2015/10/2015:39:02

「エンジェルハート」は北条司が「シティーハンター」の続編のつもりで描いたところ、冴羽獠の相棒だった槇村香が事故死したところで始まったのでファンが激怒し、作者は「AH」単行本化の時点でカバーで「パラレルワールドだ」「CHのキャラクターとAHのキャラクターは全く関係ない」「CHの続編と勘違いした人がどう感じようがこっちに責任はない」とコメントしていた。

パラレルワールドとは「映画ドラえもんのび太のパラレル西遊記」(1988)のフィルムコミックによると、時間軸が枝分かれして別の平行世界が出来るという仮説らしい。

カール・セーガンも「コスモス」で似た説を紹介していた。

冴羽獠の戸籍、冴羽が香の兄と組む切っ掛け、ファルコンの設定など、細かい設定の違いがあるようだが、これは作者が「パラレルワールド」と開き直った後で、どんどん変えていった設定も含まれるだろう。

北条司の本音は「これは所詮フィクションだ」だろう。

冴羽獠も槇村香も存在しないのだから、作者がどうしようと自由である。

白土三平は主人公だろうと人気キャラクターだろうと関係なく、厳しい乱世における最期を描いた。

ここで敢えてCHとAHを同じ世界の話としてAHの設定を肯定的に考えてみる。

槇村香の場合、シティーハンターの相棒としての仕事で死んだのでなく、あくまで交通事故で死んだわけで、これは裏稼業の人間の最期としてはまだ「救い」が残った。

もし香が死ななければ子供が車にひかれていた。

もしシティーハンターのスイーパー（始末屋）としての闘争の中で死んだのなら冴羽獠は悔やんだだろう。

実際に、CHで冴羽獠は香を冷たく突き放して「解雇」しようとしたことがある。また、海坊主との死闘で冴羽が頭に負傷した後、冴羽獠に香以外の女性との「縁談」が来た時、冴羽獠の「師匠」だった老人は香に冴羽と別れるよう助言した。冴羽が危ない仕事から足を洗えるチャンスだったわけだ。

交通事故で香が死んだ場合、原因は一般人が持つリスクと同じであった。冴羽にとって香りを守れなかった悔いは少しはあったが、普通の看護婦（AHの設定）であったとしても交通事故で死んだ可能性があり、冴羽獠は受け入れたのではないか。

そうなると槇村香は伊達直人に似ている。梶原一騎原作「タイガーマスク」の伊達直人は原作で交通事故で死んでおり、虎の穴の刺客との死闘を勝ち抜いた伊達直人としてはあっけなかったが、伊達直人らしい最期だった。アニメでは最終回で伊達直人は死なず、海外に旅立った。

「タイガーマスク二世」の原作は伊達直人死後の時間軸上の世界。

振りかえるとフィクションには続編のようでパラレルワールドという例が多い。

「新巨人の星」（1976～79）は「巨人の星」（1966～71）の続編のようで、別の時間軸の話と解釋する人もいる。特にアニメの「巨人の星」と「新巨人の星」は「幻のスイッチピッチャー」や飛雄馬が左門に当てた手紙の内容、新の飛雄馬が左の「肩」を壊した設定が「腕」も戻っていないなど、違いが大きく、まるでつながらない。

更に江川卓が入団した1979年（推定）、一徹が死んで飛雄馬が大リーグに移籍したのがアニメの「新巨人の星II」で、飛雄馬が巨人の二軍コーチになって水木炎を鍛えたのが原作の「巨人のサムライ炎」である。

水島新司の「ドカベンプロ野球編」も「ドカベン」明訓編のようで実はパラレルワールドであり、それどころか高校野球編（「ドカベン」「大甲子園」「新潟明訓vs神奈川明訓」）は複数のパラレルワールドの集合である。

高校野球編では土佐丸高校の犬飼小次郎は南海ホークスに入団したが、プロ編ではダイエーホークスに入った。

高校野球編では「野手が捕球したままフェンスの向こうに落ちて本塁打」「ラッキーゾーンに打球が入って本塁打」という場面が多かった。

プロ編では「野手が捕球したままフェンスの向こうに落ちて本塁打→アウト」というルール改正があったことになっているが、プロ編の設定だと山田世代の高校時代ではこのケースではアウト。

