いつものようにライターで煙草に火をつける。
水気を含んだ空気はどこか懐かしい匂い。
煙草の煙は音もなく立ち昇り広がり空に溶ける。
通りを行く車の音と川のせせらぎがまだ薄暗い街に重なり合って響く。
水かさを増した川の流れはいつもよりも少し速い。
滲んだ雲はやがて昇る陽の光を映し頬を朱らめている。
ビルの非常階段を照らす灯りは眠りに落ちるようにそっと消える。
静かに呼吸を続ける高層ビル群の航空障害灯。
煙草を一本吸い終わる頃にはずいぶん空が白んでいる。
夜明けを告げる鳥達の声。
おはよう、おやすみ。
愛すべき世界が今日も始まる。