D子さんとは何とはなく惰性のような関係が続いた。店が終わる少し前に店を出る。D子さんに送り出される時にどこで落ち合うか決める。最初は二人きりで行く事が続いたが、そのうち最近店に来だしたあんちゃんを連れてくる事が増えてきた。

「いつもの店で」とポツンと言葉を交して店を出る。当時は、ガラケーもスマホもない時代だから、いつもの店のカウンターで飲んでいても、何が起こるかわからないし?知るすべもない。D子さんや店でトラブルが起これば、待ち時間はドンドン過ぎていく。そわそわしながら、待って待ちくたびれたその時、D子さんがやっとやってくるのだ。そして、2時3時まで飲んだり遊んだりといった生活。


そんな生活をママには漏れないように気を使いながら続けていく生活。

あるD子さんの誕生月のある日、店がはけ、あいまいに待ち合わせも決めずに僕は店を出た。そして、D子さんの自転車のかごに手渡すはずだったちょっとしたプレゼントを入れてブラブラと帰途に着いた。

次に店に行った時に、D子さんから何かを僕は期待してのだろうか、でもその事でD子さんから話はなかった。ちょっとしたことだ、もしかしたら誰からもらったか分からなかったかもしれない、それとも僕が間違えたのか、ちょっとしたことだ、、、、


僕の気持ちは何かとんでもない疲労感を感じてしまった。

✽長い間、ブログを放置していました。最近とある事で色々なことが時効になっているので、記憶を記録するために再開することにしました。よろしくお願いします。

その人に会うために、僕は毎週週末になると、その店に通うようになった。


その人は昼働いている為なのか、毎週その店にアルバイトに来るわけではなかった。おかげで、会えないこともあった。この頃から、僕は予定が変更になっても、適当にその場で別のことを楽しむ癖をつけるようにしていた。目的の人に会えないからといって、がっかりした顔をするのは、格好悪いし、店の人に失礼な感じを与えるような気がしたのだ。


本当に気まぐれだった。けど、不思議と僕の気持ちは腹が立たなかったのだ。


その店で同じくバイトで来るコがいた。聞くと、18歳で高校生らしい。すらりとしたスタイル、幼い面影があり、無理して夜の世界に来ている感じだった。高校を卒業したら、整形して、ニューハーフの世界に入るらしい、母親も応援してくれているとママのポロリとした話でそのコの事が理解できた。そんな親も出てきているのだな・・と僕は少し感慨深かった。


どちらが誘ったのか定かではないが、一緒に食事に行く約束をした。その人が店に出る前に早めに会って、食事に行くことにしたのだ。時間はほんの2,3時間の事だった。不思議な事に僕はそれでも満足だったのだ。

その人とは色々なマニアックな話、哲学、政治等々話をした。その人がどんな気持ちで話を聞いてくれていたかは分からない。僕は、その人の顔と声に見惚れ、聞き惚れていた。食事や食事が一通り終わると、僕たちは一緒に店を出た。その人は店へ、僕はとりあえず繁華街を1時間ほどぶらぶらしてその人の店に顔を出した。

僕は知らなかったが、その人の名前は結構当時有名で、誰にとっても一種高嶺の花だったらしく、誰も二人きりで食事に行く男はいなかったからだ。


僕は、その人に惹かれていた。そして、なんとなく続いているD子さんとの関係もはっきりさせなければいけないと思い始めていた。



その人に会ったのは、僕がその店に通い始めて、2.3回目だったように思う。

その人は、土曜日にその店にアルバイトで働きに来ていた。昼は、サラリーマンとして働いていたようだ。


ちょっと聖子ちゃんカットがやぼったかったが、やさしげな気品のある卵のような肌。きれいな顔立ち。

僕は横目でママと話しながら、別の客にお酒を注いでいるその人の顔に見惚れていた。



ある日、客が少ない時に、その人が僕の席に来てくれた。

「こんばんわ。」作った声ではなく、男とも女ともつかないが柔らかい声でその人は僕に話しかけてきた。

「こんばんわ。」

「最近よく来られていますね。どちらから・・」とお酒を作りながら、話しかけてきた。

「○○にも行っているかな・・」と15年近く行っている店の名前を言った。

「あそこのママさんとは顔見知りなんです。」

たわいのない話が続く。僕は内心話題がなくて焦っていた。


「趣味とかないんですか?」

「うーん、本を読むことぐらいかな・・」

「何の?」

「考古学とか・・民俗学とか歴史の研究とか・・」僕はいきなりマニアックな題材を出してしまい、内心しまったと思っていた。

「へーどこの分野ですか?」その人は食いついてきた。こんなマニアックな部分に興味があるのが意外だった。それまでの女装者の人たちとこんな話をしたことがなかったのだ。興味もなさそうであったし・・


マニアックなテーマで僕たちは30分ほど他の客を忘れて話し込んでしまった。

話に一区切りがついた時、二人の間に妙な空気が残った。もっと話してみたいなぁ・・と思ったのもつかの間、酔っ払ったママのパフォーマンスが始まり、客の拍手の中で、その人は席を離れてしまった。


その人との初めての出会いはこんな風に始まった。