成人式…

自分は参加経験がない
両親共働きでお店を経営しており
店舗展開でめまぐるしかったから
専門学校卒業後
就職にあぶれた俺は必然的に両親の店舗で
働くことになった

12月にオープンし
とにかく忙しく、正月気分を甘受することなど
できなかった

母は会社の役職者であったが
当時の店舗責任者が突如トンズラを決め込み
更に後任者が育成されていなかったものだから
自然店長を務めることになったのだ

なんども言う 笑
本当に忙しかった


色んな人種が客として来店した
ヤクザだって来た

酒も出すから客同士の小競り合いも毎日あった

酒が入ると大変だ
支離滅裂な苦情も持ち込んでくるし
言い分が通らないと胸倉を掴むといった
強硬な行動を取ってくるものもいた


トラブルの一切は母が指揮をとった
纏める事ができるものは部下に任せ
不可能なトラブルは自らで捌いた


よくヤクザが酒宴盛り上がる客室に単身乗り込み
彼らの言い分をまとめ丸め込んだものだ

話を丸め、スタッフたちが息を潜め待つ中
微笑みながら彼女はホールに戻ってきた

「あの人たち大丈夫だったよ」
「店長ごめん、俺たちも悪かった、あんたの
顔に免じて許して欲しい、また遊び来たいんだ
いいかい」

「そんな風に話が反転するんだよ
初めは私らを責め立ててたのに急にコロッと変わるんだもん」
「みんな許してやろ、いいでしょ」

母は交渉の魔術師だった



遊ぶどころか寝る時間すら
ままならない多忙な日々が3年続いた

俺はよくそんな出来る母とよく比較された
沢山理不尽なことをスタッフに言われてものだ


「母親は出来る人物なのに息子は使いもんにならんな」と陰で散散言われた


卑屈にもなった


同じ年頃のやつは遊んでるのに何故俺だけ
増してや社員でもないのに

バイトの時給で
何故これだけの多忙を…⁈

多忙は苦行に変った
苦行は地獄に変わった


自分を理解するものはいない

「もっと社員スタッフに認められるように
ガンバりなさい」
「愚痴を言わず仕事に献身を尽くしなさい」

そのように言う母でさえ信じられず敵に見えた


3年後俺は厨房業務の手荒れがケロイドに変わり
皮膚科の医師の勧めで休養を取るため
店を上がることになった


敵だったスタッフたちの餞けの言葉は温かった

「佳之さん、よく踏ん張りぬきましたね」
「さすが常務の息子、根性がある」
「ここで踏ん張れたんだ 佳之さんは環境が
変わってもどの世界でも立ち回って行ける」


その言葉は嬉しかった


母と踏ん張り抜いた20歳から23歳の
3年間は大人の社会に近づくための架け橋となる
最初の一歩だった


あの頃の自分が今日初めて愛おしく感じた
なんでだろう
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