シベリアに抑留されていた方たちが、夜になると寿司職人だった男の周りに集まり、寿司を注文する話を思い出す
トロ、とか
へい、トロって握る真似して出す
注文した男は指を並べてしょう油つける真似してペロッと食べる
毎日、何時間も繰り返す
一通り食べ終わると、映画の話
戦争が始まる前のフランス映画の筋を話して、ジャン・ギャバンの死ぬ真似なんかする
「俺、生きていたいってのは、もう一度寿司食って、もう一度フランス映画観たいっことだったねェー」




佐野洋子の本でしたね




生きるか死ぬかの極限




私はその話を思い出しながら

「三度三度温かいお粥が運ばれてくるシアワセ」について、しみじみとありがたく思うのではあるが、その精神とはウラハラに半分から先どうにもこうにもスプーンを口に運ぶことができんのだ




寿司

寿司

寿司が

しょう油をつけてペロッと




口の開かない私には最も遠いものから食べたくなるということです