野心家だが知能はそこそこの場合

 あるいは---あなたがもう少し違う人だったなら。

 つまり野心は満々で、成功のためなら、良心をもつ人たちが考えもしないようなことを平気でできるが、知能的にはそれほど恵まれなかった場合。

 IQは平均以上で、人からは、頭がいい、切れ者だと思われることもあるかもしれない。だが、あなたは心の奥底で、自分には目立った財力や独創性がなく、ひそかに夢見ている権力の高みには手が届かないとわかっている。その結果あなたは、世の中全般に怒りを抱き、周囲の人びとを妬むようになる。

 このたぐいの人は、自分が少数の人びとをそこそこ支配できる穴場に身を沈める。この立場は権力に対する欲望をあるていど満足させるが、それ以上に進めない不満が慢性的に残る。他人の足をひっぱるなとささやくばかげた良心から完全に解放されていながら、究極の成功を手に入れるための能力が欠けている。これほど癪なことはない。ときおりあなたは自分以外のだれにも分からない欲求不満が原因で、怒りっぽく不機嫌になる。

 だが、あなたは、少数の個人ないし小さな集団を自分が管理し、支配できる仕事を楽しんではいる。相手としては、比較的無力で弱い人びとが望ましい。あなたの職業は、教師、心理セラピスト、離婚弁護士、高校の体育コーチ。それとも何かのコンサルタント、ブローカー、画廊のオーナー、福祉施設の所長かもしれない。有給の仕事ではなく、マンションの管理組合の会長やボランティアの病院職員、あるいは子供の親という可能性もある。

 いかなる職業にあっても、あなたは自分の支配下にある人たちを操作し、威張り散らす。解雇や譴責処分にならないていどに、あくどいやり方を度重ねる。あなたにとっては行為そのものに意味があり、たんにスリルを味わうことが目的になる場合もある。人がおびえるのは、自分に力がある証拠だ(と、あなたは考える)、人を脅すとアドレナリンがどっと流れだす。とても愉快だ。

 あなたは多国籍企業の最高経営責任者にはなれないだろうが、少数の人びとをおびえさせ、おろおろと走りまわらせ、彼らから盗んだり---理想的には---彼らに自分が悪いのだと思わせる状況を作り上げることができる。それは力を意味する。あなたの操作する相手が、あなたより優れている場合は、とくに。なにより気分がいいのは、自分より頭がよく、教育程度が高く、階級が上で、魅力があり、人気が高く、人格的に優れた相手を打ち負かすことだ。これは愉快なだけではない。存在にかかわる復讐もはたせる。

 良心が欠けているので、実行は驚くほどたやすい。あなたは上司または上司の上役にそっと嘘を耳打ちし、空涙を流し、同僚の企画をぶち壊し、患者(あるいは子ども)の期待を打ち砕き、甘い約束で人を釣り、自分が情報源であることを絶対に悟られないように誤報を流す。

 

 

暴力的な場合

(略)

 

寄生虫的な場合

(略)

 

 

 

マーサ・スタウト著

「良心をもたない人たち」より