第29(放送期間:2001年4月2日~9月17日)
石坂黄門第1シリーズで第1話では1684年(貞享元年)の光圀藩主時代から1690年(元禄3年)の隠居まで描かれている。光圀57歳から63まで。
第4話「珍客駆け込む西山荘」で小城藩主・鍋島元武とオランダ商館のケンペル(Kaempfer)が綱吉に謁見しており、ケンペルは1690年に来日して翌年に江戸に来ており、1692年に再び江戸に来た。
この場合、光圀の年齢は63歳から65歳まで。
第5話と第19話で「波瀾万丈の旅立ち(甲府)」と第19話「謎の俳諧師を追え(高田)」で松尾芭蕉(演:佐川満男)が登場。芭蕉は1694年没。
さらに第25話「陰謀と裏切りの果てに(江戸・水戸)」では光圀が藤井紋太夫(演:大出俊)を手討ちにした事件が再び描かれ、第1部第2話と同様、光圀が67だった元禄7年末(1694年末~陽暦1695年初め)に舞台が移っている。
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石坂黄門第1シリーズでは光圀の白髭がなかった。石坂浩二が「江戸時代の藩主は髭を生やしていなかった」と主張したかららしい。石坂黄門では紋太夫事件まで光圀に白髭がなかったことになるが、第30部の時代背景を考えると、第30部は第29部最終回より前の時代に戻っているような節がある。

第30部(放送期間:2002年1月7日~7月1日)
石坂黄門第2シリーズ。第29部で藤井紋太夫を手討ちにした光圀は一時、部屋に閉じこもり、それでトレードマークの白髭が復活。それで石坂浩二の光圀は第30部で髭のある姿となった。だから第30部は第29部の後の話のはずである。しかし第30部第21話「遊女が狙った異人館(長崎)」で光圀はケンペルと、そして鍋島元武と再会しており、ケンペルが日本に滞在していたのは1692年(光圀65)までなので、また時代が2年はさかのぼっている。終盤で松尾芭蕉が登場しており、芭蕉は1694年没。芭蕉は紋太夫より少し前に亡くなっているので、時代は紋太夫事件の前に戻ったようである。

第37(放送期間:2007年4月9日~9月17日)
里見黄門で、鬼若(演:照英)とアキ(演:斉藤晶)の最終シリーズ。第7話「家族を捨てた母の愛(鶴岡)」で出た念書に「元禄己卯年」のような文字が見える。これは1699年だから光圀没年の前年、光圀72歳である。
しかし、第16話「美人妻と武士の一分(遠野)」 では殿様の「お墨付き」が「元禄丁丑年」に書かれた書状のようであり、これは1697年。佐々木助三郎のモデル・佐々介三郎は1698年に他界しているので1697年の可能性が高い。これは光圀70の時。
同シリーズ最終話である第23話「消えた水戸の若君!次期将軍を狙った野望」では綱條の息子・徳川吉孚が14歳。吉孚は1685年生まれなので数え年で14歳になったのは1698年(元禄11年)のこと。
劇中、吉孚が誘拐され、光圀が奪還したが、事件の黒幕は紀伊大納言・徳川光貞で、綱吉によって実行犯数名が処分を受けた。
光貞がどうなったか不明だが1698年に光貞が隠居し、長男・綱教に藩主の座を譲っているので、第37部最終話で描かれたのはこの時期か。そうなると光圀71歳の時期だ。

第38(放送期間:2008年1月7日~6月30日)
第5話「暴れ若様まかり通る(和歌山)」では光貞の四男・源六(演:柳沢太介)が登場。後の8代将軍・吉宗である。吉宗は1696年に「源六」から「頼方」に改名したらしいので、第5話の時代設定は1696年よりも前になるはずだが、その後の第9話の時代設定から考えると1697年以降の設定である可能性が高い。
第9話「世捨てお公家の悪退治(敦賀)」では中村梅雀扮する公家が勅命をひろげる場面があり、そこではやはり「元禄丁丑」の年とある。これは元禄10年(1697年)、光圀70の時である。
佐野黄門時代の最終シリーズである「水戸黄門」第28部第17話「暴れん坊は紀州の若様」で紀州の若様こと新之助が登場する。「新之助」は源六または頼方の別名であった。「暴れん坊将軍」で吉宗(演:松平健)が「徳田新之助」を名乗っていたのもこのためであろう。

第28部第17話で新之助が光貞の三男なのに、第38部第5話で源六が四男になっている。これは吉宗の兄が綱教、次郎吉、頼職で、次兄が早世しているため。

ちなみにNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」によると、吉宗は1697年当時、父や兄たちに連れられて江戸を訪れ、綱吉に謁見している。この時、吉宗の名は「松平頼方」だった。
もちろん、水戸光圀は実際には紀州や敦賀を訪れてはおらず、光圀が実際に訪れた場所の一番西は熱海だったようだが、いずれにしろ光圀は紀州まで行かずとも江戸で吉宗と会おうと思えば会えたわけだ。
TBSの「水戸黄門」第5話が第9話と同じ元禄丁丑の年の話とすると、光圀が源六(正確には頼方)と会った年の翌年に光貞一派が吉孚を拉致したわけだ。
敦賀(つるが)は福井県に属するが京都や琵琶湖に近い。原発の「地元」の一つである。

