前回、AVR-A100の音の良さについて少し触れましたが、これは従来の2Dサラウンドフォーマットで
再生した場合に限っての話になります。
つまり、ハイトスピーカーを加えないフロアスピーカー設置型の7.1chシステム(もしくは5.1ch)という
事になりますが、例えばDTS-HDマスター音源での比較ならAVR-A100もまだまだイケます。
確かにスペックのみならず、「スピード感、解像度、音のキレ、セパレーション、SN感等々」聴感上
でもX8500Hには到底敵わないのですが、マイルドで豊かな中低域や音の余韻等、A100が勝って
いる部分は多々あります。
誤解を招くかもしれませんが、X8500Hの音をひと言で表現するなら「デジタル的で硬質な音」、これ
に対しA100は「アナログ的で柔らい音」という感じになり、その関係は対照的です。
純粋に2chステレオで音楽を聴くのであれば、むしろA100の方が音楽性は豊かなような気がします。
しかし、シアターサウンドになるとまた話は違ってきます。
ドルビーアトモス登場以降の3Dサラウンド対応AVアンプには従来の5.1ch信号を擬似3D化し、7.1.4ch
で再生するようなアップミックス機能が備わっています。
実際に使ってみると、これがもの凄く強力で、高さ方向の再現力に加えて、従来の2Dサラウンドでは
決して味わえないシームレスで立体的なサラウンド空間を堪能する事が出来るようになります。
ホームシアターではサラウンド空間の表現力が肝になりますので、この機能を持たないA100ではどう
足掻いても勝負にはなりません。
アンプそのものの音の良さも然る事ながら、機能面において最新のサラウンドフォーマットに対応して
いる事もAVアンプではとても重要になってきます。
ピュアオーディオアンプと違い、AVアンプが白物家電と言われる所以はこの辺が理由なんでしょう。
既存の7.1ch(5.1ch)システムを拡張し、更にハイトスピーカーを加え高さ方向を再現するという考え方
においては、以前ドルビーPLⅡz(ハイト)というサラウンドフォーマットがありましたが、AVR-A100にも
この機能は実装されており、内蔵アンプを使って最大9.1chまでサラウンドを拡張する事が可能です。
当時、私がA100を選択した一要素でもありましたが、正直、この機能は使い物にはなりませんでした。
基本的にドルビーPLⅡz(ハイト)は高さ方向の空間を疑似的に演出するだけの2Dサラウンドですので、
音場がスクリーン(テレビ)上方に広がるものの、音の移動は横方向(XY軸上)でしかありません。
それにAVR-A100のドルビーPLⅡzモードではサラウンドバックスピーカーをリアハイトスピーカーと
してアサインしてしまう為(フロア5ch+ハイト4chという割り振り)、7.1ch再生と比べてしまうとセンター
付近の音が妙に薄くなり、音場の包まれ感も減退してしまいます。
特にDTS-HDマスター音源においてはディスクリート再生した方が断然気持ちいいという事もあって、
結局、A100ではフロントハイトを加えない状態で鳴らす事の方が圧倒的に多かった気がします。
ドルビーPLⅡz(ハイト)の後に登場するのが、ドルビーアトモス以降の3Dサラウンドフォーマットになる
訳ですが、最新(現時点では)のAuro-3Dにおいても考え方は一緒で、フロアスピーカーとハイトスピー
カーという括りで空間をレイヤ分けし、メインスピーカーとハイト(トップ)スピーカー間で縦方向(Z軸上)
にも音を移動させる事が出来るようになりました。
従来の横方向に対し、縦方向の移動も加えた三次元(3D)サラウンド空間の実現です。
私がシアターサウンドにずっと求めていたものが正にこれでした。
但し、3Dサラウンドフォーマットの効果を最大限生かす為には頭上空間へのスピーカー配置が必須
ですので、「一体スピーカーはどこに設置したらいいの?」というところで難易度は相当高くなります。
私もそこがネックになっていて、3Dサラウンドシステムの導入には二の足を踏んでいたのですが、
Auro-3Dが切欠となり、遂にモンスターアンプX8500Hに手を出してしまった訳です。