日本のプルトニウムについて、よく「数千発の核弾頭を制作可能」とか記事にされる事がありますが、結論から言えば不可能です。
日本の持つ、軽水炉により作られたプルトニウムはPu239に20~30%程度のPu240が含まれます。
これを原子炉級プルトニウムといいます。
核兵器に利用できるPu239の濃度が93%以上必要です。(兵器級プルトニウムと呼ばれます)
米国の核兵器は98%以上のものが使われるようです。
なぜPu240が多く含まれると兵器利用が難しいかというと、Pu240は自己核分裂を起こしやすく、
20%以上含まれると、Pu239が十分反応する前にPu240が過早爆発してしまうからです。
北朝鮮の核実験が失敗だった原因として、Puの濃度不足という説もあるようです。
ただし、過早爆発と言ってもその爆発力は約1kトン級(TNT1000kg爆弾1000個分)はあり、侮れない物があります。
Puの239と240の分離はかなり技術的に困難なようで、原子炉級を兵器級に濃縮することは現状不可能です。
というのも同位体元素は化学的性質がほぼ同じで質量が中性子分違うに過ぎないので、分離することはかなり大変なのです。
ウランのU235とU258では、フッ素と化合させて気体にし遠心分離器で物理的に分離しますが、こちらは原子量が3(中性子3個分)違うことを利用しています。
(もちろん、この用途の遠心分離器は輸出制限の対象になっています)
ちなみに兵器級のウラン(U235)は70%以上に濃縮されたものです。
プルトニウムでは原子量の違いが1で格段に難しくなります。
よって現在の核兵器製造では純度の高いPu239を得やすい黒鉛炉により、すべて制作されております。
上記理由より、日本の持つプルトニウムを核弾頭として軍事転用することは不可能です。
(ダーティボムにするなら可能ですが、あまり意味は無いでしょう)