今回鑑賞したのはこの作品。

1952年、小津安二郎監督が松竹で撮った「お茶漬の味」だ。

 

丸の内の会社で機械部の部長を務める佐竹茂吉(佐分利信)は、

質素な生活を好んでいる。

対照的に、妻の妙子(木暮三千代)は裕福な家庭の出身で、

友人や姪と連れ立って夫に内緒で旅行に行ったりもするが、

茂吉は詮索をすることもない。

ある日、姪の節子(津島恵子)がお見合いの席から逃げ出して

茂吉のところに転がり込んで来る。

後輩の岡田(鶴田浩二)と出かける直前だった茂吉は、

そのまま節子を連れて競輪場やパチンコ屋に行ってしまうが、

すぐ報告しなかったことを妙子になじられ、別居状態になってしまう。

その間に茂吉のウルグアイ赴任が決まるのだが…

 

この作品、テレビで放送される度に録って何度も見てしまう。

昭和20年台のかなりのんびりしたテンポながら、

小津監督独特のローアングル対面カットバックが随所に見られ、

単純に見えながら緻密な構成に驚かされる。

 

キャストで驚かされるのは、佐分利信さんと鶴田浩二さんかな。

後年、ヤクザ映画で首領役を演じるなど悪役のイメージが強かった佐分利信さん、

ここでは地味で質素で温厚なサラリーマン役が気持ち悪いくらい馴染んでいる。

そして鶴田浩二さん、当時30歳になっていないだろう。

後年の渋みはないものの、今で言うと志尊淳さんのような爽やかさがあって、

思わぬ一面を見せられた感じだ。

 

クライマックスが「飛行機の故障で日本に戻ってきた茂吉と妙子が

夜遅くに二人でお茶漬を食べながら語り合う」という、

文字にすると「地味!」なやり取りなんだけど、

ここに「夫婦ってお茶漬のようなもの」というセリフが入ったりして、

じんわり来るんだよなぁ。

 

これまで、10年に1回くらいの周期でこの作品を見ているけど、

60代になって鑑賞した時、この作品は僕に何を語ってくれるか?

楽しみだなぁ。