昼になり、家に帰る
車がありますように車がありますように車が
ない
帰ってない
しばらく横になり目をつむり
会社に戻る
こんな時に仕事に出るのは
仕事が大事だからじゃない
次男がスマホをとりに戻って来たときに、ワタシの車があったらそのまま通りすぎてしまうと思うからだ
そして自分で新しい携帯を買うだろう
もう二十歳だし、免許証も通帳もあるのだ
そしてどこかでバイトでもしながら
一人で生きていけるのだ
そしてあっという間に3時半になり
4時からの会議
支社からみんな来る、コロナ騒動後久々の会議
これに出なければきっともう戻れない
全身が苦しくなって
家に戻った
車があった
慌てて家に入ると、トントンと階段をおりてきてこっちをみている
思わず抱きしめた
『帰ってきた』
「うん」
そこからは、昨日の顧客の状況を説明し、今日これからのスケジュールを確認する
考える間を与えない、悩む間を与えない
母のいない時間に、スマホを取りに来ただけかもしれない
そこまで重大事にしたくない
まだここがお前の居場所だと、ストンと安心させたい
若が、書類がどうのとヘタな言い訳しながら、会議前にわざわざ支社長のところへいったのは、きっと次男の相談だろう
電話には出ないので
「帰ってきました」とラインで報告
すぐに『グーパンチしといてください』と返事
それを見せると白い顔が少し微笑む
スーツに着替えさせて4時からの会議
若の顔をみて
『ご心配おかけして申し訳ありませんでした』
『ああ、あとでたっっっぷり話さなきゃな!』
支社長が来て
『あの、ご心配を…』
『ああ、今日は直行だったんだな!顔を見なかったのはそのせいでしょ?』
担当上司が入ってきて、次男の顔をみてただうなづく
次男は彼を見ただけで涙ぐんでいる
ワタシがなんとかしようと思ってもどうにもならん事が年とともに増えていくのだ
そんなときは、社会が社会人にしてくれる
いい社会に身をおくためには、努力しないといけない
自分も周りも、変えていかねばならんのだ
いくつになっても
努力しよう
帰ってきた息子が着替えながら
『昨夜さぁ、風呂に行ったんだよ。湯船に寝そべって、ぼーっと空を眺めてたらさぁ、隣の浴槽にいたおっさん2人が、いろいろ話をしてて』
真剣に農協の話をしていたそうで
それをじっと聞きながら
『みんな、働いている』
と思ったそうです
なんじゃそりゃ