「「   理佐を癒したい~?   」」


 ふーちゃんとねるが余りにも大きな間抜けな声をだすので、私は恥ずかしくなって下を向いた。

   「何か最近、疲れてるみたいだから…。」

   「確かにね、モデルの仕事も相当詰め込んでるらしいよ。」

ふーちゃんの言葉に、ねるは頼んだミルクティーをくるくるとかき混ぜながらため息をついた。

  「理佐は人にあんまり弱音吐かんよね。たまには毒素抜かせてあげたいのもわかる~。」


 「うん。そこで二人にどんな風にすればいいかアドバイス貰おうと思って、

ほら、ふーちゃんってメンバーからすごく頼りにされてて、相談事とか得意そうだし、

ねるは癒し系アイドル代表だから、どうすればいいか知ってるかな~って……。」


多忙な二人を昼間からこんな理由でカフェに呼び出すのは気が引けたが、本当に私には癒し方が分からないのだ。

「う~ん、じゃあマッサージとかは?アロマ系のオイルを人肌くらい温めてやると、超気持ちいよ。」

「そうだねぇ、理佐、おぜき大好きだから、かわいい格好してやるともっと喜ぶかもねぇ。」

にたにたしながらねるが言うけれど、私がかわいい格好をしたって理佐が喜ぶとは思えない。

「理佐がそれで喜ぶわけないじゃん!でも、マッサージいいかも!やりながら、相談事とか聞けるしね。」

ふーちゃんとねるはうんうんと頷いた。

「じゃあ早速用意しよっか!」 

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  ふーちゃんがオススメしていたオーガニック系のアロマテラピー専門店で、私は理佐の好みそうなラベンダーのアロマオイルを買った。

二人に感謝を告げて、私は寮にある理佐の部屋に行こうとしたが、私は何故かねるのオススメする服屋に連行されていった。

そのお店は、こじんまりしているけれど、隅々まで綺麗で丁寧な彫刻が施されていて、白とピンクを基調とした、

なんというか、甘々系なお店だった。

並べてある服にはどれにもフリルやらリボンやらが装飾物が付いていて、すごくねるに合いそうなものばかりだと思った。

きゃっきゃと騒ぎながら服を選ぶ二人が可愛らしく、優しく見守りながらついて行く。

すると突然、目の前に服が突き出された。


              「「これだ~!!!」」


黒をベースとした生地に、白いエプロン。

これでもかという程白いフリルがたっぷりと付いていて、極めつけは襟元の大きなリボンだ。

これは、、いわゆる、、、

                  「  メイド服、、?  」

一見クラシカルに見えるそれは、超がつくほどのミニスカートで、大胆に肌を露出させるカットになっていた。

「え?なに?ねるの?」

「違うよ!尾関がこれ着んだよ、」

「そうそう!好きな子のメイド服って夢があるよねぇ。」

ねるがうっとりと目を閉じるが、意味がわからない。

「こんなの似合わないに決まってるじゃん!」

精一杯抗議をしようとしたが、結局ねるとふーちゃんのゴリ押しで、試着することになった。

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「うぇぇ、チョーカーに、ヘッドドレスもあるのか、。」

フリルが付いたカチューシャを頭につけ、首にチョーカーを巻き、すーすーとする太ももに違和感を感じる。

ミニスカと黒いニーハイなんて、着たことないよ…。

「尾関!まだぁ!!!」

催促する声に、私は意を決して試着室を出ようとする。

けど、やっぱり、恥ずかしくて私はもじもじとカーテンで隠しながら首を出した。

「早く見せなさいっ!!」

抵抗は虚しく、ふーちゃんにカーテンを剥ぎ取られ、店員を含めた三人の前に出された。

「「「……………………………。」」」

途端に沈黙が訪れる。

(やっぱり似合わなかったんだ…。こういうの初めてだもん。選んでくれた二人には申し訳ないけど…。)

