先日、英会話教室の卒業生とお母様から留学の相談を受けました。兄妹で10数年通ってきた生徒で、英語が好きで、引っ越しても自転車で20分以上かかって通ってきて、毎年殆ど皆勤賞を取っていた生徒です。或る程度の英会話は出来るし、学校の英語の成績もいいし、TOEICなどにもトライしています。
 彼女ももう高校3年生。去年、学校からの短期のホームステイをして、高校卒業したら留学したいという気持ちが強くなったようです。提携しているカレッジもあるとのことですが、お母様は心配で気持ちは反対だけど、反対と言えないというのが伝わってきました。
 私もとても難しい相談だなぁと言葉に詰まりました。
 心情的には彼女の気持ちは良くわかるのですが、私が講師養成のクラスで教えた生徒の中にはオーストラリアに留学している間に、現地の恋人が出来、妊娠したのに彼の親が許さず、子どもを連れて帰国、英語講師になりたいと講座を受けている女性がいました。私が英語のブラッシュアップの為にNYにいった時には、男女で部屋をシェアしてそのまま学校も辞めてしまって目的を見失った学生を見ました。明確な目標と、緻密な計画なしに留学した結果です。
 そんな人ばかりではないことも良く知っています。ただ現在は日本でも語学は学べます。夫の知人の猪口孝さんが学長をしている新潟県立大学は殆どの授業を英語でやっていると聞いています。
 他にも同様な大学が増えてきました。語学だけを習得するために留学するのは一時代前の事ではないかと私は考えます。
 例えば特別な美術を学ぶために留学する、音楽を学ぶために留学するなど…日本で得られない何かを学ぶために留学して、その副産物として語学を完全に習得する(これは英語の基礎が出来ている事が前提ですが)…現在はそれが理想ではないかと思っています。
 友人の息子さんがドラマーになりたくて、高校卒業後、アメリカに留学しました。夫の知人に後見人を頼みました。本当に苦労したようですが、ドラムもプロになり、語学も習得して現地で音楽大学で勉強を続けながら、ライブやコンサートでも活躍できるようになりました。長い年月がかかり、親も子も大変だったようです。
 話は冒頭に戻ります。件の卒業生の彼女の話を聞きながら、まだハッキリした目的が無いことが伝わってきたので、私の考えを話し、何の為に留学したいのか、大学に行きたいのか、語学校でいいのか、もし留学するなら受け入れがしっかりしているかどうかの事前調査をきちんとする、費用のことなどをご両親と相談する…など私の持っている知識を全て話しました。
 まだ彼女の結論は出ていませんが、若い人の夢を壊したくないし、もし留学するならワンランク上を見据えた有意義なものにして欲しいのですが、彼女の気持ちを考えると、とても複雑な心境です。★