また、プロ編の山田世代が高校に入った時点で、甲子園球場にラッキーゾーンは撤去されている。

プロ編の山田太郎は1976年5月5日生まれだ。この時期、高校野球編のドカベンは高校1年秋の地区大会から関東大会にかけての時期だった。

円谷作品でも「ウルトラセブン」の続編には「平成ウルトラセブン」の流れと「帰ってきたウルトラマン」～「ウルトラマンレオ」～「ウルトラマンメビウス」の流れの2種類がある。平成セブンでは地球防衛軍はウルトラ警備隊のみで、MATやMACは存在しなかった設定のようだ。これもパラレルワールドだ。

藤子作品も同様。

前述した「ドラえもん」もパラレルワールドの集合体である。

2112年ドラえもん誕生の設定は2回か3回変わっている。黄色いドラえもんがネズミに耳をかじられて青ざめた設定が、黄色いメッキがはがれた設定になった（青ざめる未来が変更され、黄色いメッキがはがれる予定になった）。

ドラミとの初対面の場所は海岸からロボット工場内に変更。

黄色いドラえもんは生まれた直後、自分がいずれ青くなることを知っていたはずだが、その設定はなくなった。

未来の世界でドラえもんと共に生まれるロボットでは、ガチャ子、トラえもん、ザ☆ドラえもんズがいたが、現れては消え、最近ではパワえもんが登場した。

ノラミャー子は一時、映画で原作とかけ離れた美猫になったが、声優交代後のテレビで原作に近い姿に戻った。

のび太の父親が疎開経験という設定はとっくに通用しなくなっている。

てんとう虫コミックス1巻第1話でのび太は1979年に大学を受験したはずだが、21巻くらいだと昭和54年でものび太は小学生だ。

25巻「竜宮城の八日間」の原作ではのび太の少年期は1982年。

これが2014年のアニメでは2014年になっている。

2012年の「のび太と奇跡の島」では1982年の時点でのび助が小学生くらい。

どう考えても1970年以降、つまり戦後生まれ。

7巻の「ママのダイヤを盗み出せ」では玉子（のび太の母）の少女時代は昭和23年（1948年）で黄金バットの紙芝居があった。

これが2007年にアニメ化されると、玉子（のび太の母）が7歳の時、松田聖子のサイン会があった設定になり、「赤いスイートピー」が流れていたので1982年であろう。

9巻「ツチノコ見つけた！」の原作でジャイアンがツチノコを見つけたのは1975年（雑誌掲載時の設定）または1976年だが、2007年のアニメ版「ママのダイヤ～」ではのび太の母が1975年ごろに生まれたことになる。

実写の時代劇も同様だ。

「水戸黄門」など42年続いたが徳川光圀が隠居してから没するまで10年だった。

水戸光圀が42年も旅したわけがない。石坂黄門のシリーズなど、レギュラー出演者交代の時に何度も時間軸がリセットされている。藤井紋太夫は東野黄門と石坂黄門で2回手討ちにされており、里見黄門になってからも最後の1時間枠（2011年12月12日）でまた登場した（俳優は3回とも別）。

助三郎は独身→志乃と結婚（里見浩太朗の時代）→独身（あおい輝彦の時代）→美加と結婚（原田龍二）→独身→志乃と結婚（東幹久の時代）という変遷。

何しろ第42部では、お娟（演：由美かおる）が商家に嫁いでお供から引退し、楓（演：雛形あきこ）と交代した時、格之進（演：的場浩司）が老公のお供になったのだから、続編でなくパラレルワールド。第42部のお娟は第29～41部のお娟ではない。「寿退社」も白けるだけだ。

飛猿は健在だったが、弥七の妻・お新と娘のお梅はいなくなった。

2015年の復活スペシャルでは助三郎が原田龍二に戻され、41部以前と42部以降のどの時間軸の話か曖昧になった。お銀は当然、お娟も楓も不在となった。

必殺シリーズも同様で、「必殺仕事人2007」は「必殺！主水（もんど）死す」の続編ではないし、時代設定から考えると30年ほど逆戻りしている。

「主水死す」は1849年葛飾北斎没から1851年水野忠邦没までの嘉永年間。

「2007」で主水が書庫番に移ったのは1820年の文政年間だ。

「主水死す」では20年前の主水の仲間が再登場したがこれは過去のシリーズに出てこなかった。時代設定で考えると「主水死す」における20年前はシーボルト事件の時の文政末期で、「春雨じゃ、悪人退治」で主水は高橋景保の獄死を見届け、千葉周作、加代らと組んで国学者と商人の一派を仕置し、景保の仇討をしていた。

天保の改革が始まった1841年当時、「仕置屋」の主水は北町から南町奉行所に異動してきたばかりだったが、「オール江戸警察」の主水は奉行所勤続23年（北町を含むか不明）の古株だった。

