元記事(コメントつき)

徳川光圀は佐々木助三郎、渥美格之進を連れていたが、元窃盗犯で忍者の弥七とその子分・八兵衛も連れていた。助三郎のモデルは佐々宗淳(さっさむねあつ、または介三郎)で、渥美格之進のモデルは安積澹泊(あさか たんぱく)らしい。弥七のモデルは「松之草村小八兵衛」だという情報が電脳網にあるが、忍者のことだから真偽不明。のちに柘植(つげ)の飛猿とかげろうお銀も参加した。これで光圀一行は『西遊記』で描かれた玄奘取経の旅の一行とそっくりになった。

●玄奘三蔵(『西遊記』)・・徳川光圀(『水戸黄門』)→リーダー
●孫悟空(『西遊記』)・・弥七、飛猿、鬼若、お銀またはお娟(『水戸黄門』)→アウトローだが強い助っ人
●猪八戒(『西遊記』)・・八兵衛、千太、新助(『水戸黄門』)→庶民派(但し八戒は人間や妖怪の雑兵より強い)
●沙悟浄(『西遊記』)・・助三郎、格之進(『水戸黄門』)→忠実で真面目な部下


違うのは『水戸黄門』で白馬がいないくらいか。忍者を飛猿と呼ぶのは白土三平の歴史漫画にもあったと想う。孫悟空の別名は猴行者だからよく似ている。中国人が飛猿、八兵衛がいたころの『水戸黄門』を見たら『西遊記』の真似だと想うだろう。
弥七は江戸で妻・霞のお新とそば屋を経営していたらしいが、年中、諸国漫遊に同行して、最初は妻も同伴だったから、そば屋はよく休業になっただろう。なかなか、常連客(リピーター)もできなかったのではないか。のちにお銀がメンバー入りしてから、お新は江戸で留守番になったのだろう。

『宇宙戦艦ヤマト』も『西遊記』をモデルにした作品のようで、これは『SF西遊記スタージンガー』で明確になる。
また、『スタージンガー』に見られるように、日本のSFアニメでは熱血漢の二枚目、クールな面長の男、巨漢という組み合わせが好まれ、『ゲッターロボ』もそうである。SF、ロボットアニメ、特撮ヒーローのキャラクター配置が『水戸黄門』のそれに近いことを明確に示しているのが『最強ロボ・ダイオージャ』であった。

『水戸黄門』のアニメ版として『まんが水戸黄門』もあった。
光圀、助三郎、格之進のような3人の男の個性の配分は『サンバルカン』『ゲッターロボ』などに近く、さらに八兵衛、お銀、弥七と飛猿を加えた5人になると『ガッチャマン』『ゴレンジャー』に近くなる。
実は藤子不二雄作品にある「架空のキャラクター(例;ドラえもん)、普通の少年(例;のび太)、ガキ大将(例;ジャイアン)、そのガキ大将と一緒の小柄な子分(例;スネ夫)、女の子(例;源静香)」という組み合わせも、偶然ながらこの5組のキャラクター配置に似ているのである。

日本の時代劇とSF、ロボットアニメ、特撮ものが似た世界であり、それらが『西遊記』の影響を少なからず受けているとも考えられる。


「史実」からの脚色
『西遊記』の場合、玄奘の取経の旅がもとになっており、『西遊記』では玄奘の從者が孫悟空(孫行者)、猪悟能(猪八戒、朱八戒)、沙悟浄(沙和尚)となった。日本に傳わると沙悟浄が河童にアレンジされ、TBS『飛べ!孫悟空』で仲本工事が顔のモデルとなり声を当てた沙悟浄は河童であった。ここでは、いかりや長介が三蔵法師の顔のモデルと声を担当。日本テレビの実写ドラマでも沙悟浄を岸部シローが演じて河童の設定になり、三蔵を夏目雅子が演じて三蔵を女優が演じる路線が定着。中国中央テレビの実写版『西遊記』では唐僧を男が演じ、沙和尚はヒゲつ面の坊主である。

『水戸黄門』の場合、もとは徳川光圀が水戸と江戸の往復のほかに日光や鎌倉、筑波など関東各地を訪れたことがもとになっているのだろう。これが講談で全国行脚となって映画に受け継がれ、TBSのテレビ版で印籠が定番化し、弥七と八兵衛が付け加えられた。

香取慎吾が悟空を演じたドラマが放送されたとき、中国では唐僧が女で八戒がやせていることなどに批判があったらしい。朝日新聞では「史実」の玄奘の旅から中国の『西遊記』を経由して日本式『西遊記』になった流れの結果として扱っており、中国版も脚色の結果であるという趣旨のように見えた。『水戸黄門』の場合、2011年の第43部でTBSのドラマとしては終了したが、「全国行脚」「毎回印籠」「老人光圀」という「お約束」に縛られなければいくらでも新作の可能性はある。

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2008年9/25