「吉田松陰」を聖化する愚かびとー吉田松陰と日本近代 岸田秀

 

  吉田松陰だけではない 「天皇」を聖化する人々も愚か人である

  2・26事件の蹶起将校 磯部浅一 の遺書 にこうある

 

     ___今の私は怒髪天を衝くの怒りに燃えています

        私は今は 陛下を御叱り申し上げるところに迄

        精神が高まりました

        だから毎日朝から晩まで

        陛下を御叱り申して居ります

        天皇陛下

        何と言うご失政でありますか

        なんというザマです

        皇祖皇宗に御あやまりなされませ

  『という絶叫は 天皇のために身命を捧げたつもりなのに その天皇に裏切られた驚愕と怒りの叫びであり

   磯部が天皇の立場をいかに認識していなかったのかを示している 

   その自己中心性はまさに 松陰の自己中心性と同じである

   追記

   テルアビブ空港事件の岡本公三は 初の獄中単独会見をしたフランス人ジャーナリストに

   「尊敬する人物は」と聞かれて 「吉田松陰」と答えたとのことである』

 

  吉田松陰「幽囚録」にはこう書かれている

 

    ___朝鮮を責めて質を納れ貢を奉ること古の盛時の如くならしめ

       北は満州の地を割き 南は台湾・ルソンの諸島を収め

       漸に進取の勢いを示すべし

  『これは後の征韓論 大東亜共栄圏のコースの提唱であり 屈従する幕府と侵略を説く松陰の対立は