今冬の植え替え時の忘れられないできごとの一つは、日向ササユリのこと。球根を購入した翌々年から毎年花を見せてくれていたのが、残念なことに、この冬の植え替え時に球根の根元から腐りが入ったことが分かった。

 

 日向ササユリのこれまでの履歴を表1に示す。種苗会社から通販で日向ササユリの球根1球を入手したのは2016年の冬だった。日向ササユリという名前こそ知っていたが、花の特徴など実体は全く知らなかった。入手した球根は中粒の鹿沼土を含む混合用土に植え込まれており、掘り起こすことなく、そのまま5号駄温鉢に移した。翌年は開花がなく、その冬、植え替えるときサイズを測った。球根のサイズは(球根の長さ)×(球根の最も太い部分の胴回り直径)(単位mm)で表している。初花を見たのは2018年の5月で、他のササユリより2週間ほど早い開花であった。花色は濁ったピンク色で、少しがっかりした。香りも少し弱いようだった。しかし、強い性質で、年々球根はほぼ順調に大きくなった。2019年には最外殻の鱗片1枚を鱗片挿しにした。鱗片挿しをするのはスペアを作る目的であるが、球根が大きくなると一つの軸(茎)に複数の花輪をつける可能性があり、私は複数輪を好まないので、その可能性を低くしたいという思いもある。2020年の植え替え時には鱗片に2個の小球根が生まれていて、計3球となった。開花時の数値は花輪の長さ(L)と草丈(H)(単位はcm)を表している。

 今冬の植え替え時(昨年11月)掘り起こすと、前年35.2×39.0mmまで大きくなっていた球根に腐りが入ったのを見つけた。写真1に腐りの入った球根を示す。見易くするために、水洗してから撮影している。根元から腐敗が進行し、外殻の鱗片はすぐに剥がれた。腐りの入った鱗片を外していき、腐りのひどいのは捨て、腐りの程度の低い鱗片については腐敗部分を指で手折り、鱗片挿しをすることにした。また、まだ腐敗の進行していない部分(芯球)も植え込むことにした。すなわち、写真2の右側、ラベル16ABの芯球と18個の鱗片を同じ鉢に植え込む。芯球部分は21.2×17.1mmと前年に比べ、とても小さくなった。これでは、翌春の開花は期待できない。それどころか、芯球に腐敗菌が残っていて、腐敗がさらに進行する可能性もある。芯球部と鱗片には殺菌剤として青森ヒバ消毒溶液をていねいに、かつ、十分に噴霧した。もっとていねいにやるなら、消毒溶液に24時間程度浸漬したほうがよかったかもしれない。ただ、これまでの経験では、噴霧によってもかなり効果があるように思う。噴霧消毒の後、同じ鉢に18個の鱗片はすべて鱗片挿しにし、さらに、芯球も植え込んだ。ここまで、くどい記述と読みづらい表現で、申し訳ありません。ラベル16AAに示す2個の球根は2019年に鱗片挿しを行って生まれた球根である。これらは16ABとは別の鉢に植え込んだ。これら小球根は順調に育っているが、開花まで未だ3、4年かかりそうである。

 2018年に日向ササユリの初花を見たとき花色と香りにがっかりしたと書いたが、その後、毎年花を見せてくれて、シャクナゲの季節からササユリの季節への変わり目を知らせてくれる、私にとって楽しみの花になった。当分花を見られないが、いつか復活してくれると期待している。

 最後に、写真3にササユリのありし日の雄姿(2023年の花)を示す。

 

表1.日向ササユリの履歴

写真1.腐敗した球根             撮影 20231123

写真2.植え込む前の球根と鱗片        撮影 20231123

写真3.日向ササユリのありし日の姿      撮影 20230506