった。

年齢は８歳から１３歳で全員少年。

セオは＜プレドックス＞のプログラムを駆使してトイ・マンを追いかける。

１作目の読後、２作目に期待を持てると思っていたけれど、どうも私には２作目は好きになれなかった。

２作共に、セオが規則から外れて無謀な行動をとるのが、どうしても気になる。

１作目は証拠物をくすねたし、２作目は土の中から多量の人骨がバラバラになって出土したが、その骨をある方法でやっぱり手に入れた。

その現場から持ってきたのではないので違法にはならないのかもしれないけれど、２作共に警察には許されるの不自然。

そこが、しっくりこないのだ。

前作以上にかなり大胆な行動をとるようになっているが、警察ではないからこそ、それができるのだと言えるかもしれないけれど、違法すれすれでやっぱり気になる。

それと、伏線が納得いく回収をしていないことでスッキリしない。

トイ・マンが獲物を選ぶ条件は、誘拐のしやすさだけではなく、被害者の珍しい外見であるとしている。

緑色の眼、あるいは色素欠乏症（アルビニズム・アルビノ）である少年ばかりだ。

単に、犯人がそういう異質な遺伝子を持つ少年が好きで、そういう少年に対しての性犯罪ということらしいが、何かその説明が中途半端で曖昧だ。

＜エルム街の悪夢＞フレディのような殺人鬼だから、理由だの動機だのってあってないようなものなのか。

前半までは、背筋が凍るほどの戦慄を覚える殺人鬼に思えたが、結局だんだん印象薄い殺人鬼になってくる。

その殺人鬼の住処に警察にも連絡せずセオは乗り込み、そこでまたもや１４体の遺体を発見。

非合法なことを平気でする無謀すぎるセオに、これを面白いキャラだと手放しで拍手喝采するか、私のように不自然で好感持てないと思うか、わかれると思う。

また、この小説の犯人は登場人物紹介欄には出ていない。

１作目も同様だ。

結末間近になって、やっと名前が判明。

だから、登場人物の中の誰が犯人かという犯人当てはできない。

突如として登場する人物だから。１作目はともかく２作目もそうだと、ちょっと私の好みのものではないと思った。

私は、殺人鬼がどのように殺人を犯してどのように遺体を処理したのか、もっと生々しい描写をしてこそ、この殺人鬼の恐ろしさが倍増されると思う。

殺人鬼の行動の描写が客観的なものでしかないので、今一つ恐ろしさが反映されない。

それなので、犯人の視点とセオの視点とを交互に描かれると俄然おもしろくなるのになーなんて思ったけど、そういう作風ではない作家ということだからこっちの願望を言うのはナンセンスだわね。

前作と同様、犯人はあっけなく頭を打たれて死んだ。

すべてが不自然で、うーん？と言った感じ。

ルールを犯しても、罪の意識を感じていないセオに非常に違和感を覚える。

セオが自分で思っているのは、「殺人犯と同じで、自分はソシオパス（反社会性パーソナリティ障害）だ」と…

子どもを狩っているのはこの殺人鬼ではあるが、セオも殺人鬼を異常なまでに狩っているソシオパスだということ。

この小説の題名の中にある『狩人』というワードに深い意味を含むように思う。

また犯人が死んだ後に、もうひとひねりの結末は、

あれでいいのか？

と思える終わり方。

うーん！やっぱり納得できないし、セオがあまり好きじゃなくなったな～　(*´･┏x┓･`)ゞ)))ｺﾞﾒﾝﾈ

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■『生物学探偵』シリーズ第二弾！『生物学探偵セオ・クレイ 街の狩人』

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