長いトンネルを抜けると雪国であった。

  

お互い多忙の為、

中々逢えずにいたジャックとアリス。

しかし、久方ぶりのデート。

快晴。

デート日和。

スキー日和。

笑顔日和。

しかし、2人は気付いていなかった。

今日が、13日の金曜日だということを…。

  

スキーに興じる2人。

ジャックを追いかけるアリス。

逃げるジャック。

シュプールは絡み合う。

  

〈好き…〉

ジャックは言う。

 

《え?何て??》

風に言葉は流されて届かない。

  

〈す、す、スキー楽しいな…〉

《うん!》

  

数時間後、気付けばスキー場からは

遠く離れた場所に居た。

遭難…。

辺りには人の気配はない。

この世の終わりを告げるかのように

薄暗くなる空。

  

《どうしよう…?》

アリスには先程までの笑顔はない。

  

〈ん?明かりだ!〉

  

ジャックの指差す方に小さな光が…。

希望の光なのか。

 

それを目指し、一目散。

そこには古びた山小屋がぽつねんと

建っていた…。

ノックをし、呼びかけるが

何も返ってこない。

  

怖ず怖ずと、中に入る2人。

暖炉が煌々としている。

《暖かい…》  

〈誰か住んでるのかな…?〉  

  

何度か呼びかけるが

やはり何も返ってはこない。

  

《取り敢えず朝まで居よ》

そう言いながら小さなベッドに横になるアリス。

〈そうだな…〉

と、アリスの横にジャックが。

  

余程疲れていたのか

2人は直ぐに、夢の中に入っていった。

  

ZZZ…

ZZZ…

  

ドサッ!

  

物音で目を覚ましたアリス。

時計の針は“0時44分”をさしていた。

ふと見ると、ジャックが居ない…。

  

《ジャック!ジャッーク!!》 

  

〈う、うう…〉

 

気味の悪い声。

アリスは声の方に目をやった。

《!?

 ジャック!!》

そこには顔を血で覆われたジャックの姿が。

 

〈に、逃げろ…〉

 

声にならない声でジャックが言う。

 

《何があったの!?》

〈は、早く逃げろ…〉  

 

背後に気配を感じたアリスは振り返り

悲鳴を上げた。

 

《きゃぁぁぁぁ!!》

 

そこにはホッケーマスクを被った大男が

立っていた。

大男は持っていたナタを振り下ろす。

間一髪、かわすアリス。

ナタは布団を切り裂いた。

布団の綿が宙を舞う。

山小屋の中にも雪が降っているかの様に…。

  

再び襲い掛かる大男。

アリス、近くにあった時計を投げつける。

宙を泳いだ時計は、大男の顔面に直撃。

ホッケーマスクが粉々に…。

倒れる大男。

  

その粉々になったマスクの破片が

アリスの口に入る。

  

《ん?甘い…

 ホワイトチョコレート…?》

 

更に宙を舞っていた布団の綿も

アリスの口に…。

《マ、マシュマロ…!?》

  

〈ハッピーホワイトデー♪〉

  

笑顔で起き上がるジャック。

顔に付けたチョコを舐めながら。

  

《もう!騙したのね!》

〈ヘヘン!先月のお返しだよ!〉

《それにしてもやり過ぎでしょ!》

〈親戚の叔父さんにも手伝ってもらっちゃった〉

  

笑顔で抱き合う2人。

  

本当の血を流して倒れている

叔父さんコトは忘れながら…。

  

  

ホワイトデー、嬉しいお返しがあって

成就するとイイですね。

  

ホワイトデーをファイトデーに…。