「宇宙戦艦ヤマト」など初期のイスカンダル編からしてスターシャと古代守が「死んだ」話と「生きていた」話が両方作られている。白色彗星編になると、映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」で工場長真田、古代進、森雪、佐渡先生らが戦死したはずが、テレビ版「ヤマト2」で作り直され、テレサは映画で反物質の人間だったのがテレビではそうでなくなり、島大介に自らの血を輸血。白色彗星の中枢にあった巨大戦艦に特攻したのは、テレビ版でテレサだけで、古代、雪、佐渡先生らは生き残った。その後の映画はテレビ版「ヤマト2」の時間軸で作られた。それでも新たな敵が出て、「ヤマトよ永遠に」でスターシャ、サーシャ（娘の方）を含め重要なキャラクターがまた死んだ。デスラーは何度も死んだかと思われて復活。挙句の果てに「完結編」で沖田艦長も復活。「ヤマト2199」は完全な作り直しだろう。

「北斗の拳」と「蒼天の拳」も同様。ケンシロウの故郷は修羅の国なのか、日本なのか、謎だ。

「エンジェルハート」は「シティーハンター」の「続編」のようで、作者によって「パラレルワールド」とされたが、逆に建前「続編」であっても実質「パラレルワールド」である場合もあるのだ。

フィクションだと思って割り切るのも重要だ。

シティーハンターとエンジェルハートについて #知恵袋_

北条司は続編として作ろうとしたが読者が認めなかった。

AHのキャラクターがCHのキャラクターと関係ないなら、初めから名前が同じでそっくりなキャラクターを使わなければいい。

「作者がパラレルワールドと言った以上、疑問を持つな」「作者の見解を否定するな」という作者絶対主義は単純すぎる。作品のファンは作者の信者ではないし、作品のファンだからこそ作者の見解を否定していいのである。むしろ作品のファンにとって作者は恩人であり、神であると同時に最大の敵でもある。

藤子・F・不二雄の「ドラえもん」も同様。「黄色いドラえもんが青ざめた」設定も「黄色いメッキが取れた」設定もF氏存命時のアニメの設定。

「青ざめた」設定は1980年、「メッキ」設定は1995年に出た。

特に20年前の「メッキ」設定は最後の作者公認設定であった。しかし「青ざめた」設定で覚えた世代が数年前になって「メッキ」設定を知ると、ツイッター上で「本当に未来のロボットか」「勝手に設定を変えるな」などと、既に故人である原作者を批判しだした。作品のファンは作者を批判するものだ。それが没後20年近くたってもだ。

なお、AHがCHの「パラレルワールド」であることに疑問を持つ人は、「作者は続編を作ればよかった」と思う前に、自分で「AHはCHの続編だ」と思えばいい。

前述のとおり、細かい設定の違いは建前「続編」の話でも多い。

香瑩はピンインではXiang Yingだがそれを知らない人はShan Inとか書きそうだ。まあ葡萄牙語で上海はXangaiだし…
💻人気コミック「エンジェル・ハート」が１０月に日テレ連ドラで初の実写化（スポーツ報知） - Y!ニュース
〔17:49 - 2015年7月16日〕

「シティーハンター」はジャッキー・チェン主演で実写化されたことがある。当時、気になったのは、日本で上映または放映される時、冴羽を演じたジャッキーの声は石丸博也がやるか、神谷明がやるかという問題。
〔17:54 - 2015年7月16日〕

〔T-Cup掲示板 396〕

エンジェル・ハート
北条司の漫画『エンジェル・ハート』
槇村香は2000年5月、28歳で交通事故死。計算すると1972年5月の時点で0歳。

『シティー・ハンター』の香は1965年生まれの昭和40年女で、設定が異なる。

〔投稿日：2015年 7月16日(木)18時51分23秒〕

〔T-Cup掲示板 405〕

「エンジェル・ハート」実写化 T-Cup掲示板

「エンジェル・ハート」の槇村香は「シティーハンター」と生年などの設定が違うようで、やはり「パラレルワールド」か。「ドラえもん」ののび太も「ドカベン」の山田太郎も似たようなものだが。
〔投稿日：2015年 7月16日(木)18時51分23秒〕

〔#エンジェルハート〕　

第1話、今夜放送。香の生年月日がいつの設定か、気になる。

〔T-Cup掲示板 396〕

〔午後7:11 · 2015年10月11日〕

〔#angelheart〕〔#エンジェルハート〕　