今日の一冊。

・「そうか、もう君はいないのか」 城山三郎 著 新潮文庫(2010)

 

直木賞作家でもある城山氏の、夫婦の軌跡を辿った本書。

 

年を重ねると涙もろくなりますが、本書も例外ではなく。

ただ複雑な想いが心を反芻しました。

 

誰しもいつかは通る道である「死」ですが、筆者には失礼かもしれませんが、ある意味このよ

うに妻を述懐できるのは、やはり幸せな人生でなかったか。

 

 

不思議なもので、世間では毎日「死」が流れています。

シリアの空爆、ISの自爆テロ、殺人事件、交通事故等々。

 

ただし、このような膨大な量の死に対して、本書のような最愛の妻との死別の方が、人には重力を持って受け取られる。養老猛氏によると、人の死には1~3人称の死があるというが、そういうことなんだろう。

 

閑話休題。

 

 

本書では奥様が亡くなられた後の氏の様子について、娘さんの視点でも描かれており、「半身そがれたような」氏の様子が見受けられます。

 

私であればどうだろう。

 

まだ若いつもりですが、実は十代からこのことは、私の心象テーマとして膿のようにたまっています。

 

最終的に娘さんは父親(城山氏)の死についても述懐されており、幸せそうな顔で逝った様子が描かれています。

 

氏は「どうせ、あちらには手ぶらで行く」という本も発表されています。こちらは「そうか、もう君はいないのか」とは異なり、もともと手帳記録(日記)のような体裁で書かれているため、本来外部発表するようなものではなかったのかもしれません。

 

こちらも、合わせて読むと、生きることと死ぬこととの折り合いに少しは触れることができそうです。