友子「ついにこの髪を切る日が来るんだね〜」

美帆「そうだね〜」


私達は中学3年生、つまり今年受験生。
普通の中学校に通うとても仲のいい親友同士。
容姿は良くてモテても恋愛には疎くてどっちも今は彼氏がいない、そんな所まで似ているある意味カップルみたいな友達だった。

そして2人とも腰くらいまで髪が長い超ロングヘア。
学年でも一躍有名だけど、中1の時、親友になった時にふとしたきっかけでお互いヘアドネーションの為に髪を伸ばすことになった。

最低限の31cmじゃ...って事で受験に差し支えのない伸ばせる所まで伸ばそう!って話になって、ついに髪の毛のケアが勉強を押してくる様になって切ることにした。


そしてこの話は学年皆んなが知ってる話。男子の間ではどんな髪型になるのか話題になってて、女子の方では楽しみー!なんて冷やかされて、ある意味、ちょっとしたイベントにもなっていた。


そんな9月の第3金曜日。今日がそのxデー。
土日は美容室混むし、6限授業で終わりは早くないものの、3連休だからちょっと帰りが遅くなっても大丈夫。それとお互い塾もない。
だから行くならこの日しかない!って事で2人は決めてた。


そしてちょっとした話題になってる事もあって、お互いなりたい髪型を決めてくるって事にも。




18時に学校の正門で再び待ち合わせ。
先に着いたのは美帆。それからすぐに友子も着いた。


友子「お待たせー!」

美帆「はーい」

友子「それじゃ行こっか!」

美帆「うん」

友子「美帆ちゃんもやっぱり髪は後ろで一つ束ねにしたんだね」

美帆「うん、なんか惜しくなっちゃうのも怖くて。それでシンプルにね!」

友子「そうそう、なんか触ってると惜しくなっちゃうんだよね〜」





そんな事を話してるうちに辿り着いたのは、学校から歩いて20分の国道沿いにある大衆向けの理容・美容室。
【バーバー・おしゃれハウス 葉山国道店】


この街、ヘアドネーションの協賛店がここにしか無くて、安いしもってこいだ!って事でここになった。


18時半、駐車場にはそれなりの数の車が止まってる。

友子「それじゃいくよ!」

美帆「うん!」



店の自動ドアが開くと、鈴のチリンチリンという音がなった。

目の前のボードには「只今混雑しております。お名前と人数、希望のメニューに丸をしてお待ち下さい」
「またお子さんのカット待ちの際は親御さんはメモに希望の髪型を書いて頂き、店外でお待ち下さい」
と書いてある。

友子とボードに、
岩崎、2人、カットとシャンプーの所を丸をつけた。





カウンターの壁裏にある待合椅子の空いてる場所に座る。
目の前にはそこにカット椅子がある場所だった。

ここは理容室も併設になっていて、左側が床屋・右側が美容院といった感じで分けられてる。


美帆たちは【おしゃれハウス 葉山国道店】と書かれている方のドアから入った。
奥に広い構造で、入口からカウンター・壁を挟んで待合椅子が2列、左側にはレジと道具やら薬品等、置いてある場所、その奥には微かにシャンプー台が幾つが並んでる気がした。

そこから壁で仕切られていて、その壁には鏡が幾つも貼られていて、右側がセット面で縦奥にずっと並んでいる(8列)



そしてこんな感じで美容室を観察してるうちに、シャンプー掛け持ちのアシスタントさんが、

「境田様、3番の椅子へどうぞ」
と言って、私の隣にいた中学生のジャージを着た子が奥へと入っていった。


友子はというと、そんなの興味なしにスマホでLINEしてた。

私はというと全く初めての場所で少し心が跳ねていた。



この時間というのもあるか、周りの人が若い人ばかりで馴染めてはいる。

そんな周りを見渡すと、部活帰りのジャージ着た中学生が1人、私服の中学生っぽい子が1人、私とは違う学校の制服で帰り?の高校生が1人、あとはスーツ着たOLさんが1人。
程々に人が待っている状況だった。



待合椅子からよく見える目の前のカット椅子(8番)にはスラッとしていて気品なOLさんって感じの20代くらいの女性が座ってて胸上くらいあるかな〜って感じの毛先を揃えてる。
その女性は雑誌をゆっくり読みながらカットされていた。

その後、
「佐藤様、2番のお席へどうぞ」

と声がかかると、制服の高校生が立って奥へ入っていった。

さっきから2番,3番って何のことだろうって思っていると、正面で分かりづらかったが鏡の上に手前から8,7,と数字が並んでいた。
なるほど、椅子が番号になってるんだと気づく。

8番の奥の席にも人がいて、レモン色のクロスを巻かれてブローされてる女の子が遠目に見えた。
顔立ち的には私と変わらない中学生くらいの子だろうか?



