過日、彼はと或る小学校に赴いた。

何故小学校に…?

小学校の文化祭にでも呼ばれたのか…?

否、そんな話は聞いていない。

ひょっとして隠し子が居て、校庭の外からドッジボールをしている我が子を眺める為か…?

 否、時は夕刻。ドッジボールどころか生徒の姿が見えない。

 

すると待ち合わせていたのか、彼は知人と合流し、校内へ入った。

看板を見ると、【精華小劇場】とある。

どうやら以前は小学校だったが、劇場に改装されたらしい。

この日は【デス電所 夕景殺伐メロウ】が上演されていた。

 

中に入ると体育館だったとは思えない立派な劇場が。

彼はデス電所が初めてなのか、そわそわしている。

徐に彼の後方に眼をやると、浅越氏の姿が。

こういう所で会うのはどんな気分なんだろう…?

 

時間になり、芝居が始まった。

2時間程で幕が閉じた。

 

彼は御満悦な様子。楽しんだようだ。

 

内容はと言うと、複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を

徹底的に究明する…

あ、失礼。

 

まぁ、兎に角素敵な作品なので興味の有る方は是非。

19日まで上演しているそうです。

東京公演も12月にあるみたいです。

 

上演後、彼の後方に眼をやると其処にはもう浅越氏の姿は無かった…。

あれは、夢か現か…?

 

ただ其処には、涙で濡れた眼鏡だけが残されていた…。