何気ない秋晴れの午後、

駅前の喫茶店の駐車場にタケシはいた。

これから新しい仕事の面接である。

しばらくの間働きもせず遊びまわっていた

タケシは、お金も尽き働くことを決心したのだ。



求人広告に数多くの業種で募集がかかっていた会社

があり、タケシはその会社に目をつけた。

話を聞きながら職種を選べたらと思い、ここの会社での面接を

希望したのだ。

まだ社会をなめてるとしかいえない単純な理由だった。


電話には若い男性が出たようだった。

言葉遣いも丁寧で、受け答えもはっきりしており、

対応は一流企業と変わらないくらいだった。

三日後に面接を入れてもらい電話を切った。

どうやら面接は外での出張面接になるようだ。

今まで外での面接など経験なかったが、この時は

あまり違和感は感じなかった。




待ち合わせ場所には予定の午後2時より早く到着した。

タケシは車の中で、面接前の緊張をほぐすために

タバコに火をつけ車の中から外を見ていた。

地方の平日の午後ということもあり、駅前はがらんと

しており、なんともいえない陰気な感じだ。

その街の重たい空気にのまれ、帰りそうになる

ほどだった。


と、一台の高級外車が駐車場に入ってきた。

V8エンジンの迫力あるエンジン音、

地面すれすれにまで落とされた車高、

ひとまわり大きいアルミホイール。


金持ちの象徴ともいえるメーカーの自動車だ。

タケシは思わずその車に見入ってしまった。

なぜなら、まさしくそれはタケシがいつかは乗りたいと

夢に見ていた車だったからだ。

興奮しながら見ていると、中から一人の男が

降りて来た。

スーツを着て、片手には高級ブランドのバッグ、

顔にはサングラスをかけている。

その男は車から降り、あたりを一周見渡すと

なんの迷いもなくタケシの車に向かって歩き

始めた。

(まずい、からまれる、、、)

タケシはそう思いながらもその男が車に

たどり着くまで男を見続けた。


車にたどり着くもう少しのところで

タケシも車を降りた。

そして相手の出方を伺おうとした。

(ここは地元じゃないし下手なことはできないな、、)


「後藤タケシさんですか?」


「え?」


「お待たせしました。面接にまいりました藤田です。」


出会いは衝撃的だった。