梯子ダルマ オフィシャろうブログ

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ラジオネーム:梯子ダルマとして深夜ラジオにメールを送っていた、現在放送作家として働く26歳の男が書くブログです。

思ったことを書いて、賛同・誹謗中傷などの反応がきて、コメントがきっかけで会話をしたり、そんな交流が嬉しいです。

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『ラジびと』という本がある。






ハガキ職人・放送作家などラジオが好きな人間、58人ものロングインタビューを掲載した本です。大学院でラジオリスナーを研究しているサエカさんという方が、制作したものです。

自分も、ラジオネーム:ペリークロフネさんからの紹介でインタビューを受け、拙い口語を文字起こししていただき、インクで後ろの方のページを汚させていただいております。

先日、サエカさんご本人にわざわざご足労いただき、現物をいただきました。ご丁寧に直筆の手紙も添えてありました。どこまでもちゃんとした方です。頭が下がります。

全部でおよそ200ページ。隅々にまで、ラジオリスナーの生活や矜持が詰め込まれています。インタビュー中に出てくる番組名や用語などに細かくキャプションが付いていて、ラジオを知らない人でも読みやすいような工夫がされています。濃い上に、しっかりと“外“に開いています。

と、ここからは個人的な話になりますが、読んでいて嬉しかったことが3つもありました。

1つ目は…ラジオネーム「阿呆くさい北斎」さんのインタビューです。ラジオにメールを送るきっかけが…僕にTwitterのアイコンを描いてもらうため、だったそうです。「絵を描いてもらいたいから送り始めた」と。そんなことある…?

少なくとも僕の些細な行動が、1人「ハガキ職人」を生んでいるじゃないか!そんな彼のメールが、また違う誰かを笑わせてるじゃないか!そんな笑顔のあなたが、またハガキ職人になるんじゃないのか?!と、めちゃくちゃ恐縮ですが、そんな広がる期待の波紋のフチを、ついつい見つめてしまうのでした。

ラジオを聴き始めるタイミングは人それぞれというけれど、そんな“それぞれ“の1つに自分がなれたことに、どうしようもなく、喜びが湧いてくるのです。

2つ目は…「劇団献身」を主宰する奥村徹也さんのインタビュー。奥村さんといえばアルコ&ピースのオールナイトニッポンのヘビーリスナーで、そんなアルピーANNの最終回を聴くハガキ職人たちを題材にした舞台『死にたい夜の外伝』を2018年に公演されています。

(なんと!)僕が投稿していたネタにまつわるセリフも取り入れていただき、公演後、嬉しくて台本を購入してしまいました。

その繋がりから、次の公演も観劇させていただき、次回は下北沢 OFF・OFFシアター 、2020年4月3日(金)から12日(日)に公演される『スケール』という舞台です。

「アルピーANN育ちの演劇人が作った舞台、ちょっと気になるな」というラジオ好きの方は、フラッと足を運んでみましょう。僕も楽しみです。

そんな奥村さんが、今回のインタビューで僕の名前も挙げつつ「一緒に何か出来たら」とおっしゃっていました。くださいました。正直、これまで舞台2作品を観ただけですが、僕からしたら「なにヤバこの人凄いな」という印象なので、そんな人から「友達が増えて嬉しい」という言葉が出たことに、この上ない喜びを感じます。さっき、思わずメールを送っちゃいました。

ラジオきっかけの繋がりというのは、とても素晴らしくて。イベントで会った人、Twitterで知り合った人、好きな番組を手掛けている人…。阿呆くさい北斎さんの件もそうですが、ラジオを隔てて関わった人に、悪い人が全然いませんね。もっといてもいいだろ、変な奴。

作家という仕事を始めてからも、その繋がりはとても僕にとって貴重でありがたく。ベネットさんからはイベントに誘っていただけたし、ジャーゲジョージさんやピープルピープルさんとは一緒に企画会議をさせていただいてるし、新居を案内してくれた不動産屋さんはオードリーANNリスナーだったし。…最後はあんまり関係ないですが。

で、今回この『ラジびと』を読んでいて、まだ会ったことのないラジオリスナーたちに対しても、そんな親近感が生まれてきました。湧き出てしまいます。学校生活や恋愛関係、家族の事情…各々の抱える色んな環境が、なぜかゴリッと、不思議なタイミングで、「ラジオ」というメディアに絡み始める瞬間がある。みんな、そうなんですね。そうだったんだ。どうりでね。だよね。


兎にも角にも、改めて「対価を求めず真夜中にただ面白い文章を送り続ける人々」という現象の狂気さと興味深さを実感します。

気付けば自分の人生に入り込こんでいる。「パラサイト」的、ラジオというメディアの魅力。その刺すような感染力と根の強さ。言葉にできない“正体”が、きっとこの58の声の裏側に潜んでいます。

繰り返し読んで、手招きして、そんなエッセンスを引きずり出してみたい。確実にこの本には、形容しがたい歪な熱がこもってます。出版も計画しているそうなので、楽しみに待っていましょう。

あ、嬉しかったこと、3つ目は、しっかり僕の苗字が、旧字体で表記されていたことでした。ありがたいですよ、こういうのが。本当に。