今日も、彼は【銀行ノススメ】の稽古へ向かう。

しかし、稽古場とは違う、有らぬ方向へ自転車を走らせる。

着いた場所は、馴染みのマッサージ。

どうやら連日の稽古と様々な執筆業の為に、凝った肩や腰をほぐしてもらうらしい。

 

ベッドにうつ伏せになる彼。

気持ち良さげにマッサージを受ける彼。悦楽。

すると、彼の隣のベッドにもお客さんが。

 

《昨日、テレビ観ましたよ!》と、そのお客さんを相手するマッサージ師。

〈あ、どうも〉と、そのお客さん。

 

「ん?誰だ…?」とうつ伏せ状態の彼は悩んでいるだろう。

 

《DVDも観ましたよ!》と、マッサージ師。

〈あ、有り難う!〉と、そのお客さん。

 

「一体何者なんだ?

お客の声は妙にしゃがれている…」

 

《あんな感じで2時間唄いっぱなしなんですか?》

〈そうやな〉

 

「歌い手か?」

 

と、その時彼を相手するマッサージ師が、仰向けにお願いします、と。

 

「よし!チャンス!!」

 

仰向けになる瞬間に、隣のベッドに眼をやる彼。

 

!?

 

が、その瞬間、隣のお客さんの顔にタオルが被せられる。

 

「ジーザス!!」

 

折角のチャンスを…。

その後も、隣では会話が続く。

 

《今度ライブ観に行きます》、《チケット取れますかね?》、《今度何時テレビに出ますか?》

等など…。

 

漸く、マッサージが終わり、起き上がる彼。

直ぐ様、隣のベッドに眼をやる。

 

そのお客さんは、うつ伏せになっていた…。

 

一体、誰だったんだ…??

モヤモヤした状態で稽古に向かう彼。

 

何だか余計に肩が凝った様子でした…。