京言葉とは?
~~京ことばの成り立ち~~
京ことばは平安の昔から明治維新まで日本の標準語といっても過言ではありませんでした。
京ことばの美しさや優雅さは高い評価を受けていますが、それにはちゃんとした理由があるのです。京ことばは、御所ことばと町方のことばが混ざり合い、千二百年もの長い時間をかけて少しずつ変化しながら、今に伝わったものです。私たちが使っている、あるいは知っている京ことばは、江戸後期もしくは幕末から明治にかけてのものがほとんどです。言葉は生きものですから、変化するのは当然ですが、ここ4、50年の急激な変化に嘆くのは私だけではないでしょう。
この状況は京都だけではありません。日本中からお国ことばが消えていっています。お国ことばにはそこで培われた歴史や文化があり、匂いや温度があります。先祖の口から口へ受け継いできたお国ことばも、次世代へつないでいってほしいものです。
京ことばの柔らかい言葉使いもいつまでも残していきたいですね。
京都弁の特徴として、「猫が食べてはる」など人以外に対しても尊敬語の「はる」を使う人が全体で約30%あった。京都人は上品に話そうとするあまり、「はる」の語を広く用いて丁寧語化していることも浮き彫りになった。
大きな特徴は3つ。1つめの特徴は、その発音やアクセントにあります。語尾を長く伸ばして話したり、う音便※2が多用されます。一例として、京ことばで手は「てぇ」、目は「めぇ」、長く
なるは「なごうなる」と発音します。
2つめの特徴は、直接的・断定的な表現を嫌い、湾曲した遠回しな表現が多いことです。これは会話に角を立てたくない、相手に嫌な思いをさせたくないという気づかいや互いの真意を察し合うといった京都人独特の会話術あるいは社交術であるといわれています。例えば、何かを辞退する(断る)時、「すんまへん、ちょっと考えときまっさ。」などと曖昧に表現し、「お断りします。」と明言することを避ける傾向にあります。しかし、「京ことば」に精通していないと、皮肉に聞こえてしまったり、真意が伝わらず理解しにくいというデメリットにもなります。
3つめの特徴として、独特の敬語表現があります。
動詞に「~はる」、「お~やす」をつけて、「来はる(=来られる)」、「言わはる(=おっしゃる)」、「おしやす(=なさる)」、「お食べやす(=食べてください)」などと表現します。
また、「~はる」の変わった使われ方として、対象が人間だけでなく、動物や物の場合もあるということです。例えば、「犬が喧嘩したはるえ(=犬が喧嘩しているよ)」といった具合です。
さらに、名詞に「お~」や「お~さん(はん)」を付加し、「お茄子」や「お豆腐」、「お揚げさん(=油揚げ)」という表現も頻繁に使われます。
時折、「京都の言葉は上品で優雅に聞こえる。」という意見が聞かれますが、ゆったりとした柔らかい印象を与えるのは、こういった特徴から生み出されるものなのでしょう。
その昔、京ことばは、長い間、日本の標準語であった。平安時代以降、江戸前期まで、京ことばで書かれた文献は豊富に残っている。
京ことばには、人を優しくしてくれる独特のニュアンスがある。生粋の京都人は実にまろやかに、話す。京ことばは、全国的に見て優雅であり、美しいと言われている。その理由の一つに、京ことばのテンポの遅さが挙げられる。一拍の名詞、「木」を「キィ」、「歯」を「ハァ」というように発音することは、話のテンポに影響するものである。京ことばは、このように味気なく終わってしまう一音からなる単語を嫌うので、必ず中途半端な伸ばし方をする。
長い歴史と豊かな文化に育まれた京都。多くの人々が入り交じった都市としての付き合いを余儀なくされた京都の人々にとっては、そのことばは、付き合いの仕方、作法としてのおもんばかりまでを含んで、言い回しや位取りに独特の表現を生み育ててきたところがある。柔らかなイントネーションには相手の気持ちを汲んだ優しさがある。もちろん、耳当たりのいいことばに厳しい批評が隠されていたりもする
