────貴方は優秀なプレイヤーです。

今後、本機は貴方に対し脅威を与えることが出来ないと判断し、この結果をプライマーに送信。現実にフィードバック。プライマー全体のアップデートを行います。

『おい!マリスがプライマーに情報を飛ばそうとしてるぞ!!』

『慌てるな、AIと言えど所詮機械だ。物理的に電源を落としてしまえば問題………嘘だろ………』

『電源は落としたんだ!全部切った!!でも、止まらないんだよ!!』

『マズイぞ!破壊しろ!!急げ!!!ストーム1を呼んでこい!』


プライマー母船とのネットワーク接続完了。

データ送信を開始します。

30%……

『おい!!なんで止まらないんだ!!クソッタレ!!』

50%………

『ストーム1!爆破しろ!!ここはもうどうなってもいい!止めるんだ!!』

80%…………

『!』

90…………


プライm……へn情h送……を完リョ……sましt……




──────これが、今俺が覚えている事全てだ。


戦術AIマリス。

俺達EDF隊員への訓練を目的として作られたAIは突然暴走にも近い行動を引き起こした。

どうやら今までの訓練データ及びマリスの解釈と呼ばれるデータ全てをプライマーへ転送したらしい。

そう『今までのデータ』全てだ。

当初はプライマー母船へのネットワーク接続など非現実的、あり得ないだろうと総司令部は判断していた。

そりゃそうだ。

相手は未来から来ている。

こちらの技術で簡単に接続出来るんだったら
ハッキングでもなんでも行ってとっくに母船の1つや2つ叩き落としている。

でも現実は違った。

総司令部も俺達もマリスを侮っていた。


「クソ!」


崩壊したビルの隙間に身を隠したまま悪態をつく。

今まで何度も何度もこういう事態に陥ってきたが状況は今回が一番酷い。

空にはマザーシップと黄金の輸送船。

それらが船団となって各地へ向かって飛行している。更に悪い事に周りにはクルール、それも強固な装甲に身を包んだ厄介な奴らが跋扈し睨みを効かせているようだ。

おまけに奴らの武装にはプロテウスですら苦戦すると来ている。

これがVR世界ならまだ救いもあった。
だが、残念な事にこれは『現実』だ。

マリスが引き起こした最悪の再現だ。


「どんだけ居るんだよコイツら……」


辺りを見回そうにも動けない。
奴らの足音だけで数を把握しようにも多すぎて数えようがない。
索敵レーダーも真っ赤だ。
味方の反応のほうが少ない。

今までの状況とは全く違う。

EDFの戦力は未だ絶望的では無いが、それでも相手の戦力がケタ違いすぎる。
クラーケン一匹にしても、蟻一匹にしても脅威度が比にならない。

それでも数体は撃破したが、とにかく数が多い。お陰で結果的にこちらが完全包囲される事態に陥った。

ストーム1や大尉達も恐らくどこかに身を隠しているだろうが、歴戦の英雄たる彼等でもこの状況では身動きが取れないだろう。

通信機はあるが使えば傍受されるのは間違いない。

傍受された所で奴ら言葉の意味が理解できているかと言えば、その可能性は低い────ハズだった以前までは。


今の奴らには



『速やかに投降してください。
貴方達がこの戦争に勝利する確率は0%です』



マリス。

アイツが付いている。

「ポンコツAIの分際で……!」

怒りで衝動的に建物から飛び出そうになったが、なんとか堪えた。

上空のマザーシップからの煽るような呼びかけだ。本当にふざけている。

接続した際にマリスに何が起きたのか不明だが、俺達を訓練する為のAIはマザーシップ、果てはプライマーの一部となり、己を作った人類に宣戦布告している。とんでもない皮肉だ。

今すぐマザーシップごと叩き落としてやりたいが、俺みたいな一般兵1人ではどうしようも無い。困ったことに弾も残り少ない。

ここで攻撃を仕掛ければ味方も動き出すかも知れない。

しかしそれは確実じゃない。

どれだけの数の味方が生き残ってるか分からない。下手に仕掛ければ無駄死にするだけだ。

「冗談じゃねーよマジで……」


瓦礫に深く腰掛け溜息をつく。

どう考えても一度体勢を立て直さないとまともにやりあえない。

本部からの援軍を待つか誰かが動き出すのを待つしかない。

もしくは奴らがこの場を離れるか、移動し数が減るのを待つ。


この二択だ。
それ以外の策は無い。

絶体絶命というか背水の陣というか。
毎度の事ながら命懸けだ。

「腹減ったな……」

どちらにしてもすぐに動けるように腹に何か入れておこう。

なんにしろこんな時でも腹は減るもんだ。
パサパサの味気ないレーションでも今は美味しく感じる。


ポケットに入れていたレーションを齧りながらそう思っていると、突然不気味な機械音が辺りに響き渡った。



────音は真上から聞こえてくる。


重低音を奏でる不気味な音と振動。

不安が加速し心臓の鼓動があり得ないくらいに速くなる。

冷や汗をかきながら見上げると、マザーシップが頭上で砲台を展開しているのが目に入った。

砲台に緑色の閃光が奔るのを見た刹那、切っていた無線を手に取り叫ぶ。


「大尉!ストーム1!全員聞こえるか!!奴は主砲を!!逃げろ!!ここから離れ──────」



放たれた緑色の光が轟音と共に瓦礫の街を包み込む。

爆煙と衝撃波は全てを消し飛ばす。

ビルも家屋もそこに居た者達も何もかもを灰燼に帰す。

火砕流にも似た凶悪な黒煙の後。

化け物共が人類の痕跡が消えた平地を我が物顔で歩んでいく。

そして、AIは上空から見下ろし無機質に宣うのだ。






『プライマーを代表して人類の皆様に申し上げます』







『ざまあみろ』








と。