第40(放送期間:2009年7月27日から12月21日)
再び松尾芭蕉(演:堺正章)が登場したので時代は1694年の芭蕉没年より前の時期に戻っている。
第40部の第1話で新旧八兵衛の交代が描かれている。時間軸上の考察は「水戸黄門」の新旧八兵衛の時間軸を参照。
また第12話「藩主の嫁も楽じゃない(鶴岡)」では光圀(演:里見浩太朗)の姪・密姫(演:黒川智花)が庄内藩主・酒井忠真(~ただざね)の妻で、大名の妻は普段江戸住まいだが、前藩主・酒井忠義の法要のため密姫はお国入りしていた。忠義は1681年没であり、光圀の隠居はその9年後。よって忠義の法要が3回忌や7回忌では光圀が隠居する前で、17回忌だと芭蕉が故人であり、20回忌以降だと光圀が故人となるので、劇中の法要の時期として可能性が高いのは13回忌の1693年の前後になる。光圀は1693年当時66
劇中に6年前の回想シーンがあり、密姫が鶴岡に嫁ぐ直前に光圀と会った時の回想だったが、6年ぶりの再会が1693年の事だとするとその6年前は1687年ごろになる。石坂黄門ではその前後数年(1684年から1690年以降まで)が描かれていた。
第13話「荒海超える恋!男を変えた女の純情(出雲崎)」では芭蕉が北陸で「荒海や佐渡に横たふ天の川」という短歌を思い付いた。第4部の箇所で述べたように、芭蕉が「おくのほそ道」の旅をしたのは1689年で光圀隠居の前年。

第42(放送期間:2010年10月11日~2011年3月21日)
助三郎役が原田龍二から東幹久に、格之進役が合田雅吏から的場浩司になった第1シリーズ。第1話「お前は助さん俺は格さん」で格さんが光圀(演:里見浩太朗)の旅のお供に参加する経緯が描かれているが、疾風のお娟(はやてのおえん、演:由美かおる)がお供を卒業して商家に嫁ぐ場面もあったので、これだけでは第41部以前から時代が進んでいるのか戻っているのか不明。
第1話で讃岐高松藩の跡目争いが問題となり、光圀の実子・松平頼常に二人息子がいて、松平頼良と松平頼豊。劇中で松平頼豊は12歳で、頼良は2歳上なので14歳。12歳の頼豊は1680年生まれで、数え年12歳は満11歳になった年なので、第41部第1話の時代設定は西暦1691年であろう。光圀隠居の翌年である。
調べてみると「史実」では松平頼泰が頼常の長男で、松平頼豊は実在したが頼常の養子で、頼豊は水戸藩初代藩主・徳川頼房の曾孫に当たる。
第42部第1話で頼豊は12歳、光圀は64だったことになる。さらに第11話「大晦日、都で悪の大掃除」以降では年が明けている。ここで光圀は数え年65歳になったはず。それで雪が降るシーンが全くないし、一行が厚着をするシーンもないのは不思議である。第42部は1691年(元禄4年)から1692年(元禄5年)にかけての時期を描いていることになる。
松平頼常の息子・頼豊は幼名が軽千代で、第25部で光圀(演:佐野浅夫)が高松を訪れていた時にそば屋で遭遇している。

前述通り、第38部第9話の舞台は1697年(元禄丁丑年)のようで、これは第42部で描かれた時代(1691~1692年)から5年後であり、第37部最終話は更に次の年の1698年の出来事。その時にもお娟は一行に同行していた。
第42部第1話でお娟が光圀の護衛から引退したように見えるが、第37部や第38部からわかるように、第42部の旅から6年ほど経過した時代でもお娟は光圀の旅に同行していた。

第43部(放送期間:2011年7月4日~12月12日)
2011年12月12日放送、第43部の最後の1時間枠「嗚呼、人生に涙あり」では柳沢吉保と藤井紋太夫(演:小倉一郎)が光圀を暗殺しようと刺客を送り込んだ。結局、光圀は無事で、吉保も紋太夫も刺客も手討ちにされず終わったが、重要なのは東野黄門と石坂黄門で2度も手討ちにされたはずの紋太夫が「復活」していたこと。またも時代が紋太夫が手討ちにされる前にさかのぼっている。紋太夫を手討ちにした時の光圀は67歳だった。
 
最終回スぺシャル(2011年12月19日)
放送の最終回スペシャルは第43部の旅から数年後の設定だったが、それまでの多くのシリーズと劇中の時代が重なることは充分に想像できる。
最終回スぺシャルでは綱吉が護国寺に参拝に行った。大野敏明氏の『坂本龍馬は笑わなかった』によると護国寺の竣工は1697年なので、第38部第9話の勅命にあった元禄丁丑年である。
最終回スペシャルの光圀は70歳から73歳までであろう。ただ、佐々木助三郎のモデル・佐々介三郎は1698年に没しているのでそれを計算に入れると、護国寺竣工後、助三郎が存命だったのは1697~98年に限られ、光圀は70代から71歳に限定される。

里見浩太朗は1936年生まれで助三郎役は35歳から51歳まで。
光圀役を始めた2002年当時で66歳。第43部と最終回SPが終わった時点で75歳だった。
 
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2012年9/7 9/7前後 
 
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