概要 [編集]1000年以上にわたって日本の都があった地域であり、江戸時代中期まで京言葉は日本の中央語(事実上の標準語)とされ、現代共通語の母体である東京方言を含め、日本各地の方言に強い影響を与えた。明治から昭和中期までの標準語普及政策の影響も少ない。
京都は伝統を重んじる保守的な街とされるが、古くからの大都市で京言葉は変化し続けており、平安時代以来の古語はあまり保存されていない。明治維新前後にも大きな変動があったとされ、代表的な京言葉「どす」「やす」「はる」も幕末以降に成立・普及した言葉と考えられている[1]。現在では共通語化や関西共通語化(大阪弁化)も進み、伝統的な京言葉を用いるのは高齢層や花街の芸妓社会などに限られている。1993-94年の方言調査によると、「どす」に関して80代では「使用する」と回答した割合が49.2%なのに対し、10代では「聞いたこともない」が54.0%となっている[2]。
分類 [編集]京言葉は、大きく分けて御所で話された公家言葉(御所言葉)と、街中で話される町ことばに分類される。前者の公家言葉は、宮中や宮家、公家のあいだで室町時代初期から女官によって話されたもので、現在では一部の社寺に残されている。後者は、話者の職業や地域によって更に細かく分類することが出来る。
中京ことば(なかぎょうことば)
中京区を中心として、室町や新町の問屋街・商家などで話されることば。町ことばの代表とされる。
職人ことば
西陣の織物産業(西陣織)に従事する織屋の人々のことば。
花街ことば
祇園や宮川町などの花街で、舞妓や芸妓によって話されることば。簡易的な手話の様を呈する「身振り語」や、嶋原で用いられた「廓言葉(なます言葉)」がある。
伝統工芸語
京焼、京友禅などの現場で話される職業語。
農家ことば
大原や八瀬など京都周辺の農村部で話されることば。
発音 [編集]京言葉が優雅であるとされる要因の一つとして、京言葉の持つ発音やアクセントがあげられる。長母音やウ音便を多用することから、全般的にテンポが遅く、ゆったりとした柔らかい印象を与えるのである。
母音 [編集]長母音の「う」や「お」を短く発音し、「学校」(がっこう)を「ガッコ」、「山椒」(さんしょう)を「サンショ」とする。一拍名詞を長く伸ばすことも盛んに行われ、「蚊」を「カア」、「野」を「ノオ」とする。
訛として、 i の母音を e に転化させ「虱」(しらみ)を「シラメ」とするものがある。その他にも、 e を i に、 u を o に、 o を u と転化させる場合がある。連母音を訛らせ、「見える」を「メール」とするケースもある。
子音 [編集]子音は「シ」[ʃi] を「ヒ」[çi]に転化して「失礼」(しつれい)を「ヒツレイ」としたり、[s] を [ʃi] に、 [m] を [b] に転化させる例などがある。
音便 [編集]語呂を滑らかにするための関西特有の音便が多用される。
ウ音便
明るくなる→明るうなる、美しく咲く→美しゅう咲く、眠たくて仕方ない→眠とうて仕方ない、赤く染まる→あこう染まる
促音便
えらいことや→えらいこっちゃ おきばりやすや→おきばりやっしゃ
撥音便
つかぬことを→つかんことを 坊さん→ぼんさん
アクセント [編集]大阪弁などと同じく京阪式アクセントの典型であるが、大阪弁とは一部の表現でアクセントが異なる(左が京都、右が大阪のアクセント)。
~ました:食べました←→食べました
~はった:食べはった←→食べはった
東京:とおきょお←→とおきょお
頭:あたま←→あたま(近年では京都と同じアクセントも聞かれる)
語法 [編集] 活用 [編集]共通語と同様の命令形に加えて、連用形による命令表現がある。これは「~なさい」を省略したものである。
(例)「走り」「早うし」
否定の助動詞「へん」は、五段動詞にはア段に後続する。大阪弁では「行けへん」「走れへん」のようにエ段に後続することがある。京都では、エ段に後続する「へん」は共通語と同じく「走れない」「行けない」といった不可能表現を表すため、コミュニケーションギャップが生じやすい。
