堀内と美帆(みほ)。

2人は夫婦。

2人はコンビ。

2人は夫婦コンビ。

 

堀内。通称、ボーリー。

極度のあがり症。

通称の由来は、名字からもあるが、

緊張すると、頭をボリボリかくことからも

そう呼ばれていた。

  

美帆。

彼女の父がヨット好きで猗?銑瓩般震勝

まさか芸能界という荒波に出るとは

思いもしなかっただろう。

芸人仲間からは、爐曚辰舛磴鶚瓩

呼ばれていたが、

ぼんやりしてるコトが多く、

猗銑瓩鉢猖洵瓩ら、

爐椶鵑舛磴鶚瓩噺討个譴襪茲Δ砲覆辰拭

 

2人は夫婦漫才コンビ。

芸暦は間もなく20年。

しかし、テレビの出演は数えるほど。

同期の面々には次々とスポットライトが。

 

しかし、「辞めたい」と思うコトは無かった。

仕事が無くても劇場に行き、

袖で先輩や同期、時には後輩のネタを

眺めていた。

聞こえてくる笑い声が、耳に心地良かった。

時には一緒になって笑ったりもした。

『笑ってんと、笑かせ!』

先輩に叱咤されるコトも少なくなかった。

 

ボーリーと、ぼんちゃんは幸せだった。

「売れたら子供を作ろうな」

遠い昔の約束。

ぼんちゃんが子供好きなのは知っている。

ぼんちゃんの年齢のコトもある。

「そろそろ子供作ろっか?」

その言葉を言い終える前に

ボーリーの右頬には紅葉が彩られた。

 

そして、結成20年を迎えた或る日。

2人にテレビでの漫才の仕事が入った。

と言っても、同期のコンビが体調を崩し、

出られなくなった代演。

『代わりは是非、ボーリーとぼんちゃんに』

同期の計らいであった。

2人は喜んだ。

ボーリーは頭をかいた。

その日から、連日のネタ合わせ。

寝る間も惜しんで稽古に励んだ。

 

そして、本番当日。

2人は劇場に現れなかった…。

 

本番の日。

劇場に向かう2人は

ホームで電車を待っていた。

勿論、ネタ合わせをしながら。

夢中で合わせる2人。

気付けば、2人の周りには人の群れが。

群れは笑っていた。

2人も笑い合った。

《あ!》

その時、ホームに響く声。

人の群れの原因を見ようとした子供が

ホームから落ちたらしい。

騒然とする面々を横目に

ホームから線路に飛び降りるぼんちゃん。

素早く、子供を助け出した。

歓喜の群れ。

安堵のぼんちゃん。

そこへ、電車が近付いてくる音。

!?

慌てるぼんちゃんは上がれない。

近付いてくる音。

もがくぼんちゃん。

飛び降りるボーリー。

時刻表通りにやって来た電車。

……。

……。

  

本番当日。

ひな壇の一番上には、2つの棺。

ぼんちゃんとボーリーの。

 

【明かりをつけましょ、ぼん、ボーリーに】

 

スタッフの声と同時に

2人は初めてスポットライトを浴びた。