今日の彼はうめだ花月出番まで仕事が無いそうだ。

彼は美容院へ行くコトにしたようだ。

しかし、越してからの初めての調髪。何処の店に行こうか悩んでいる様子。

暫く自転車に跨り、街中をウロウロ。

飛び込みで、と或る美容院へ入る彼。

中々広くて雰囲気のイイ店だ。

椅子に腰掛け順番を待つ彼に声が掛かる。

 

『今日は休みですか?』

 

定番の質問が彼にぶつけられる。

果たして彼のコトを知っての質問か?

 

「いえ、これからです」と、彼。

 

『今から?何されてるんですか?』

 

どうやら彼のコトを知らないようだ。

 

「え~っと…」

何と答えようか悩む彼。

 

『バンドとかやってるんですか?』と、その美容師。

 

「え、何でですか?」

 

『そんな感じがしたんで…』

 

初めて言われた。

「まあ、そんな感じです」と、説明が面倒臭いのか彼が言う。

 

『テレビとか出てます?』

 

「まあ、偶に」

 

『どんな歌唄ってるんですか?』

 

質問の手を休めない美容師の男。

段々不味くなってきた彼…。

 

「え~っと…【return good for evil】って曲知ってます?」

(※編集者 竹一平の苦悩 参照)

 

『あ~何か聴いたコトあります!』

 

何だと!?

「あと【危機イッパツ!】とかも」

(※見晴らしのええマンション 参照)

 

『あ~はいはい』

 

嘘が蔓延る世の中だ…。

 

『僕も昔バンドやってたんですよ!ブルーハーツの影響で』

 

「あ、そうですか」

 

『それからブルーハーツに始まり、ボウイ、それから○○に○○…』

 

そこから知らない洋物のバンド名がずらずらと。

 

「…」

 

彼は、狸寝入りを決め込む。

 

漸くカットも終わり、会計へ。

会計を済ませると、会計係の女の人が『久馬さんですよね?』と。

 

「あ、はい…」

 

そそくさと店を出る彼。

もう二度と行くコトはない店を後にした。

 

そんな【return good for evil】も収録された【編集者 竹一平の苦悩】は明日発売です。

是非お買い求め下さい、とのコトです。