ここで一通り見渡せて美容室観察は終了。

私はスマホに一旦目を落としたのだが、耳と周りの環境察知は早くて、
その後、奥から親子連れが同時に出てきたと思ったら、ジャージ姿の中学生が4番、そして20代のOLさんが5番へ呼ばれた。
そのタイミングで7番でカットしてた女の子も終わり退店。

ここまで15分足らず。回転率がすごい早かった。




その後、目の前の8番にいた女性のカットが終わって、左側のブースへ入っていった。シャンプーだろうか?
時々店の観察をしていた私とたまたま目が合ってしまった。
髪の長さもそんなに変わらず、伸びた分だけ〜なのかななんて勝手に思ってたり。

美帆は普段、母親の知り合いのプライベートサロンに行ってて、そこは1人専任のこじんまりした場所だったので、ちょっと観察するのが楽しくなっていた。


そして7,8番と目の前のカット椅子が空いたので、私らの前に残ってる私服の中学生と私達呼ばれるかもしれない、と思って友子にトントンとする。

友子「なにー?」

美帆「そこ空いたからそろそろ呼ばれるかもよ?」

友子「おっけー」

そういって友子は荷物をいつでも持てるようにして、再びスマホの世界へ戻っていった。


しかしその後すぐ8番の椅子には左側から30代位の私服のお姉さんがシャンプー後のタオルを頭に巻いたターバンの格好をして帰ってきた。
そのままブローに移る。

しかし呼ばれる事もなく、5分程経ったら奥から今度は50代くらいのおばさんが出てきた。

美帆はこの時間でも若い人だけじゃないんだ〜と思って見ていた。そしたら私服の中学生が6番の席に呼ばれた。


さて、いよいよ次は私達の番!と思っていたのだけど、さっきの女性がシャンプーから戻ってきて7番の椅子へ。
そのままブローを始めた。



手前の8,7番の人達のブローが終わった所で少し尿意を感じた美帆。ちょっと立ってみて椅子が空いてそうな様子がなかったから、

美帆「友子、ちょっとトイレ行ってきてもいい?」

友子「うん、わかった。すぐ戻ってきてね。呼ばれたら先行ってるから」

美帆「ありがと」

そういってカウンター横にあったトイレのドアへ行った。
とは言え少し時間稼ぎしようと思った美帆はゆっくりだったのだが、戻った時に友子はまだいた。

美帆「お待たせ」

友子「おかえり」

目の前を見ると8番のお客さんがいなくなってて、7番の20代の女性は最後の仕上げで鏡のチェックをしていた。
よく見たらOLさんじゃなくて普通の私服だった。雰囲気的には大学生。

そしてその女性もすぐ退店していって再び7,8番が空いたのに呼ばれない。
美帆はスマホのメールチェックを始めた。







程なくしてホウキとチリトリを持ったアシスタントさんに、
「2名様の岩崎さん、7,8番の椅子へどうぞ」
と声をかけられた。

そんな時友子の反応は早く、そそくさと奥の7番の椅子にさっさと座ってしまった。

私は手前の8番の席に乗っかる。


私は目の前の雑誌が気になって取り出す。さっきの20代女性が読んでたものだ。

中身は面白そうだな〜なんて見てると、


アシスタント「本日はご来店ありがとうございます。今日はお二人とも学生カットとシャンプーで宜しいですか?」
と声をかけられる。

それに返答するのは友子で、

友子「はい」

アシスタント「カットはどのくらいの長さにされるでしょうか?」

友子「私達2人でヘアドネーションするつもりで来たんですけど」

アシスタント「あ、分かりました!。それでは学生カットのヘアドネーションとシャンプーで承りますね」

友子「よろしくお願いします」


アシスタントさんは私の鏡の右上にかけられている⑧と書かれているホワイトボードに、
【スクールカット。ヘアドネ、シャンプー】
と書き込んだ。

同じく友子ちゃんの座ってる方の⑦と書かれたホワイトボードにも同じ内容を書き込んだ。


それが終わると壁の裏へと行って消えた。
僅かして2つ分のワゴンを持ってくる。
美帆の前方右横、友子ちゃんの左後の横にそれぞれ据え付けられる。


美帆はそのワゴンの中を観察していた。
黒い小柄なワゴンで、一番上には大きめのブラシと櫛が何本か入ったカゴ、霧吹き。
そして白いクロスの上にベージュのタオルが綺麗に畳まれていた。
下の段にはカラーでよく見るロッドや色々詰まっていた。

アシスタント「それでは先にタオルとクロスだけつけさせて頂きますね」


そんな観察してる間にアシスタントはワゴンの上にあったベージュのタオルを前向きに1枚巻いた。友子ちゃんにもワゴンから黒色のタオルを巻きつける。

そしてこんな事を、
アシスタント「あ、すみません。こちら袖のでないクロスなので雑誌元に戻して頂けますか?」


と美帆に向けて声をかけてきた。
アシスタントさんは白いクロスを広げてて袖がでないのを美帆に向けて見せてる。

慌てて、「あ、はい」と答えると雑誌を鏡の前の棚に戻した。


それを確認するとアシスタントさんは慣れた手つきでそのまま被せて首元のマジックテープで少しキツく留める。

そして同じように友子にも白いクロスを巻かせた。


袖が無くて腕が出せないものだった。
胸の辺りには丸の中に

(おしゃれ )
( サロン♪  )

と書かれたロゴマークが入っている。
私から見ると逆だけど、反転して鏡で見ると正しく写ってた。



アシスタント「それではスタイリストが来るまでもう少々お待ち下さい」

と言ってアシスタントはどっかへゆく。