二回目の化学療法が終了した




Kはだんだんボーッとしている時間が長くなり、漫画も読まず、何かをしようとする意欲があまり見られなくなっていた




寝ているかボーッとしているかどちらか




そして、目の黒目が左右違う方を向き始めた(よくロンパリと言われる状態)




主治医の先生に相談して、近くの系列病院の眼科を受診することになり、Kを連れて行った




そこで両目の視野が半分ずつ欠損していることが分かった




病気の進行と共に時間をかけて狭まっていく為、本人も気付きにくいらしい




脳の腫瘍が原因であるため、根本的な原因を取り除かない限り、もう回復は期待出来ないと言われた




ご年配の方ばかりの病院の眼科の待ち合い室で、若い男の子で、しかも車椅子に乗っているので、Kはとても目立っていた




大勢のお年寄りの方から、物珍しそうにじっと見つめられて居心地が悪かったが、Kは全然気にしないで、しきりに「お腹が空いた」と言っていた




ステロイドの副作用で、異常な食欲の為、すぐにお腹が空いてしまい、私はおにぎりなどの軽食を常備していた




この時も、病院の廊下で美味しそうにおにぎりを食べた




今や体が膨らんで大きくなって、車椅子が小さく窮屈そうに見えた




初めて来た自宅から遠く離れたこの病院で、お子さんは両目の視野が半分ずつ欠けしまっているけれど、悪性脳腫瘍だからもう治りませんよと言われているこの状況が、今更ながらすぐには受け止めきれず、会計を待つ間、放心状態だった




姿も性質も変わり果てた息子と二人並んで座り、名前を呼ばれてもすぐには動けなかった




旦那と姉に電話して話を聞いてもらうことで、この虚しさから何とか抜け出す力をもらい、また立ち上がり、Kの車椅子を押して病院を後にした