(例)「あらへん」、「走らへん」、「行かへん」
サ行変格活用動詞、カ行変格活用動詞には「イ段長音+ひん」とすることが多い。現在は大阪などの言い方に従って、「エ段長音+へん」とすることも増えている。ア段+「へん」、イ段+「ひん」、エ段+「へん」とも、未然形+「やへん」が変化したものである。
(例)「しーひん」(しない)、「きーひん」(来ない)
五段動詞で勧誘を示す場合、お段で伸ばさない。一段動詞の場合は短く「よ」を付ける。サ行変格動詞は「しょう」、カ行変格動詞は「こう」とする。
(例)「走ろ」、「行こ」、「見よ」、「寝よ」
可能表現 [編集]共通語同様に「れる」、「られる」を付けて言える。不可能を表す形は「~れへん」「~られへん」がある。
(例)「走れる」、「寝られる」、「走れへん」、「寝られへん」
「~れへん」形は誤解を招きやすいが、京都では多く使われている。
不可能を言う場合、「よう~ん」、「よう~ひん」の形を取ることが多い。
(例)「よう走らん」、「よう寝ん」、「よう起きひん」
敬語 [編集]長らく御所が存在し宮中で話された御所言葉の影響が庶民にも広まったこと、古くからの都市社会で封建的な社会階層が複雑化したことなどから、敬語が非常に発達した。特に女性層で顕著であり、女性層では敬語に限らず常に丁寧な言葉遣いが好まれ、「食う」よりも「食べる」、「うまい」よりも「おいしい」を用いようと努めたり、「お豆さん」など日常生活の名詞にも盛んに敬称をつけたりする[3]。
…はる
「なさる」の変形で、「なはる」とも。日常的に多用される尊敬語表現で、関西の他地域よりも使用頻度が高いと同時に敬意度は低くなっている。目上の人物だけでなく、目下や身内の人物、動物、天候などにも用いることがある。(例)「乗って来はるわ」
お…やす
「はる」よりも敬意の高い尊敬語表現。敬意を伴った軽い命令表現として、特に挨拶などに多用する。相手への確認のための強調として、「やっしゃ」とも。(例)「お越しやす」、「おかけやしとおくれやす」(どうぞお掛けくださいませ)、持っといておくれやっしゃ(持っておいて下さいよ)、ちゃんと聞いといとくれやっしゃ(ちゃんと聞いていて下さいよ)
…といやす
「ておいやす」の変形。(例)「しといやした」(してらっしゃいました)
…ておみ、とおみ
漢字で書くと「て御見」となり、共通語の「てごらん」に相当。(例)「見とおみ」(見てごらん)
…よし
同等・目下に対して用いる軽い命令表現。(例)「はよ行きよし」(早く行きなさい)
…おす
「ある」の丁寧語で、大阪の「おま(す)」に相当。形容詞の後ろにもつく。(例)「誰もおへん」、「おいしおすなぁ」
…どす
断定の丁寧語で、東京の「です」、大阪の「だす」に相当する良く知られた京言葉。「でおす」の変形で、「どふ」とも。江戸末期から昭和にかけて男女とも用いたが、現在では高齢層や芸妓など限られた場面でしか聞かれない。(例)「おめでとうさんどす」、「明日行かはるんどすか」、「そうどした」
婉曲 [編集]依頼や辞退を表すときには、直接的な言い方は避け、婉曲的で非断定的な言い回しを好む。例えば「~して下さい」という要求をする時も、「~してもら(え)やしまへんやろか」(~してもらえはしませんでしょうか)のような遠回しな否定疑問を用いる。辞退する時も、「おおきに」「考えときまっさ」などと曖昧な表現をすることによって、勧めてきた相手を敬った表現をする。また、「主人に訊かなければ分からない」などと他人を主体化させ、丁重に断る方法も良く用いられる。後述する「ぶぶ漬け」も、そのような直接的表現を嫌う風土によるものである。京言葉を解さない人からは、現代においては封建的で意味の成さないことが多く、コミュニケーションをとりにくいと思われている。
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