「禁止する」の比較
英単語を覚えることはとても重要であり、私も受験期には毎日単語帳を睨んでいた。英語は多くの単語が存在し、その中でも似た意味を持つものは類義語として扱われ、大学入試でもある文章の意味を変えずに書き換えるような問題はお馴染みのものとなっている。私は講義中で学習した「コーパス」を用いて、日本語では大差の見られない英単語に、実際の使われ方からみるとどのような違いがあるのかを考えた。今回は「禁止する」という意味の類義語である、「prohibit」、「ban」、「forbid」の三つを後ろに続く名詞に着目して比較する。
比較した結果を以下にまとめる。
検索方法1(個々) COCA word: prohibit, ban, forbid collocate: [n*] 前0-後2
・prohibit 1 use 2 discrimination 3 sale 4 employers 5 companies
・ban 1 treaty 2 assault (3 ki-moon) 4 abortion 5 gays
・forbid 1 use 2 discrimination 3 company 4 children 5 god
検索方法2(比較) COCA word1,2 collocate: [n*] 前0-後2
・word1: prohibit - word2: ban
1 conduct 12-0 (score: 126.6) - treaty 235-0 (89.1)
2 employees 12-1 (63.3) - assault 212-0 (80.3)
3 officials 11-1 (58.3) - ki-moon 153-0 (58.0)
4 states 15-2 (39.6) - guns 64-1 (12.1)
5 banks 10-2 (26.4) - homosexuals 58-1 (11.0)
・word1: ban - word2: forbid
1 treaty 235-0 (68.1) - discrimination 12-24 (3.4)
2 assault 212-0 (61.4) - use 18-118 (1.1)
3 ki-moon 153-0 (44.3)
4 abortions 74-0 (21.4)
5 guns 64-0 (18.6)
・word1: forbid - word2: prohibit
1 god 6-0 (15.7) - employers 22-1 (16.8)
2 father 3-0 (7.8) - development 11-0 (16.8)
3 daughter 3-0 (7.8) - tobacco 11-0 (16.8)
4 interest 3-0 (7.8) - organizations 9-0 (13.8)
3 mention 3-0 (7.8) - schools 9-0 (13.8)
単語を一つ一つ調べた結果をみると、「prohibit」と「forbid」に続く名詞は同じものが多く、「ban」は全く異なっている。前者は、「forbid」と「god」の関係は慣用的に用いられるものとして、禁止する対象は、「使う」、「差別」、「販売」であり、「prohibit 人 from doing」や「forbid 人 to do」の表現があることにより、先に述べた禁止する対象の主語に当たる「会社」、「雇用者」、「子供」と続いている。また、「Ban Ki-moon(人名)」wo
除くと、後者は「条約」、「襲撃」、「人工流産」、「同性愛」と続いている。そして、二つの単語を比較した結果をみると、「prohibit - ban」の結果からは、一つ一つを調べたときと似たように、「prohibit」は「行為、品行」、「公務員」、「状態」、「銀行」と続き、「ban」は一つ一つを見た時とほとんど変わらない結果となり、「ban - forbid」も同じような結果となった。また、「forbid - prohibit」では、「forbid」では「父」、「娘」、「好奇心」、「言及」と続き、「prohibit」では「開発」、「巻きたばこ」、「組織」、「学校」と続いた。また、「prohibit」と「forbid」は「ban」に比べて使用頻度がとても低く、「prohibit」と「forbid」では「forbid」の方が使用頻度が若干低いということも確認できた。
この結果から考えると、まず、「prohibit」と「forbid」が禁止する対象については、「差別」と「販売」からわかるように、絶対的な決まりを用いて禁止されるものがくる傾向があると判断できる。そのため、「会社」や「雇用者」といった社会的な制度に関わる動作主が後に続いている。また、「ban」については「人工流産」や「同性愛」からわかるように、人間のモラルや倫理から判断して禁止するものが続く傾向があると判断できる。そのために、「ban」に続いて出てくる人間を表す名詞は、上から「women」、「people」と一般的なものがくる。そして、「forbid」と「prohibit」の違いだが、「forbid」では「father」や「daughter」が出てきたように、日常や身近な範囲での禁止を表し、「prohibit」は「employer」や「organization」、「school」が出てくるように、公的な禁止を表しているとわかった。
ここで、英英辞典を用いてそれぞれの意味を調べると、「prohibit: to stop sth from being done or used especially by law」、「ban: to decide or say officially that sth is not allowed」、「forbid: to order sb not to do sth; to order that sth must not be done」となっている。どれも意訳をすれば、確かに「禁止する」ととれるが、重要なのは、「prohibit」の「by law」、「ban」の「officially」、そして「forbid」にはどんな観点から禁止するのかが明記されいない点である。この結果と、先ほどまに考えた、「prohibit」は公的な範囲で決まりを用いて禁止する、「ban」は人間のモラルや倫理の観点から禁止する、「forbid」は家族など、日常や身近な範囲で決まりを用いて禁止する、という意味分けを比較すると、実際の使われ方から、「prohibit」を「forbid」を禁止する対象が似ていると判断したが、英英辞典の定義からは「prohibit」と「ban」が「法律」と「社会的」という点で似たくくりとなるはずである。
今回、「禁止する」と訳される三つの単語を、それぞれの単語同士、また英英辞典の定義と比較することで、実際の使われ方では、「prohibit: 公的な範囲で決まりを用いて禁止する」、「ban: 人間のモラルや倫理の観点から禁止する」、「forbid: 身近な範囲で決まりを用いて禁止する」と意味づけることができ、それらは英英辞典の定義とは異なるという結果が得られた。このように、英英辞典の定義と、実際の用いられ方から考察した意味が異なるということは時代とともに言葉の使われ方が変化していることを明示し、これが「言語は生き物」と言われる所以なのだと私は感じた。そして何より、その変化を自ら調べて体感することがコーパス言語学の魅力の一つだと実感できた。
参考
「Corpus of Contemporary America English」 http://corpus.byu.edu/coca/
「オックスフォード現代英英辞典」
