『月光ゲーム』
Yの悲劇'88
有栖川 有栖 著 創元推理文庫
かなり古い作品です。
有栖川有栖の名前は知っていたのですが、私の好みのものなのかわからなく今まで読まないままでした。
あらすじを読むとなかなか面白そうなので、それでは1作目から読んでみることにしました。
【内容(「BOOK」データベースより)】
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく…。いったい犯人は誰なのか。そして、現場に遺されたyの意味するものは何。
矢吹山の夏合宿に参加した3組の学生たち。
①英都大学・推理小説研究会の男子学生4名。
②雄林大学の男子学生4名と女子学生3名。
そして、たまたま現地で偶然出会った同大学男子学生3名。
③神南学院短期大学の女子学生3名。
17名が和気あいあいとキャンプ生活を楽しんでいた。
この学生たちに起きた恐ろしい出来事がストーリーとなる。
最初の不審な出来事は、神南学院短期大学の女子学生の一人が<先に帰ります>と書置きを残していなくなった。
そんな中、矢吹山が噴火を起こし道が遮断されて、彼らは身動き取れなくなる。
度々噴火を起こし、その都度、火山礫を避けるために林に駆け込む。
そのさ中に最初の殺人事件が起きる。
雄林大学の学生の一人が背中を刺されて殺される。
そこにはダイイング・メッセージのように<y>と読める文字が残されていた。
そしてキャンプ5日目に雄林大学の学生の一人がまたもや消えた。
第二の殺人は同じく雄林大学の学生が左胸を刺され死亡。
同様に<y>の字が…
状況から学生たちの中に犯人がいる。
皆、疑心暗鬼になる。
犯人の動機が分からないので、無差別殺人なら今度は自分が殺されるかもしれない、空からは噴火の熱い火山礫が降り注ぎ、クローズド・サークルで逃げられない。
登場人物が17名で、それぞれにあだ名があり覚えるのが大変。
登場人物一覧をいちいち確認しながら読むことになる。
語り手はワトソン役である “有栖川有栖” の<僕>で進められる。
原作者と同名の有栖川有栖をワトソン役に据えたのが面白い設定だ。
探偵役は “江神二郎”。推理小説研究会の仲間で有栖の先輩である。
江神がどのような名推理で犯人を見つけるかその展開が楽しみである。
全361ページの途中298ページで<読者への挑戦>の項がある。
ここでは物語を一時中断し、真犯人を特定するに充分なデーターが揃ったので、読者に推理して欲しいと挑まれる。
あなたの推理がまとまったら次のページにお進みください、そして次の章では探偵役の江神二郎が犯人を指摘するとある。
私なりに、一応動機と犯人は推理したが、どうしてもダイイング・メッセージの “y” の謎は解けない。
もしかして“γ(ガンマ)”なのかなとも思ったが、γとしても意味が分からない。
分からないままだが、先に読み進めることにした。
読了。
クローズド・サークルでの殺人の本格推理ものは私が一番好きなミステリーだ。
読者への挑戦までは面白く読んでいたが、最後の江神二郎の犯人指摘の章はちょっと盛り上がりに欠けたかな。
探偵役は主役なのにこの江神二郎があまりにも影が薄くインパクトがなさすぎ。
もっと個性的なキャラに作り上げて欲しかった。
また“y”の意味もちょっとこじつけのような感じがしたなー。
伏線の中にはなかなかよく考えられたものもあり、なるほどそういうことだったのかと感心したものがあった。
ストーリーとしては好みのものであり、次作の『孤島パズル』『双頭の悪魔』までは購入しているのでこのシリーズは続けて読もうと思っている。
さて、私が推理した犯人は当たっていたのか?
それは、内緒にしておきます (* ´艸`)