※偶然の出会いの続編となっております。
まだ見られてない方はそちらを先にお読みください。
あの日以来、時間があれば公園に立ち寄る日が続いた。
彼女と仲良くなりたかった。
話すだけじゃなく。
彼女の歌う歌を誰よりも聴きたかったし、
彼女の事を誰よりも応援したかった。
だけど、一向に会えず……
いつしか月日だけが経っていた。
気づけば夏。
夏休み期間にも入り、私にも少しは余裕が出来ていた。
さすがにこの太陽の下、路上ライブなんてしていないだろう。
そう思いつつも足は自然と彼女が居た桜の木の下に向かっていた。
満開だった桜も散って、枝には青々とした葉っぱが生い茂っている。
そんな木陰の下、またあなたに出会ったんです。
今日はもう終わりだったようで、片付けをしている彼女。
頑張り屋さんだなぁと思ったのも束の間、彼女が少しフラッとしたように見えた。
さすがの私も駆け寄り、声をかける。
「大丈夫ですか?」
「ん?あぁ、この前の……」
「夢莉です」
「そやそや、夢莉ちゃんや。どないしたん?もう歌も終わったで?」
そういうあなたは無理に笑っているように見える。
気温は31度。いくら木陰だとはいえ、ずっと歌ってたんだ。
さすがに体も悲鳴をあげるだろう。
「今日も何となくで公園によったんですけど、フラフラしてるように見えて……」
「…大丈夫やで」
顔を真っ赤にして、汗をかきながらも片付けを続ける。
この人、多分何言っても大丈夫っていう人種だ。
多分まともに飲み物も飲んでないだろう。
彼女の横には空のペットボトルが一つだけ転がっている。
「飲み物…まともに飲んでないでしょ」
「ん?あー、まあ歌ってるしなぁ」
やっぱりか。
良かった。一本予備に持ってて。
飲みかけでは無い方のペットボトルを彼女に差し出す。
「これ、あげます」
「ええん?」
「はい」
「ありがとうな」
もし会えたらと思って、持ってきた差し入れですし。
まあ、ヘタレの私はそんなこといえないんですけど。
「ぷは~!生き返ったわ!」
「それなら良かったです」
「あ、そういや私自己紹介してへんかったやん。私、山本彩って言うねん。今後夢莉ちゃんとは仲良くしたいと思ってるし…仲良くしてな?」
山本彩……さん。
やまもとさん。さやかさん。
しっかりと脳に名前を刻み付けたところで、ふと気づく。
この人、私と今後も仲良くしたいって言った!?
「え、私と仲良く…ですか?」
「せやで。友達になろうや」
そう言って連絡先が書かれた紙を渡された。
「嬉しい…です。私も仲良くしたいって思ってたんで」
「ほんまに!?嬉しいわぁ。夢莉ちゃんってめっちゃ可愛いやんな。しっかりしてそうやし。嫁にしたいわぁ〜」
嫁……嫁……。
あなた…彩さんの何気ない一言も私にとってはとても嬉しくて。
「私も。彩さんのこと支えたいです」
「支えてや~ 笑」
「私でよければ」
「夢莉ちゃんがええねん…(小声)」
「ん?何か言いました?」
「いや!なんもないで!夢莉ちゃんギューってしてや」
「え!?」
私の胸元に飛び込んでくる彩さんにドキドキする。
やばい、いやめっちゃやばい。
私の心臓は飛び出そうなほど脈打ってて。
「めっちゃドキドキしてるやん 笑」
「そりゃしますよ……彩さん美人さんですもん」
「そんなん言うても何も出てこやんで!?笑」
「知ってます〜笑」
そう言って2人で笑い合う。
この時間がもっと長く続けばいいのに。
そう思いつつも、時間は待ってくれないわけで。
「ほな私、そろそろ帰るわ」
「あ、はい。私も帰ります」
「ん、また今度な!帰ったら連絡して!」
そう言って手をブンブン振りながら彩さんは帰っていった。
また会いたい。
そう思ってたらちゃんと会えた。
今後は連絡先も貰ったし、連絡してもいいんやんな…?
つまらないと思っていた日常。
それが最近は鮮やかに見える。
それはきっと彩さんのおかげ。
帰ったらちゃんと連絡しよう。
ありがとうございます って。
ただ、さっきのドキドキはなんだろう。
これも彩さんに聞いてみようかな。
そう思いつつ、夢莉も公園を後にした。
夢莉本人が恋に気づくのはもう少し先のお話。