こんにちは、脱・完璧リーダーシップの宇城孝佑(うしろ こうすけ)です。

本日のテーマは「後出しする人とジャンケンはしたくない」です。

 

部下を育てるには信じて任せること。

任せたからには口出しをせずに、じっと見守ること。

 

部下育成の本にはよくこのように書いてあります。

勉強熱心な方ほどご存知かと思いますし、

私もこの考え方には基本的には賛成です。

 

任された仕事に上司からいちいち口出しされていたら、

「だったら、自分でやれよ。」と思ってしまいますもんね!

 

ただ、この「口出ししない」をとらえ間違えると、

部下との関係性を壊す大きな引き金になることも多いのです。

 

「あいつ、このままでは失敗することはわかっているんです。

 本人は一生懸命なんですけどね。僕はそこは評価しています。

 だから、今は我慢の時だと思っています。

 失敗した痛みを知らないと、人は成長できませんからね。」

 

ある企業の経営者の方からこのような話をされたことがあります。

そして案の定、その方の進めていたプロジェクトは失敗しました。

そして会議の場です。

 

「俺はお前のやり方では上手くいかないことは最初からわかってた。

 でも今回はお前を成長させるために、あえて黙ってみてたよ。

 いい経験になっただろ。この反省を次にどう活かすだぞ!」

 

社長はやや得意げに部下の方に伝えていました。

部下の方は、なんだか浮かない顔をされていたので嫌な予感がしました。

 

そして翌日、その部下の方は辞表を提出されたのです。

 

「おい、辞めることが責任を取ることじゃないぞ。

 今回の失敗を活かして、次に成功することが責任をとるってことだ!」

 

社長は慌ててそうお話されました。

 

「いえ。申し訳ないですが、責任をとって辞めるわけではないんです。

 社長は今回のプロジェクトで僕が責任者として、

 どれだけ苦しんでいたか知っていますか?

 相談しても自分で考えろ、成長のためだとしか言ってもらえず。

 挙句の果てに失敗するのは最初からわかってた?

 そんなこと言われてまでやってられません。」

 

社長も良かれと思って、育てるためだと思ってやっていたことが

どうやら今回は逆効果になってしまったようです。

 

その方は、私も個別に面談させていただき、

社長の想いを代弁し、なんとか退職は思いとどまっていただけました。

しかし、聞いてみると他の社員の方も同じような憤りを感じているようでした。

 

「社長は自分で考えろというだけで、何のアドバイスもくれないんです。」

 

「失敗することは最初からわかっていた、は社長の決まり文句ですからね。

 あの時のドヤ顔が腹立つんですよ。」

 

「社長はよかれと思っているんでしょうけど、

 みんなあの態度で一気にやる気をなくすんですよね。」

 

私としても社長にどう伝えたものかと悩みました。

当の社長ご自身も、部下の方からの突然の退職話にショックを受けたようでした。

 

「宇城さん、結局ウチのレベルじゃ任せるなんてまだ早いんでしょうか。

 これなら僕が全部の指示を出して動かしていたころの方がまだマシです。」

 

つい先日までイキイキと育成を語っておられた社長とは打って変わり、

すごく落胆した表情でお話くださったことを今でも覚えています。

 

「私は社長が育成のためにしていたことは間違っていないと思いますよ。

 ただ、それが正しく伝わらず、誤解を招いてしまっていることが問題だと思います。」

 

「社員の方々は、社長は自分たちの苦労をわかってくれていない。

 育成のためだと言って、相談にも乗ってくれないと思ってしまっています。

 これは社長も本望ではありませんよね?」

 

「いちいち口出しする必要はないと思います。

 ただ、進捗を確認したり、何か困っていることはないかを聞いて差し上げたり、

 協力できることがあればして差し上げれば良いのではないでしょうか。」

 

次の日から、それぞれのプロジェクトの責任者と社長の個別面談が始まりました。

内容は、

 

・プロジェクトの進捗

・困っていること

・社長に協力してほしいこと

 

時間にして30分ほどの面談でしたが効果はてきめんでした。

 

「社長が本当に僕らを応援してくれていることがわかりました。」

 

「以前は後出しジャンケンでダメ出しされる感じだったんですけど、

 今は一緒に考えてくれてるって感じですよね。」

 

「社長が自分で考えろって言っていた意味が、やっとわかりました。」

 

こうして、何も口出ししないころに比べて、

むしろ相談に乗ってからの方が社員の方々が自主的に動き出したのです。

 

この会社に欠けていたのは、

育成のノウハウうんぬんの前に社長と社員の信頼関係だったのです。

 

信頼関係があるのとないのでは、同じマネジメントスタイルでも結果は大きく変わります。

 

「社長は私たちのために任せてくれているんだ!」と思うのか、

「社長は仕事を任せたっきりで何もしてくれない。」と思うのか、

 

思考によって社員の行動は大きく変わります。

行動が変われば、必然的に結果も変わってきます。

 

あなたと部下との信頼関係はいかがでしょうか?