『暗闇仕留人』テレビ埼玉再放送「世のためにて候
おひろめの半次が抜けたのか、瓦版のマイナス面が問題になっても、半次は出てこない。
半次がいたときは、主水やおきんが瓦版を仕置に利用していたが、それが両刃の剣であることがわかる。
 
ここで瓦版は「よろず ひょうばん(萬評判?)」と呼ばれている。
読売新聞のCMで「昔は瓦版を『よみうり』と呼んだ」と言っていたと思うが、名前が「瓦版」「萬評判」「読売」の3種あったのか。
 
劇中の店の看板や瓦版を見ると手書きで「よろずひょうばん」と書かれてあり、今の假名遣いと同じだったが、暦s的假名遣いでは「よろづひやうばん」だったはずだ。
ただ、江戸時代ですでに「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の發音が混同され、また重母音も融合していたようなので、歴史的假名遣いは明治以降になって「作られた」部分が大きいのかも知れない。
 
「瓦版」「かわら版」で悩むが、主題歌「旅愁」のバックでは「瓦版屋」とあったと思う。
糸井貢はカンザシを買ったが、それが「つたや(蔦谷?)」らしい。今ならDVDレンタルの店だ。
瓦版による被害者の無念を晴らすべく、貢はカンザシで瓦版屋を仕置。
仕留料はおきんが拝借していた(5両の?)櫛だった。
 
『暗闇仕留人』テレビ埼玉再放送「乗せられて候
必殺DVDマガジン仕事人ファイル』では「試して候」の次にこれが収録されている。
貢が仕込み矢立てを使った最初の回か。
 
『仕留人』の音楽というと「旅愁」「みかづき恋歌」のメロディが印象的だが、あとは過去の作品からの流用も多く、『仕掛人』の西村左内の曲やエンディングの曲、『仕置人』の曲も使われていた。
 
井戸に落とされた主水の顔の下半分がヒゲのように黒くなったところは『必殺仕事人V旋風編』の「主水バースになる」に似ているし、中村家に戻ったときに『仕掛人』のエンディングの曲がかかるのは『仕事人』無印後半に似ている。1980年代の『仕事人』の要素が1974年の『仕留人』で出ていたようだ。
「主水バースになる」は将軍が現職で没したときなので、黒船来航当時なら1853年の家慶没のころか、それ以降なら1858年の家定没、1866年の家茂没の時代になる。また、『助け人走る』の最終回でも名前不詳の将軍が他界しており、これも黒船当時であろうか。『助け人』も『旋風編』も文化・文政が舞台と思われる回があるが、文政年間では将軍は交代していない。
 
文政時代の将軍・家斉は家慶に将軍を譲ったあとに、4年間、大御所だった。大御所としての家斉の最後は『風雲竜虎編』の「将軍の初恋騒動!」で描かれている。さらに『風雲竜虎編』のメンバーだった主水、政、影太郎が登場し、お玉に代わって加代が復帰した『大老殺し』は1858年の安政の大獄で話が始まり、当時は家定が没していた。主水はその7年~9年前に家定の双子の妹・捨蔵と会っていた。
 
なお、高野長英が獄死したのは1850年で、主水が捨蔵と会っていたとき。『仕留人』の舞台となった時代はそれから3年後か4年後であった。
貢と大吉の仕置の技は、それぞれ梅安と鉄の仕置の手口をもとにしたように見えるし、その根源が中国医学であるのは興味深い。これは『魁!!男塾』の飛燕が鳥人拳と『北斗の拳』でケンシロウが使う北斗神拳にもつながる。
 
石坂浩二が水戸光圀を演じたのは2001年から2002年までの還暦寸前だったが、むしろ1970年代に青年光圀を演じてもよかった。『水戸黄門』が老人となった光圀を主人公とするマンネリが作品を縛っていた。
石坂黄門の時期に保守的なファンが番組から離れたらしいが、反体制派の糸井貢が体制派の『水戸黄門』を中から倒したと思うと興味深い。
なお、反体制の必殺と体制派のナショナル劇場ではレギュラーや準レギュラーでも共通の役者が多く、石坂浩二、鮎川いづみ(→いずみ)、西郷輝彦、森田健作、あおい輝彦、伊吹吾郎、京本政樹、近藤正臣が両方に重要な役柄で出演したし、必殺スペシャル版でのゲストでは東野英治郎と三波豊和がいた。野川由美子と火野正平は日テレで里見浩太朗主演の時代劇に何度も出演していた。
 

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2012年5/3前後
 
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