ちょっと泣きそうになりながら、三人の反応を見た。

三人は目を開いたまま固まっていた。

最初に口を開いたのは店員さんだった。

「お客様…。すっっっごくお似合いです。これはもう、今まで見たお客様の中で一番似合っています。」

「そうだよ、尾関。個人的に一番やばいのは太ももかな。ミニスカとニーハイの間にある白くて華奢だけど柔らかそうな絶対領域が最高。」

「ふーちゃん同意。これは買うべきだね。即決。」

マシンガンの様に一斉に言われて、中には変態のような言葉もあるが、混乱してしまう。

「あ、ありがとう???」

結局、この超ミニスカートメイド服を買ってしまった。いや、買ってもらったの方が正しいのだろうか。

お金はふーちゃんとねるが出した。もちろん断ったが、理佐へのプレゼントだと言って聞かなかった。

「いい!?絶対着るんだよ!理佐を癒したいなら!!」

余りのふーちゃんの鬼迫に私は頷くしかなかった。

帰り際に、ねるが「理佐が死なないといいけど。」とボソッと言ったのが聞こえて、「へ?」と言ったら、「なんでもない!」と誤魔化されたのが気がかりだったが。

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数ヶ月前に渡された理佐の部屋の合鍵で、理佐の部屋に入った。

相変わらずきちんと整頓されていて、木製の製品が目立つカジュアルな部屋だ。

持参した肌触りの良いタオルを蒸して、部屋にアロマを炊いて、その、買った、例のあの服に着替えて理佐の帰りを待った。

8時くらいに、部屋の鍵が開く音がした。

ウトウトしていた私は飛び起きて、部屋に入ってきた理佐の前に駆けて行った。

「ご主人様!おかえりなさい!今日はご主人様を癒しにきましたぁ~!」

ねるに言えと言われた恥ずかしいセリフを口にしたが、理佐は無反応だった。

ゴトン、と理佐が持っていた荷物を床に落とす。

「え?そんな、嫌だった…?」

そんなショックを受けるほど私は似合ってないのだろうか。確かに、ねるがきた方が何倍もかわいくて癒しになるのは分かっていた。

心のどこかで、私だけが理佐を癒したいと子供地味た独占欲を持っていたのだ。

じわりと涙が目に滲み、理佐のために炊いたゆずのアロマの香りが鼻にツンと染みた。

「……………って。」

理佐が小さく何かを呟いたが、よく聞き取れなかった。

「え??」

「こんなの反則だって!!!!」

理佐が半ば絶叫して言った。

「ありえないほど似合ってるし、ご主人様って何!?そんなの言われたらたまらないに決まってんじゃん!!しかも何その太もも!白くて細いのに少しむちってしてるの!超ミニスカ!?そんな姿誰かに見られたらどうするの!だめだめだめだめだめぇっ!!!」

一息で言い切った理佐の迫力に私はびびって肩を竦めた。零れそうになっていた涙も引っ込んだ。

「ご、ごめん、?」

ぜえぜえと息をする理佐にとりあえず謝る。

理佐は力なく首を振った。

「ごめん、驚かせたよね。ちがうの。ちょっとびっくりしただけ。」

「さて、私のメイドさんはどんなことしてくれるのかなぁ~?」

 さっきの絶叫が嘘みたいに、理佐はいつもの理佐みたいに意地悪そうににやりと笑いながら言った。



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私の『理佐を癒そう大作戦!』は大成功を収めた。

私にマッサージされながら、理佐はぽつりぽつりと最近の辛いこと、悩み、困ったことを話し始めた。

私は一言一言じっくりと頷きをしながら聞いて、私なりに解決方法とか、アドバイスとかをした。

それが効いたのか、マッサージが終わる頃には理佐はすっきりした顔をしていた。

その夜、理佐がお願いというので、私はメイド服のまま理佐に抱きしめられて一緒のベットで一晩過ごした。

本当は家に帰るつもりだったけど、理佐を甘やかしたい私は珍しく甘えてくる理佐に、

(まだまだ理佐もお子ちゃまだなぁ。)

と思いながらいいよと答えた。

寝ようとしてる時にお尻とか太ももとか触ってくるので、私はくすぐったくて

「なぁに理佐、くすぐったいよーっ!」

とくすくす笑いながら身をよじった。

理佐は大きなため息を吐き、不服そうな顔をした。

「どうしたの~?」

「べっつにー。ただ、鈍感な召使いに困ってるだけ。」

意味がよくわからなかったけど、理佐のぬくもりの中で、私はまどろみながら眠りについた。





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翌日、ねるとふーちゃんが理佐から高級なチョコレートを貰ったそうな。

                                                   (おしまい)