妹が入院していた病院は、わりと古くて設備や病室も新しいとは言えなかったけれど、医師も看護師さん達もとてもいい人ばかりだった。

中でも看護師長さんは明るくて気の利く方で、わかりやすく現実的な話もしてくれた。

若い人だと心臓は元気なので、人工呼吸器を付けていればずっと心臓は止まらず動いてくれる場合が多い。

いわゆる植物人間といわれる状態なのだけど、それは家族にとっては大きな負担になる。

金銭的な面ではもちろん、精神的にも、体力的にもとてもつらいものになるのは間違いないと。


本当にそうだと思った。

入院費は一週間ごとの清算で、母から聞かされた額に心底驚いた記憶がある。

これが続けば破産するしかないのか?

というような額だった。

保険には入っていたけれど、1日5千円の入院費なんかではとても足りない。

妹の場合は、検査入院から急に立て続けに重篤な状態になってしまったのもあるけれど、悲しいかな現実的にお金の問題は一般庶民には重くのしかかってくる心配のひとつである。



それにしても、入院して一週間でこんな事になるなんて。

ここまで悪い、危険な状態だというのは医師にはわからなかったのだろうか。

少しでも知らせていてくれたら心の準備が出来たのに、片時も離れずそばにいたのに、そういった思いはあったけど口には出さなかった。



医師からは、おそらく膵臓が発端だろうと。

確定出来るまでの検査が出来ていないのでおそらくとしか言いようがないが、もし膵臓なら26歳の若さでほとんど例がないとの話だった。

そして、残念ながら根治はない。

母はすぐにがん研有明病院にセカンドオピニオンの予約を取った。

各地から診察、治療だけでなくセカンドオピニオンを希望する方も多くいるのだろう。

30分の相談の予約を取るのにもすぐにとは行かなかった。



呼吸が落ち着けば酸素マスクになる。

その日を母と交代で寝泊まりしながら待った。