E君の話。
彼は“幽霊自動車”が見えるという。
それは普段、見慣れた車の列に混じって走っているのだそうだ。
いつ、どんなときに視えるのかはわからない。
ふとした拍子に視界に入ってくる。
助手席には近々死ぬはずの人間が座っている。
それがはっきり判ったのは、彼の祖母が助手席に乗っているのを視たときだ。
入院して外出できるはずもなかった彼女は、それから一週間も立たず亡くなった。
子供のころからその車を視ていたが、助手席に座る見知らぬ彼らは、
みな寂しそうにうつむいているという。
知り合いを視たのはそれっきりだそうだ。
その車がどんな色をしていたのか、後で思い出そうとしてもまったく思い出せない。
ただ、それが普通の車ではないということだけは、すぐにわかる。
運転しているモノも視ているはずなのだが、もちろん思い出せない。
思い出さないようにしてるんですが、と彼は言った。