月に酔う梅ー艶小説ー

月に酔う梅ー艶小説ー

梅の花 一輪咲ても うめはうめ
土方歳三さんへの愛を叫んでいます

ここまで来てくださってありがとうございます(*´∀`*)
こちらには、主に艶が~るのお話を置いております。
最推しは土方歳三さん。高杉さんや慶喜さんも好きです。

その他好きな人
イケメン夜曲・ローガン様/刀剣乱舞・へし切長谷部/ゴールデンカムイ・尾形百之助


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その夜を待ちながら

近頃、雨が多い。
今朝もすでに濃い色の雲が空一面を覆い隠そうとしていた。
早めに終わらせなくちゃ…と置屋の前の通りを急いで掃いていると、案の定、雨が降ってきた。
地面は音を立てながら色を変え、溜めておいた桶の水面が揺れている。
それを見て、また心がモヤモヤと沈んでいった。

(…理由は、わかってるんだけどな。)

ここのところ、あの人に会っていない。
お座敷に来てくれた他の隊士の方たちから、屯所に居るというのは聞いていたのだけど、どうにも忙しいみたいだ。
こう蒸し暑い日が続くと、どうしても心配せずにはいられなかった。

(あとで少しだけ出かけてもいいか、秋斉さんに聞いてみよう)

忙しいだろうから、少しだけ、顔を見るだけでも…
ううん、会えなくても、何か元気が出そうなものを差し入れできれば……。

「――何やってんだ、阿呆」

振り返ると、その声の主は私の頭の上に浅葱色の羽織を広げ、雨を遮るように立っていた。
見回りの途中だったのか、少しだけ息が弾んでいる。

「っ…土方さん…」

あまりの近さに息を飲むと、それに気づいた土方さんは、私に羽織をかけ、距離を取るように一歩下がった。
誤解させてしまっただろうか。
驚いただけだと伝えればよかったのに、彼の視線はすでに置屋の方を向いていて。

「ほら、早く来い」

歩き出した彼のあとに続いて軒下に避難すると、土方さんは濡れた着物を手で払い、垂れた前髪を無造作に撫でつけた。

………会えた。
それだけで頬が熱くなる。かけてもらった羽織からは、雨と、かすかに彼の香りがした。

「あ、あの…ありがとうございました」

羽織についた雨の雫をできるだけ払って渡すと、土方さんはそれを一度広げて勢いよく振り下ろしてから、ゆっくりと袖を通した。
しばらく会っていないせいか、彼のひとつひとつに目を奪われてしまう。

「こんなもんで悪いが、さっさと拭いて中に入れ」

土方さんは懐から綺麗に折られた懐紙を出すと、それを私に差し出した。お礼を言って受け取り、濡れた髪や頬を拭う。
雑音が聞こえない。
雨の音に合わせて鼓動が早まるのがわかるほどに。


ふと土方さんを見ると、彼の前髪に留まる雫が今にも落ちそうだった。
懐紙の濡れていないところをそっと近づけると、大きな肩がわずかに揺れる。

「…ごめんなさいっ…」
「……いや」

そのまま、二人とも黙ってしまった。
馴れ馴れしいことをした恥ずかしさから俯いたままでいると、土方さんがふぅと息を吐いて身なりを整えた。

「そろそろ戻る」

その言葉に弾かれたように顔を上げると、今日初めて視線が交わった。
余程情けない顔をしていたのか、私を見て彼の眉間の皴が深くなる。

「あ………、お仕事の途中だったのに、ありがとうございました。傘、お貸ししますから、ちょっと待っててくださ……っ」

そう言って置屋に戻ろうとした私の腕を、土方さんが捕らえた。
振り向いた先、すぐそばにある瞳に息を詰める。

今度は離れてはいかなかった。

その代わりに、彼の長い指が私の頬に伸び、濡れて張り付いた髪の束をすくい上げた。
触れられたところが甘く痺れて、じりじりと熱が広がってゆく。

「俺がここにいちゃ、いつまで経っても着替えられねえだろうが…」

風邪引かれちゃ困るんだよ、と続けながら、私の髪をくしゃりと撫でた。

「近いうちに顔を出す…、そう藍屋さんにも伝えておいてくれ。」

それだけ言うと、土方さんは踵を返し、雨の中を走っていく。
私はというと、そのまま、そこを離れることができなかった。

振り向かれたら、きっと叱られてしまう。
そう思いつつも、まだ止みそうにない雨の音を聴きながら、先程掴まれた部分にそっと指先を触れさせた。

おしまい


ご無沙汰しております…(;'∀')
そして、今年もよろしくお願いします^^

尾張ギャラリーの記念文集に載せていただいた短編をアップしました。
なので5~6月くらいの季節感です…w
土方さん×雨のお話って好きで、何度か書いているんですが、
その中でも、一番距離感が近そうで遠いような二人のイメージで書いてみました。
ギャラリーに展示した作品集は、ほとんどが現代版のお話だったので、
久々の置屋前ですw
やっぱり幕末のお話を書くのって難しい><
でも、土方さんの好きなところをたくさん詰められて楽しかったです(*^-^*)