わたし、久々に恋をしました。

 

といっても、もちろんリアルじゃありませんよ。

 

Cluster(クラスター)というメタバース内での話。

 

それに恋をしたと言っても、完全に相手にされなかった片思いなんですけどね。

 

 

 

Clusterの仮想空間の中では、いろいろなことができるのですが、

 

わたしが熱烈な恋をしたお相手(以下Hさま)は、芸術センスが抜群の方なんです。

 

ワールドといって自分の世界を作って、投稿して発表できるのですが、

 

Hさまの作品のどれもが、心臓に杭を打たれる(ドラキュラか)ような痛みのある美しさ。

 

 

 

それからというもの、Hさまを探しまくりました。

 

お互いフォローしていてフレンドという関係でないと、Hさまがログインしているかどうかを

 

知ることもできないし、ましてやメッセージを送るなんてことはできないんですよ。

 

なので、イベントというイベントに顔を出して、探し回りました。

 

 

 

やっと捕獲できたのは一週間後。

 

とあるイベントで、女性アバターに変身しているHさまを見つけました。

 

 

もう、夢心地でフラフラしながら(アバターはフラフラしません)Hさまに声をかけました。

 

「お話したいことが・・・」(一部割愛)

 

キーを打つ私の手のひらは手汗がぐっしょり。

 

 

「あんた、なかなかキモイね」

 

と背後で言う夫の批判など痛くもかゆくもなく、Hさまに縋りつくような心持で言いました。

 

 

OK・・・だったと思うんですよ、返事。確かに。

 

 

なので、わたしはイベントが終わるまでの一時間、Hさまの隣で踊りながら待ち続けました。

 

 

 

「写真撮影しま~す」

 

イベントの主催者の声が響きました。

 

すると、まさかまかさの事態が!

 

 

「〇✕△□※(長文とプライバシー保護のため割愛)。申し訳ない」

 

 

そう、「申し訳ない」と言って、Hさまは写真撮影のほうへ走り去っていってしまいました。

 

姿の見えなくなったHさまに向かって、わたしは叫びました。

 

「フレンドになりたいって、ただそれだけ言いたかったのに」

 

この悲痛な叫びはHさまに届いたのでしょうか。

 

 

 

Cluster内の友達や、占いイベントの占い師さんたちは、口を揃えて言います。

 

「諦めないで大丈夫。あなたから動きなさい。きっとうまくいくから」

 

いあいあいあいあ、動いた結果、こうなったんですが? とわたしは言いたい。

 

 

 

 

この大失恋の日の夜、38℃の熱を出しました。

 

翌朝には下がっていたものの、あれから3日たった今も食欲がなく、おなかぺったんこ。

 

大人になってから出す高熱もつらいけど、失恋、このダメージはんぱないね。